謹啓、野山もにわかに秋色をおびる頃、貴殿におかれましてはいかがお過しでしょうか?
さてそれでは早速前回の続きを。前回は石英による偉大な自然現象を紹介し、その後トルマリン「Tourmaline」について少し述べさせていただきました。その自然石の効果を書かせていただく前にまず学術面から。
この半貴石は三方晶系に属し、化学組成は複雑なホウ珪酸塩であります。産地は主にロシア・マダガスカル・アメリカ合衆国・ブラジル・ミャンマー・東アフリカ・カナダ・メキシコ・ブラジル・オーストラリアで、ペグマタイト(巨晶花崗岩)の鉱脈や花崗岩の中で発見されます。そして顕著な特徴と致しまして、非常に複雑な色合いをしていることが述べられるでしょう。ピンク・緑・赤・濃青色・菫青色・黄・無・黒といった多種多様な色合いを示すことで、一つの石の中に二種以上の色を示すことが多く、中には十五種もの違った色や色合いを示すものもあるそうです。その中でもピンクは産出量が少なくルビーレッドの石はもっとも価値が高いのですが、これはルべライト「Rubellite」と呼ばれていて、高価な石として扱われております。また昔、ビクトリア朝時代には喪服用の宝石として黒色トルマリンが広く使われていたそうですが、現在は宝石としての価値はほとんど無いといって良いそうです。しかしながらそうであったと致しましても、今はすばらしい価値が発見されております。
哲学者ジョン・ラスキンは「トルマリンの科学的性質は、優れた鉱物の原料というよりも、中世の医者の処方薬のようだ」といっておりますが、まさにそれほど身体に良い、今流行の言葉で申せば「癒し系」の石といって良いでしょう。平らかまたは楔型の末端を持つ角柱として結晶化し、どの結晶も、各両端の構造が異なりそのために特有の電気的性質をもたらすのです。そのため、水分に触れたり、熱や圧力を加えたりすると、マイナスイオンや遠赤外線が発生するといわれておりますが、このマイナスイオンというエネルギーが最近非常に注目を浴びているのです。
マイナスイオンとは、自律神経を刺激し細胞を活性化させ血液の浄化や抵抗力を増進しその上、美肌効果もあるといわれているのです。これはよく知られた例としては、森林浴や、噴水のそばや早朝の爽快感もこれの力によるといわれています。最近マイナスイオン発生の空気清浄器などと言うものもよく見かけますがこの効果の為のようです。
さて途中で残念
かしこ
(こちょうのおきな・珠数師)
平成12年9月掲載 宗教工芸新聞より抜粋