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「写真見て 味思い出し キーを打つ」なんていう駄句がまず浮かび、そうこうしているうちにようやく、そのときの店の様子や相変わらずのアホ話が浮かんでくるという状況です。そして、まざまざと思い出したのが「焼海老芋、金時人参、丸大根、九条ねぎ、ブロッコリーの白和え」 。 つまり何というか京野菜のオンパレードであり、当然のように手強い相手です。どうしてこういう組み合わせをするかという疑問が理不尽であることも重々承知をしてはいるけれども、これはお二人に食べていただきました。きっと、感想も倍増しているに違いない。
さて、それはともかく、最初の卵黄味噌漬を食べたときから、この店の味が気に入ったことは告白しないといけません。どちらかというと刺激有りの味を好むので、この濃厚な卵黄と味噌の合わせ味が最初に出てきて、気分が乗ってきたことは事実です。しかも、この味噌漬、濃厚ではありながら野卑ではないという洗練されたもので、なんでこんな少ししか食べさせてくれないのかと思うほどです(もちろん、付け出し的なのだから仕方がないけど、個人的には人参と交換しても良いと思う)。
やはり、この店で特筆すべきは蕎麦でした。うなぎごはんの前に十割蕎麦というこの流れは、なかなかほかの店では体験できないコースだと思う。クリーンナップよりも、7番8番打者で点数を取ろうとしているような、独特の采配を感じる(くどいようですが、4番打者に手が出なかったからというわけではないです)。たしかに、そばがきを先駆けとして、十割蕎麦、うなぎごはんという下位打線はなかなか強力です。蕎麦は十割の柔らかさと味が生きていて、しかもどことなく酒のつまみとしてしっくり来ている感じがあって素晴らしい。
好きなものを好きなように注文するのも、もちろん楽しいけど、コースを食べるときの醍醐味というのはやはりあると思う。食べ物と食べ手との距離が刻一刻と変化してゆく、その変化を楽しむ醍醐味が。何でも食べられる人は、もしかしたらこの醍醐味が半分くらいしかわからないのではないかと負け惜しみをしたくなる今日この頃です。 |
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御所南地区は、知らないうちに新しいお店がぽつんぽつんとできてるエリア。でも夜はまだまだ静かで、人通りも少ない町です。
京都で、町家で、和食でってなると、ついついいまや喧しい祇園あたりの有名店へ、ってことになりがち。でももっとゆったり、のんびりと、ご飯を食べたいときもあります。そんな夜のために、ひっそり明かりのともる町家のお店に行ってきました。
今回はぐっと庶民派に徹して(っていつも食べすぎるから高くなるんですが)、3800円のコースを。
めにうだけを読むと、ご飯食べの「ハレ」感が伝わらないかもしれませんが、いやこれが、なかなかどうして。八寸の焼しいたけ一つとっても、香しいきのこの香り、やわらかな食感が口中に広がります。がつがつ食べるのがもったいなくて、少しずつ上品に、素材を味わいつつゆっくり食べたくなる味。それも、高級で肉厚!とか、自然の味ががっつり伝わる!とゆ自己主張の強い素材勝負ではなくて、なーーんとなくだけど手がかけられてるのがわかっておいしい、という料理ばかりなんです。それでいて、一皿に盛られた料理の味付けの緩急や、コースが進むについて少し濃い目になる味付けと、お献立がトータルにデザインされてるのも素敵。もちろん、ずいきと蛤のお吸い物やもろこの炭焼きなど、苦味で春を感じさせる季節の一品もちゃんと組み込まれています。
こーゆー、決してゴージャスではないけれど繊細なお料理が食べられるのは、やっぱり京都ならではだなー、とこれまたシアワセな溜息をついてしまふ。
全体的にあっさりめで量も少ないので、フレンチやイタリアン好きな方には物足りないかもしれません。酒類が多くないので、呑み助さんや大人数さんにも向かないと思います。だけどたとえば、二泊目、三泊目の京都、ちょっと荒れたお腹を抱えて、なんてときにいかがでしょか。若いご夫婦がていねいなお仕事ぶりで、大事な夕餐をゆったりと、満足いくひと時にしてくださること請け合いです。
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いわゆる町家レストランのブームも、かれこれ10年近く続いてますかね。最初のころは、食べる方も物珍しいし、作る方も、町家の空間をどう使おうかと試行錯誤があって、ほんとうにいろいりなバリエーションの味と空間があった。でもそれがだんだん淘汰されていったわけで、この店は、おそらくその完成形と言えるような店ではないだろうか。空間も味も、わくわくする物珍しさはどこにもないけれど、その代わりとても落ち着いて食べることができるのだ。
京町家というのは、間口が狭くて奥行きの長い構成になっていて、その奥行きを、「通り庭」と呼ばれる細長い土間が貫いている。そこで、レストランにしようとなると、その「通り庭」の奧の部分をキッチンに改造するのが最も合理的だ。で、奥行きに向かってミセノマ、ダイドコ、ザシキなどの部屋が一列に続いていたものを、一体化して客室にする。少なくとも、和食レストランのケースでは、この改造方法が最も一般化したものとなった。「うまぺ」で以前紹介した「みこう」も全く同じ形式だ。そして、今回の店も、この形式を踏襲している。というか、この形式がすでに昔からある京都和食レストランのスタイルであるとすら思わせるほどの自然な感じを漂わせているのだ。
その自然な感じは、確実に味にも反映されていてうれしい。基本的には、上質な素材を仕入れて、その素材の魅力をなるべくダイレクトに伝えようとしている。その素材には、ずいきやブロッコリーなど、少し癖のあるものも混ざっているが、それでも少しも奇をてらった感じがしない。実に手慣れた感じである。おそらく、町家レストラン黎明期(?)であれば、作り手ももっと手の込んだメニューにしたくなっただろうし、食べる方も、普通ではない料理を求めたのだと思う。
空間も味も大人の落ち着きを感じさせる。町家で食べることがごくごく普通のスタイルになったことを、この店で実感することができるわけだ。東洞院通に面した店構えも、まったく自然な感じで風景に溶け込んでいる。 |
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