評 : 工藤 啓 (認定NPO法人育て上げネット理事長)
早く、遠くへ、みんなで行くために。
本書は、地域や社会の課題を解決していくために立ち上がったNPOが、活動をともにしていく素晴らしい仲間たちと、数々の難題を乗り越えながら目的地に到達するために必要な「マーケティング」という道具を授けてくれる。
これから活動を始めるNPOも、10年以上の歴史を持つNPOもマーケティングをやっていないわけではない。創設者の原体験や団体が蓄積した経験から「感覚」や「勘」をベースにマーケティングを実施しているはずだ。しかし、航海図もコンパスも持たず、航路も告げられないままに大海へ漕ぎ出す船に乗り込みたいひとはどれだけいるだろうか。不安であり、恐怖ですらある。
課題を解決していくには多くの仲間が必要だ。NPOという船にかかわる一人ひとりの仲間が、安心と共感、居場所と出番を持って、ともに苦難を乗り越えながら目的地に向かうことができるよう、「旅のしおり」を作成しなければならない。
本書では、企業マーケティングでおなじみの4Pや4Cに触れつつ、ボランティアという人的資源を持つNPOに新たなフレームワークとしての5C-価値(Customer Value)、コスト(Cost)、コミュニケーション(Communication)、利便性(Convenience)、快適さ(Comfort)-という新たなマーケティング概念を提示する。
また、NPOの先行事例を豊富に掲載することで、読者にNPOならではの「旅のしおり」作成を指南していく。私も社員とともに、長浜氏が主宰する「草莽塾」でNPOマーケティングの薫陶を受けた。まさに本書は「草莽塾」で学んだエッセンスが詰まっている。
営利と非営利の境界線を越えていかなければならない現代社会において、NPO関係者はもとより、企業マーケティングに精通する人々にとっても新たな学びと発見に出会える一冊である。
担当編集者より
『NPOのためのIT活用講座』とともに、「新しいNPOの本」として企画しました。NPOマーケティングに関する初めての体系的な手引きとして、全国の非営利セクターに従事する方々や、NPOでのマーケティングに関心のある企業セクターの方々にお読みいただければと思います。
(岩崎)
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