拝啓、若草もえ、かげろうもえる季節、そして花曇りの昨今貴殿におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
さて私、先日久しぶりに編集担当者の方に連れられて「展示会」に行ってきました。何年ぶりかになるとは思いますが、やはり懐かしさで結構感動致しました。展示されている商品を見るにつけ業者様があの手この手といろいろ工夫されているのを見ていますと、最近の不況の中でどう売上に繋げていくか頭をひねられているのがなかなか大変だと思う反面、価格が安い商品がかなり多く「これもまた海外物か」という感じで、これはいくつかの会場で同じ印象を受け「あまり変わり映えが無いな」というのが正直な感想で御座いました。生き残りをかけていらっしゃるわりには面白味がなく、これは私に限らず来場されているお客様も同じ印象を受けていらっしゃったのではないかと思います。かえって仏具や「珠数」など関連商品の方に工夫が見られ、ある会場には「古美術品」を展示されていたりし、これもまた「展示の妙だ」と関心致しました。仏壇仏具の展示会にかならずしも仏壇仏具だけを展示しなければいけないわけではありませんからね。これもまた御自分の特徴を出す術であり、そしてある意味では誰もが入り込むことのできない商品でもあるわけですから。
さてまた前置きが長くなってしまいましたが、前回の続きでシトリン「citrine」はアメジストを熱処理して作り出した(もちろん天然物も御座います)としておりますが、その他にも茶水晶「brown quartz」のほとんども水晶を熱処理したものであります。しかし実際の茶水晶も地下で天然の放射線を浴びたと考えられていますから、以前に書きました水晶の「天然」と「養殖」の考え方に近いものがあると思えます。
さて話は戻りますがシトリンについてもう少し詳しく述べますと、化学組成は水晶系ですから二酸化珪素ですがこれによく似たものにトパーズ「topaz」があります。化学組成はアルミニウム・フッ素・水酸珪塩酸でまったくの別物ですが見た目は黄色でそっくりです。しかし厳密にはトパーズのほうがシトリンよりも価値が高いものですので、「珠数」の分野ではほとんどの場合トパーズの名が使用されています。そして、トパーズも採取されにくくなってきておりますので、水晶と同じく「人工トパーズ」が現在では中心となってきております。それから以前勤めておりました「お珠数屋さん」では、シトリンのことを「黄水晶」と呼んでおりました。それでは紙面がなくなりましたので続きはまた次回。
かしこ
(こちょうのおきな・珠数師)
平成12年4月掲載 宗教工芸新聞より抜粋