拝啓、寒さもひとしお身にしみる頃、貴殿におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
さて早速ですが「星月」の価格が下がった理由の二、利用法 ですがこれは結局「星月」には珠数以外の利用法が無い為ということです。毎年出来る実ですが食べることも出来ませんし、もちろん薬にもなりません。珠数ぐらいといっては失礼にあたるかもしれませんが、消費量が少なすぎて結局残ってくるのです。そして毎年それの繰り返しでとうとう持ち切れなくなってしまったというところでしょう。ですから在庫処分の意味も少なからずは最初のうちはあったのではないでしょうか。
しかし多少の問題は御座います。収穫する際に地元農民がお金になるということで実が大きくなるまでに取ってしまうのでそれで違う種類の実を使わなければならなくなったということになってしまいました。これが第八回で書かせていただいた二種類ある理由で御座います。大きな実ほど「星」の数が多いので区別しやすいと思いますので、一度お店にある「星月」をよくご覧になって比べて見てはいかがでしょうか。もしお分かりいただけなかったら御取引きのある「お珠数屋さん」から「星月」を仕入れしてあげてください。
さて、最後の三、内輪もめ ですがこれはとどのつまりが兄弟喧嘩ということなのです。第八回で書いた海外の某氏には兄弟が何人かおられるようですが彼は長男でもありまた着眼点も運も良かったのでしょう「星月」を商うことで見事に成功なさいました。しかし有り勝ちなことかもしれませんがお金の面で徐々に兄弟間で争いが起きるようになってしまいました。兄弟別々の仕事についておればそういう事も無かったでしょうが弟が結局、安価な値段で横流しをしてしまったようです。他人同士の喧嘩よりも兄弟喧嘩の方が強烈なのはどこの国でも同じなようです。
以上挙げさせていただいた三種の理由が重なってしまったようでそのため価格は下がってしまいました。せっかく「星月」は小売店様にとってはお寺様にお勧めしやすい価格の商品であったにもかかわらずこういう事になってしまい、そうかといって代わりにこれぐらいの価格でしかもあらゆる大きさに対応できる「実」の商品は他には御座いません。
私が現役の頃にはよくお客様から「星月の代わりは無いのか?」とお叱りを受けましたが残念ながら今もって代替商品は無いようで御座います。広い中国や東南アジアをくまなく探せばきっと良い実がいつの日か見つかるでしょう!?
この辺りで「菩提樹」についてはお開きとさせていただきます。
それではお体ご自愛下さいませ。
かしこ
(こちょうのおきな・珠数師)
平成11年12月掲載 宗教工芸新聞より抜粋