茨城県古河市の古河総合公園が、ユネスコとギリシャ政府共催の「文化景観の保護と運営に関するメリナ・メルクーリ国際賞」を受賞した。アジアの受賞は初めて。25ヵ国からエントリーがあり、日本の古河1件のみの受賞。
小久保忠男古河市長と設計監修者の中村良夫東工大名誉教授に、9月18日、パリのユネスコ本部でおこなわれた授賞式において、賞状と賞金2万ドルが授与された。
同賞は景観保護と持続的開発の分野での先駆者であり、女優としても知られたギリシャの文化大臣メリナ・メルクーリ女史にちなんで創設された。文化景観の保護と運営に関する顕著な功績をたたえることを目的とし、1997年の第1回受賞を皮切りに、2年毎に授与されている。これまでに、アルジェリア、リトアニア、ノルウェー、キューバなどの山村や公園などが受賞した。
古河総合公園は、昭和50年に開園した計画面積25・2ha程の都市公園。古河公方館趾の台地とそれを巡る2・8haの復元された御所沼、2000本の桃林、水面を望むカフェテリア、関東の山々を遠望する富士見塚などがあり市民の憩いの場として愛されている。
ユネスコ事務局長からは、受賞理由として、「東京から60 ワのつよい開発圧力に耐えた文化景観保護」との総括コメントのほか、下記の点で審査員から高い評価があった。
(1)過去と現在の文化の積み重ね
古河公方館趾という歴史的遺産を、類い希な地相の山水美とともに保全してきた。このような自然文化遺産を保全しつつも、金属製の橋や現代の建築物など、現代文化を巧みに積み重ねている。
(2)文化と自然の接点の多様性を造形化
(a)人による自然の保護(雑木林)、 (b)人による自然の復元(復元された御所沼)、 (c)農の景(茶畑)、 (d)園芸の景(仕立て物の松)、 (e)自然に対峙する文明(沼に架かる現代的な橋)、 (f)人境を侵犯する自然(雑木林に埋もれた古河公方館趾)、 (g)虚在の自然(ガラスや鏡に映る自然)、 (h)詩的に表現された自然(地名を刻んだ石碑)など自然と文化とが多様で複雑にからむ景観を、一巻の書物のように編集した。
(3)四季の自然に親しむ市民の活動
桃まつりやお茶つみ教室、お月見、虫聴きなど、ふるさとの景観を活かした市民活動を、パークマスターが主宰する、市民参加の公園運営円卓会議により活性化している。
(岩堀康幸/古河総合公園パークマスター)
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