2006.10

突然再開第25回は、またも「焼肉」
ラーメン重点地区であえて煙もくもく。


「いちなん」
●京都市左京区一乗寺北大丸町51
  tel)075−721−6937

めにうとお値段
自家製ソーセージ&ベーコン盛合せ×2、ユッケ、キムチ、塩天肉、蒸し豚、豚バラ、ホルモン盛合せ、上カルビ、ジャン麺、若布スープ、もやしスープ、ナムルにビールなど少々で一人5000円なり。

 再開第一回は、私の職場近くの焼き肉屋です。時間制限食べ放題といった大衆的な焼き肉屋と高級店の中間的な値段設定かと思いますが、味は十分に満足できます。しかも店構えは気取っていません。
 この店のお勧めは、肉ももちろんですが、なんと言っても自家製のソーセージとベーコンです。まずこれを食べることをお勧めします。メニューの「自家製盛り合わせ」を頼むと両方を食べることができます。ソーセージの方は、歯ごたえが意外と柔らかく、しかも口のなかでもさもさする感じはありません。そして、上品な味わいです。ベーコンの方は、すこし厚めで、こちらはしっかりとした歯ごたえです。焼きすぎないようにして、ベーコン自体の歯ごたえを楽しむと、すこし甘みの感じられる味がひろがります。どちらも高級感のある大人の味で、これを食べていると、ガツガツと肉を食べていた昔を懐かしむことすらできる、そんな感じです。
 さて肉ですが、定番のロース、カルビは無難です。もちろん平均点以上です。カルビは、高級カルビの方がだんぜん美味しく、お勧めです。ノーマルカルビの魅力が、肉の直接的な野性味にあるとすれば、高級カルビの方は、ジューシーな肉の旨味が堪能できます。やはりこれも大人の味ということになるのかもしれません。それから天肉はかならず食べてみてください。柔らかいけど肉味をたっぷり楽しめる一品です。 それから地鶏も脂がよく乗っていて美味しいです。これはレモンが合います。
 焼き肉ですからもちろんビールを飲みながらというのが定番ですが、ビールとは別にわかめスープを頼んでおくことをお勧めします。焼き肉屋で飲むわかめスープの役割は、一種の口直しだと思っています。つまり寿司で言えばガリです。キムチの盛り合わせでもいいのですが、これは独自の強烈な味(この店のは日本的キムチではありますが、良く味がついています)があるので、口直しにはなりません。その点、わかめスープは最適です。
 この店は、食材がよく吟味されているという印象があり、それが店構えや店員の雰囲気からは意外に感じられる高級感を醸し出しています。気楽にしかもすこし大人の気分で焼き肉を食べることができる、そういう店だと思います。
 さてさて今回のお店は京都のラーメン激戦区、一乗寺に位置しています。恥ずかしながらラーメンには疎いのでほとんどのお店には入ったことがありませんが、ラーメン星人な方々は、店にたどり着くまで幾多の誘惑にさいなまれることであろう立地でした。
 ところで、男子のご馳走はカレーと焼肉、と聞いたことがあります。
 全日本的にそうなんでしょーか。
 焼肉がご馳走、とはあんまり思わないんですが、N丸N蔵のオススメによりまた二度も足を運んでしまいました。
 まあ肉なんてのは値段に比例するから、うまいの食べたけりゃ産地で高いお金出せばよいんすよね。でも焼肉の醍醐味ってのは、もうもう上がる煙を前に、焼いてるモノとも卓を囲んでる人たちとも真剣勝負!なとこにあるのではないかと思うのです。
 つまりプロセスをも楽しむメニューなのではないかと。
 ここんちは自家製薫製があるとのことで、めちゃくちゃ期待してました。昨今食品添加物たっぷりのベーコンにウィンナが多くて市販のは敬遠してたんで、そういや食べたい気分だったのでございます。
 しっとりベーコンの表面から、最初は水分、だんだん油分が出て参ります。香しいニオイがたまりません。ウィンナもだんだん表面ぴっちぴちのぷるんぷるんで、いずれも眼から鼻からすでにおいしい!と期待させる盛り合せです。
 まだかな、もういいかな、なんて思ってる間についっと敵方にかっさらわれる眼をつけてたウィンナ。しまったあ〜〜、手前に退避させときゃよかったよう。ううう、と次のは目配りしつつ手前にサルベージ。
 う、うま〜〜。がしっとかぶりつくと、なんとも言えない肉汁がっ。
 他のお肉はまあまあでした。生レバーの新鮮さと、塩天肉のタン塩みたいな食感がよろしいです。
 あとは地鶏。ちょっぴり塩が利いてますが、ぷりんぷりんなお肉の感じを楽しめます。
 そして、忘れちゃいけないのがデザート!
 ここんちはパティシェがいらっしゃるそうなんです。
 残念ながらこの日はアイスクリームしかなくて残念!だったのですが、次こそ季節のフルーツを活かしたデザートを食べてみたいです。
  たしかに、みなさん「自家製」という言葉に弱い。どこで作ろうと、美味しければいいはずなのに、お店独自に作りました、という売り文句に弱いのだ。この場合、その店の先祖伝来、子々孫々受け継いだ、他ではまねのできない独自の味覚というものを期待するのだろう。しかし、この焼き肉屋の「自家製」は、ちょっと違う。いろいろ試行錯誤していまして、いまのところ、こんな感じがベストだと思ってます、というような感じだ。自家製ソーセージは絶品だったが、自家製ベーコンはちょっと塩がきつすぎた。でも、明日食べに行けば、また味が変わっているかもしれない。常に、ヴァージョンアップを続けるようで、そこに期待をしてしまう。そんな魅力の「自家製」なのだ。
 「南山」は京都・滋賀を中心に展開する焼肉のチェーン店。その一乗寺店だから、「いちじょうにのなんざん」で「いちなん」になった。でも、「南山」のホームページには、すでにこの店は載っていない。事情はわからないが、ともかくも、チェーン店の枠を超えてしまった店なのだろう。とにかく、メニューが多彩であり、「自家製」以外のものも、どれもアイデアに富んでいる。店のホームページを見ると「パティシエ」さえ存在するらしい。デザートメニューも毎日のように創作されているのだ(われわれが食べた時には、アイスクリームしかなかったが)。
 もちろん、普通の店で試行錯誤を繰り返すというのは許されるものではない。客に出す料理を完成させていないというのは、料理店としては失格である。この店の試行錯誤というのは、高いレベルでの試行錯誤なのだ。自家製ベーコンの塩がきつすぎるといっても、この味のほうが美味しいと感じる人もいるだろう。ある一定のレベル以上での試行錯誤なのである。だから、紅茶をソーダで割った「ティーソーダ」などという、名前だけ聞いたら怪しからんメニューも、ついつい頼んでしまうし、飲んでみると、びっくりするぐらい美味しかったりするのだ。
 でも、こうした、毎日のようにメニューが変わるなどということは、焼肉屋だから可能だとも言えるのだろう。こった料理を創作するような店では難しいはずだ。それと、焼肉屋の持つ、どこか開けっぴろげの雰囲気が、フレキシブルなメニューを可能にしているということもあるだろう。ともかくも、「楽しい」店なのだ。店自体がみせつける、この「楽しさ」は、確実に味に直結している。
 
  N蔵(えぬぞう):著述業。頑固なこりにビシビシ針治療  
   
  N吉(えぬきち):編集者。腹の皺出現にアセアセ腹筋  
   
  N丸(えぬまる):団体職員。半身浴でにこにこダイエット