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大牟田市は日本一の炭鉱、三池炭鉱で古くから栄えたまちですが、残念ながら、このまちから炭鉱は姿を消し、その名残も風化の一途を辿っています。地方の一つのまちが、日本の近代化を支え、戦後の経済復興も支えたという誇らしい事実が、労働争議や炭鉱災害、そして閉山という暗いイメージに包まれ、「負の遺産」という言葉だけが残ってきました。 このままでは、「負の遺産」という言葉の前に、誇らしい事実と必死に生きてきた人々の生き様そのものまで忘れ去られるのではないか、という危機感から、大牟田市はこれまでの歴史を、映像記録として後世に伝えるため、平成13年度から2年間かけて、多くの人々の証言や近代化遺産と呼ばれる遺構などを撮影しました。撮影テープは110時間にも及び、その中から6本の長編・短編の記録映画を製作しました。 今年の夏、作品の中の一つである長編の記録映画「三池炭鉱(やま)からの声」を市内で初公開した折、超満員の観客から感動の声が寄せられました。当時を生き抜いてきた人たちは作品への共感を語り、若い人は地元の歴史を初めて知ることができ、まちに対する誇りを感じたと感想を寄せてくれました。 行政が歴史と向き合うことは本当に難しいことだと、取り組みを通じて実感することが度々ありましたが、本当にこのまちの歴史は「負の遺産」なのか、それを市民に対して問いかけることができました。 (中村珠美) |
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