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今回は気楽に行ける居酒屋編で、「太郎屋」に行ってきました。予定のお店がお休みで、急遽バッターボックスに入ったピンチヒッターではありましたが、手堅い料理で満足させてくれました。
良い居酒屋の条件のひとつは、とくに特定のジャンルに偏らずに何でもそこそこ食べられることだと思います。今日は中華だとか、イタリアンだ、というような決め打ちではなくて、まあちょっと呑みながら何か食べましょう、という感じです。世の中には、肉の嫌いな人もいれば、魚が食べられない人もいるわけで、そんな人たちにもちゃんと注文できるものがあるというのが必要条件です。その点で太郎屋は、バランスの良い居酒屋というのが第一の評価ポイントだと思います。
お造りも地鶏も、肉じゃがやポテトコロッケも、いずれも水準以上の味でしたし、最後に食べた高菜チャーハンと焼うどんも、呑んだ後にぴったりくる脂っ気と爽やかさでした。
地鶏は山椒焼きと唐揚ネギソースを食べましたが、鶏皮のちょっと堅めの歯ごたえと軟らかい肉の締まり具合(堅いのではなくて、軟らかい肉が締まっている感じ)が、とてもいい感じにできていました。最近はどこの店でも地鶏を出すようになりましたが、ちょっとひねすぎていたりすることがあります。それに比べると、かなりのレベルでした。
太郎屋風ポテトコロッケについての注意事項は、ひとりで一品食べるのならいいですが、三人くらいで分けて食べるときには、二人前注文することです。なにしろ、美味しいのに小さい。一口コロッケ風で、ソースも甘辛くて美味しいのに、たった三個ではすぐになくなってしまいます。今回もじつは、もう一皿注文したいビームを発していたのですが、あっさりと無視されました。これは、いまでも残念です。
最後に三人でチャーハンと焼うどんを取り分けましたが、どちらかというと焼うどんに軍配をあげたいと思います。シコシコした感じは、つい最近食べた本場の讃岐うどんを彷彿とさせます。なによりも、飾らないふりをしていてじつはそれなりに複雑な味になっているというところに惹かれます。あれはどのように調理をしているのだろうか。最後になりましたが、お二人に譲ったピーマンの肉詰めトマト煮込みも美味しかったということです。 |
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おばんさいやさん、といってしまうと京都観光店?なんて思われるし、決しておばんさいだけがウリではないんですが、単なる居酒屋さんというと、これまた語弊があるやに思っちまう。
地元の人が、ふつーーに食べて飲みにくるお店「太郎屋」さんに行ってきました。
烏丸四条からほど近い、通称ビストロ小路の一軒。まわりのお店は入れ替わったりしてますが、ここんちはたぶんかれこれ10年近く、思い出したようにお邪魔してるお店のよな気がします。コースもあるけど、いっつも単品(300円〜)をオーダー。おからや肉じゃがのような、お惣菜が豊富。
ご近所リーマンおじさまにもたいそうウケがよく、N吉が19時半すぎに入店したところ、「ごっちー」と帰ってゆくお客さん二組ぐらいあり。まさしく普段遣いのお店、回転ええんですね。
肉じゃがに、ピーマンの肉詰めトマト煮込み、イカと芽若布の酢の物、なんてのは、自分でも作れるのだけど、うーーん、こんなにおいしくならんべ、と白旗を挙げてしまうお味。やっぱり出汁と手間なのかなあ。素材で勝負してます!という力の入りっぷりではなくて、たとえばピーマンの肉詰めなら、ピーマンと詰めたミンチという素材からでる味を読んで、その上でトマトソースで味付けしているという感じなのれす。「計算された味付け」というほど精緻ではなく、ほんとに、体(舌?)に染み付いた作法から生み出される料理、という気がいたします。焼きうどんも、なんともはんなりと鰹節の旨みが効いていて、そのあっさり加減にだまされて、たくさんいただいてしまいました。お刺身なんかの生ものよりも、煮物や焚き物といった、ちょっと時間をかけたメニューがおすすめです。
ご常連客が多いせいか、メニューは目移りするほどたくさんあります。しかも、次々になくなってゆく「今日のオススメ」に、オーダー欲が掻き立てられ、我々は欲張ってあれもこれもと注文してしまいました。そんなわけで、またもやよろしきお値段になりましたが、普通は一人3000円でおなかいっぱいらしーので、安心していらしてください。 |
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この路地には、なんか通称があると思うんだけど。知っている人は教えてほしい。錦小路と四条の間に挟まれた細い路地。なぜか美味しい店がすごい密度で軒を並べている。べたな表現で言えば、四条烏丸ビジネス街の「オアシス」ですな。
そこに昔から、おいしいおばんさい料理を出す店として知られているのが、今回の「太郎屋」だ。おばんさいと言っても、店のホームページには「お惣菜」と書いてある。へんにきどっていないのだ。接客も、マニュアル化された無礼さもないし、大げささもない。女性スタッフが多くて気さくな感じだ。場所柄から、なじみ客だけに閉鎖するような感じもない。いちおう町家改造系にくくられるのだろうけど、「町家の魅力を堪能してください」というような思い入れもない。奥の座敷も、友達の家に上がりこんでいるような感じだ。
そう、この店の魅力とは、端的に言って、落ち着けるということなのだ。京都風に言えば「ほっこり」させてもらえる店。これが心地よいのだ。ここでの居心地のよさとは、懐石料理屋に期待するものでもないし、フランス料理屋に期待するものでもない。仕事帰りにビールを一杯やる時に必要な居心地のよさなのだ。その意味で、この店は正真正銘の居酒屋である。
では、肝心の惣菜の味はどうか。はっきりいって、ここは居酒屋だ。多くを望むまい。つまり、居心地のよさの魅力が、味の魅力も決めてしまっている。そんな感じだ。ピーマン肉詰めも唐揚もポテトコロッケも、とても美味しいが、どこがどう美味しいのかという論評をしてみても、あまり意味がないように思えてしまう。あえて言えば、全体に味付けが濃いということだろうか。でも、これは酒の肴としては絶対条件のようなものだ。
チェーン店の居酒屋でいつも感じるむなしさ。この店は、そのむなしさがどこから生じるものなのかを教えてくれる。立地、雰囲気、接客、味、すべてが居酒屋の本来あるべき姿を提示してくれているのだ。
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