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ススキを素材とした音具(作・多田廣巳)

団塊世代のまちづくり

 団塊世代のまちづくり事始である。昨年、東京・表参道の事務所を生まれ育った東京・杉並区西荻窪に移転させた。仲間には「隠居はまだ早いんじゃないの」と言われた。「冗談じゃない、生活者の現場からいままでの事業を再発信するんだ」と答えた。目に見えず形にも残らないが、地域の記憶や感性に強く訴求する環境要素としての「音」を数多く事業化してきた。これを、生まれ育った土地に事業で培ったノウハウを還元していきながら、再び地域から学んでいきたいと考えた。その試行錯誤の中間報告である。
  西荻窪(西荻)は生まれ育った土地ではあるが、日常生活では近隣住民とは、ほとんど付き合いがない。たまたま公園の掲示板に地域集会施設運営協議会委員公募のポスターを見て、応募して参加出来ることになった。杉並区には地域活動拠点施設として7ヵ所に区民センターがあり、その運営を担っている住民の自主運営組織である。町内会・商店会・地域各委員会・小中学校保護者会等の代表者と私のような一般公募により構成されている。運営費の一部は、区の補助によりまかなわれ、地域のまつり・各種講座・広報紙の発行を主な事業としている。そこで、広報紙の編集を担当することになり、西荻地域から情報発信出来るテーマの特集を組むことにした。「西荻地域に生きる幸せ」「中学生のしゃべり場」「土曜日学校」「西荻まつり暦」等々を特集した。特集を重ねると共に、まちの空気と人が見えてきた。情報づくりは都市型まちづくりの出発点と後で気がついた。
  西荻窪は、JR中央線の中でも大型店舗もない住宅街で、近年アンティツク家具の店・蜂蜜の店・犬の専門店・手作りバツクの店・ギャラリー・天然酵母のパン屋・朧豆腐店・アニメ製作会社・音楽スタジオ等々豊かな生活感覚をもった生活者の住む地域ならではのまちの動きがめだってきている。昨年よりこの生活環境に、アートからのまちづくりイベント「西荻まちメディア」が開催された。本年は実行委員会に参加しワークショツプをやってみた。「西荻・音さがし」(音を切り口として子供たちの新たな想像力を啓発し、その感性から地域の環境特性を発見し新たな地域の魅力のきっかけづくりのワークショップ)。青少年委員会の協力で、私の卒業した小学校で開催できた。
  次々と音プロジェクトの構想は膨らんでいる。西荻は都内有数のアンティツクの街だ。楽器の製作修理を地場産業として、杉並区にはジャズの街阿佐ヶ谷・クラシックの街荻窪があるが、それに加えて西荻窪を「楽器を作り演奏を楽しむ街」にする。視覚障害者が一人で歩けるための、音声案内の文法作りの研究調査もやってみた。善福寺公園という緑豊かな場所に隣接しており、地名にちなんだ植物「オギ(荻)」を関連公共施設に植栽することになったので、オギから自然楽器をつくる等々、各地域の「音」プロジェクトをネットワークしたいと考えている。

(山口泰)