拝啓、夜空に秋の気配を感じる頃、貴殿におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
さて、貴殿は非常に興味深いテレビ放送があった事をご存知でしょうか。
先月のことだったのですが、たまたま某テレビ番組を見ておりましたら、最初に「ホープダイヤモンド」についての因縁話があり、その後に「ブラジルで光る街がある。」というのがありました。その街はそれこそカメラのフラッシュのようにあちこちで光り輝き、一瞬の非常な明るさが瞬いておりました。もちろん雷などではなく(実際の明るさは雷のようでしたが)原因は何かと申し上げると、それが何と街の周囲にある採石場にあったのでした。その採石場では石英が取られていて、これが犯人だったのです。以前水晶について書かせていただいたときに「ピエゾ電気」について述べさせていただいたのをご記憶だとは思いますが「石英に圧力をかけると電気が発生する。これを発見した人の名をつけてピエゾ電気と呼ぶ。」という事でしたのですが、この現象がまさしくそれだったのです。つまりこの街は周囲で石英が採掘されるだけでなく、街の地盤自体も石英で出来ていて、地中からの自然の圧力が絶えずこの石英にかかりその結果、圧電効果(ルミネッセンス効果)で電気が発生しました。テレビに映ったのは夜の街並でしたが、田舎町ですから、ネオンサインもそれこそ街灯も無い街のあちこちで有名スターが来て、そのため取材カメラマンがバチバチ、フラッシュをたいているかのように光ったのでした。番組では実際、石英に圧力をかけると光るのか実験されていましたが、周囲を真っ暗な状態にしておいて、ハンマーでたたいて目を凝らしてようやく光ったかなという程度でしたから、このブラジルの街の周囲は無尽蔵といっていいほどの石英があるのではないかと思われました。いかにも自然の力の偉大さを目の当たりにしたような気になりました。
番組ではこの後「トルマリン」についても放送がありましたが、この石に関しましては後程くわしく書かせていただきますが、少しさわりだけ説明させていただきますと日本名を「電気石」といいましてその名の通り特有の電気的性質を持っていて、結晶をゆっくり暖めると一方の端はプラス、もう一方の端はマイナスに荷電します。これにより静電気を発生し塵を引きつけたりするのですが、この性質が貴殿も良くご存知のパワーを発揮するわけです。
ここで申し訳御座いませんが、今回は「瑪瑙」についての説明の予定でしたが、いずれ日を改めて。それでは紙面が無くなりましたので、今回はこれにて。お体ご自愛下さいませ。
かしこ
(こちょうのおきな・珠数師)
平成12年8月掲載 宗教工芸新聞より抜粋