京都の老舗の数珠屋さん 中野伊助

 数珠つなぎコラム

「水晶について」その2

 拝啓、さわやかな初夏の季節、貴殿におかれましてはいかが御過ごしでしょうか?さて早速ですが今回も水晶について書かせていただきます。
 水晶【石英】(Rock Crystal)(Quartz)は、世界各地に産しますが、水晶の主要産地はブラジルです。良質の結晶は、スイスやフランスのアルプス地方、マダガスカル、旧ソ連邦、アメリカに産します。Crystalの名は、氷を意味するギリシャ語のKrustallosに由来し、水晶は神が創造した氷であると考えられていました。中世以後、水晶の玉は未来を透視する道具に使われました。又現在では、クリスタルヒーリングにも使われています。これについては、宝石が癒しの性質を持っているとする信仰は、古代の部族の療法師の儀式が示すように非常に長い歴史があります。そして、水晶は人を健康にしたり人のからだの特定部分を良好な状態にするような影響力を持っていると考えられています。神経のつぼにおいた宝石から反射される光が(いわゆるオーラが)体に吸収され、癒しのエネルギー(病気の精神的、感情的要因を自覚させ自然治癒力を増幅させる)になると考えられています。たとえば、ペンダントは肌にじかにつけると、癒しの効果があったりお守りになると信じられています。
 又、水晶の特筆すべき特徴は工業的分野で広く使われていることです。たとえばもっとも興味深い特性の一つに、ピエゾ電気があります。このピエゾ電気とは、一八八〇年にジャックとピエールのキュリー兄弟によって発見されましたもので、二人は、水晶に圧力をかけると結晶を交差してプラスとマイナスの電荷が起こることを発見しました。ピエゾ電気を持つ結晶に交流電気を流すと、結晶に振動が起きることが解ったのは、その後のことですが、これが、ラジオ電波を制御したり正確な時間を維持したりする、発振器としての水晶を利用する基礎となりました。貴殿がよくご存知のクォーツ時計では、その中にある結晶が、一秒間に三万回以上も振動し、この規則正しい振動によって正確な時間を維持しているのです。そのほかにもピエゾ電気効果はガス点火器にも使われています。結晶に圧力を加えると電気エネルギーに変わる現象を、スパークとして利用して発火させているのです。このように水晶とは単に装飾品としてではなく広く世間で使われ、もはやなくてはならない存在になっているのです。しかしこの事が珠数の世界において混乱をきたすきっかけになってしまったのです。
 次回はこの続きを…それではお体ご自愛下さいませ。かしこ

(こちょうのおきな・珠数師)
平成11年6月掲載 宗教工芸新聞より抜粋