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川端二条のバス停前とはいえ、気をつけていないと素通りしてしまいそうな店構え。
でも、中はつねに満員で、ふらっと行って入れるということはまず無理。とはいえ、予約が取れれば、それも二階の座敷が取れれば、比較的ゆっくりと上質の鶏料理を楽しむことができます。一階のどちらかと言えばざわついた感じとはひと味違う雰囲気です。
肝心の鶏ですが、一言であらわせば上品な味ということになるでしょう。控えめであるようにすら感じられます。最近増えているタイプの鶏料理屋ですが、そのなかでも上品な部類に入ります。しかし、この上品さ、正直を言えば、私にはすこし物足りない感じです。つまり、「肉」という言葉からにじみ出るような野性味に乏しいからです。しかし、これは好みの問題かもしれません。
最初は定石通り刺身の盛り合わせから入ります。最近では、この手の店のほとんどで鶏の刺身が食べられるようになりました。美味しく食べながらも、どこか違和感があるのは、やはりワイルドに鶏肉を食べたいと思っているせいでしょうか。それから串に入りますが、皮がカリッと焦げた手羽先は、なかでもお勧めの一品です。手羽先という食べ方にわずかな野性味を感じることができるからではありません。手羽先を、ほどよく締まった肉とすこし堅い皮の取り合わせで食べさせる店はあまりないからです。ここの手羽先は皮の扱いが上手いと思います。せせりも、肉としては適度なコリコリ感があり美味しいのですが、塩を出されて、それをわずかにかけてみた方が美味しいというのが、すこし残念。しかも、居合わせた全員が、塩をかけた方が美味しいと言っていたということは、好みの問題ではないような気もしました。
一方、シンプルで美味しいのが肝煮。これは、臭みがないので、肝は少し敬遠というヒトにも美味しく食べられるでしょう。それから、甘辛チキンバーは、ビールにナイスフィット。他ではあまり食べられない甘辛さです。
スープ雑炊も実山椒おにぎりもすべて美味です。ただ、印象としては、平均点以上はもちろんあるのだけど、爆発的なパワーに欠ける、つねに3割そこそこは打っているけど目立たない3番バッターという感じの店です。 |
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京都には、どんなエリアにもぽつぽつおいしーお店がありますが、川端丸太町界隈はなかでもウマ焼鳥屋が多い気がいたします。町中はザワザワでヤだし、ゆっくり飲んでたっぷり食べるべ、とゆお店が今回の舞台。
まずは、お刺身。食感の違いが楽しくて、あれもこれもと箸を伸ばしてしまいます。ねっとり舌にからまる肝、こりこりのズリ、淡い甘さが生娘のようなムネなどなど、これからの展開に期待が高まる、それぞれの部位の個性が楽しめる一品。
作り置きメニウのはずの肝煮、これがめちゃうまい。N吉も打倒貧血のためよく作るのですが、周囲の固さと中身への味の浸透加減、それと肝自体の肌理の細かさのバランスがすごく難しくってなかなかコレダ!とゆ味にならない。が、ここんちのはしっとりしたフォアグラのような中身に濃ゆすぎない味がでもしっかりからんでて、回りも固すぎず上品にまとまってます。もちろん、臭みもありません。ん〜、プロの技です。
こんな調子ですから、フランチャイズ店で楽しむ脂ジュージュー焼鳥がお好みの方には肩すかしかもしれません。どちらかというと、このお店ではささみや胸肉のような淡泊な部位に、ちょっぴり味付けした料理をオススメいたします。お肉のジューシーさと、ほんのり甘い、鶏肉のやさしい味を堪能することができます。
もちろん、揚げ系の品々もおいしゅうございましたが、お肉自体のおいしさを楽しむなら少な目にオーダーしたほうがよいでせう。すぐにお腹いっぱいになっちまうと残念ですから。
それにしても、今回も食べ過ぎました。が、まだ全品制覇したわけではないので、また行かなくては、と思わせられるのも憎いメニウ構成。今回はどれもおいしくいただきましたが、欲をいえば、もちょっと意外性もほしーので、またそんなメニューを楽しみに出掛けたいと思います。
満員で振られると、つぶしがききにくい場所柄、予約をしてお出かけになるのがよろしいかと。
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この店のだめなところは、料理が出てくるのが遅いことだ。とりわけ、看板であるはずの焼き鳥が遅い。おっちゃんが一人で店を切りもししているとかならわかるけど、丸見えのキッチンには、けっこうの人数が働いている。しかし、よく見るとサボっているわけではない。なのに、なぜ遅いのだろう。
その謎は、食べてみれば解ける。とてもじっくり時間をかけて焼いているのだ。おそらく、ちょっと遠火の炭火でじわじわ焼いているのだろう。その丁寧さが味にしみこんでいる。その食感は、前に紹介した、店の名前もない串焼き屋の焼き鳥と全く逆だ。串焼き屋の焼き鳥は、とにかくダイナミックでジューシーだったが、ここのは、上品でジューシーさに欠ける。しかし、まずい焼鳥屋で出される、あのぱさぱさした感じは一切ない。しっとりしていて、鶏本来のおいしさがダイレクトに伝わってくる。もちろん、お勧めはタレではなく塩である。
素材としての鶏肉のよさは、最初に食べるさしみでよくわかる。しかし、いまどき、このくらいの地鶏を出す店は他にもいくらでもあるだろう。その素材を、念入りに料理として完成させている。とはいっても、基本は大衆メニューである。そこがうれしいところだ。甘辛チキンバーなどという卑しい(?)メニューでも手を抜かず、きっちりと作り込んでいてうれしい。
とはいえ、少し心配になる。焼き鳥は薄利多売のメニューである。客の回転率を上げなければもうからないはずなのに、こんなに時間をかけちゃってだいじょうぶですか。さらに、店構えも心配である。店の前に看板がないし、店を照らす照明もない。かといって、隠れ家のような演出をあえてしているようにも思えない。つまり、店舗経営のノウハウのようなものに全く頓着していないように思えるのだ。でも、それが丁寧な味に通じているようにも思えて、こうした店こそ応援したくなってしまうんですよね。もし、そうした感想まで見越した戦略としての演出だったとしたら、それはそれですごいですけど。
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