2003.6



連載第二回は「中華料理」
京都で中華? これがウマイのだ。


盛華亭
左京区浄土寺馬場町39-4

めにうとお値段
ピータン、春巻き、菜の花と鶏肉の炒め物、蟹巻き揚げ、新じゃがと牛肉の炒め物、ビーフン、胡麻餃子、海老パン上げ、マーボー豆腐、かに玉あんかけ、五目焼き飯、コーンスープ+ビールたらふく、で、一人5000円也

 今回は中華です。中華というと、ちょっと身構えてしまうようなホテルなんかにある結構な高級系か、それとも超気楽な餃子のO将かという感じだけど、今回の店はどちらでもない町の中華屋。しかし、安くて旨いという点ではかなり上出来の店で、しかも目立たない場所にあるので、チャラチャラしていないところがいい。もちろん、〇〇改造系でもない。もっとも、15年くらい前にはじめて食べに行った頃と比べると、1階の奥は多少は洒落た感じの庭の見える部屋になっていた。でも、たぶん2階はまだすこし傾いたままだと思う。ちなみに2階の部屋では、20人くらいのパーティーもできるので、みなさん是非。
 さて肝心の料理について。どの料理もしつこさがなくて、食べ飽きない味。もう少し食べたいと思わせるところが、この店の中華にはあると思う。とくにお勧めはチャーハン。これは絶品だ。グリーンピースが入っていることは措いておいても、細かく刻んだタケノコの食感がなんとも言えない。数年ぶりに食べたけど、味は変わっていないと見た。それから、春巻き。こちらは、ちょっとショウガが入っていて、それがいい味を出している。もうひとつのお勧めはピータン。新じゃがと牛肉の炒め物は、新じゃがの甘みのあるやわらかさが美味だったが、カレー味というのは以前はなかったんじゃないか?
 気楽に食べて、十分満足のできる味。それに、今回のようにかなりのメニューをこなして、ビールをたらふく呑んで、それでもひとり5000円までという値段も魅力だ。そして、最後に一言。まさかホームページがあるとは思わなかった。だって、全然そんな雰囲気の店じゃなかったんだもの。
 初体験は夏の薄暮。
 左京の起伏ある小路から、ぶっきらぼうな看板のかかる中華屋での夕餐、期せぬローケーションとご近所さん主体の客層、なのにこの味は!というオドロキに、身うち震わせたことを思い出します。
 地味で目立たないお店なのに、いやだからこそ、ウマもの好きの間では知られてるみたい。久々往訪で、期待も膨らみますです。
 料理傾向についてはN丸から説明があると思いますが、どのお料理も、脂ぎっていない、塩味と生姜を効かせた上品あっさり中華。
 もっちりした皮に胡麻を練りこんだ餃子には香ばしい胡麻の風味が生きてるし、海老パン揚げは軽く揚がりつつも海老の滋味が感じられて、ホカウマ。かに玉あんかけは塩味で勝負、焼き飯は御飯がつややかで、味は濃いのに後に引かないうまさ、とすべてがさっぱりしています。
 3人でビールを飲んで一人5000円弱。観光コースに組み込まれたぱさぱさ料亭飯をうっちゃって、こーゆーところで京の夜を過ごすとゆのは、めっちゃくちゃコストパフォーマンスが高いのではないでしょか。
 HPはさほど凝ってませんが、ちゃんと季節のオススメだとか押さえてて、よい感じ。あ、それから家族経営ほっこり系店につき、雰囲気盛り上げるぜデエトには向かないかも、とゆことを記しておきます。
 中華である。え、京都で中華ですか?、というあなたは京都グルメ界(そんなものあるのか)の奥深さを知らない。何を隠そう、実はN丸は近くに大きな中華街がある町で育った。だから、中華料理にはかなりうるさい。そんなわたしでも、京都の中華の質の高さは認めざるをえないのだ。
 もちろん、それはオーソドックスな中華とはかなり違う。京都の中華に共通しているのは、油を極力押さえていること。そんな邪道な! とも思うし、「京風中華」なんて恥ずかしい看板を揚げている店もあるのだけど、脂っこくない中華でも洗練した味にすることは確かにできるのだ。そして、それにはまってしまうと確実に病み付きになる。
 その代表格が「盛華亭」なのだと思う。といっても、ここのメニューはあくまで「普通の中華」だ。でも、ピータンも餃子もマーボー豆腐も、みな脂っこくないくせに美味しい。生姜を上手に使っている、などという技術的なことも指摘できそうだが、そんなことはどうでもよいのかもしれない。
 何度訪れても迷ってしまいそうなロケーション。普通の民家を改造した手狭な店内(でも居心地はすこぶるよい)。家族経営がばればれなアットホームな対応。要するに、中華料理につきまとうゴージャスさをことごとく裏切るシチュエーションがこの店にはそろっていて、それが重要なのだ。だからこそ、脂っこくない味が生きてくる。
 ゴージャスではないことを洗練させる。このある種矛盾した態度は、中華だけでなく、京都のうまい店の本質なのかもしれない、と思うきょうこのごろなのです。
 
  N蔵(えぬぞう):公務員。野菜がなくても地球は回ると信じている親肉派  
   
  N吉(えぬきち):編集者。マズいものでも一度は試してみたいいっちょかみ  
   
  N丸(えぬまる):団体職員。新鮮な刺身を何よりも好むオールラウンダー