拝啓、新春のお慶びを申し上げます。
さて、とうとう世紀も変わりましたが、貴殿の二十世紀はいかがでしたでしょうか?二十世紀という言い方はキリスト教の発想ですので、私ども仏の世界に関係致していた人間には、さほど重要な事ではないかもしれませんが、区切りとして考えてみますと、やはり世紀の変わり目にはいろいろな出来事があるものです。
海外から大量の完成品が入ってきていると聞きました。珠数業界も大変な時代へ突入してしまい、これから廃業や倒産されるお得意様も出てくるでしょうし、生き残りを皆さんで考えていかなくてはいけませんでしょう。
さて生き残る方法として、私が考えます一つは「修理」の件です。「修理」についてお得意様はいかがお考えなのでしょうか?
私が現役の頃は、修理はアフターケアの一つと考えておりました。商品を販売して、それの修理やお客様から預かった品の修理です。しかし実際には自社が販売した商品はほとんど無く、他社製品が圧倒的であったのが現実です。ご注文品をやはり先に納めますから、修理品はどうしても後回しになってしまうのが実際です。が、それを得意先が理解されているのか疑わしいのです。「修理が遅い。早くしろ。」ばかりおっしゃられますが、商売ですから良い得意先のを優先するのが当たり前でしょう。それをろくに注文もされないのに、修理ばかり送ってこられてもどうしようもありません。商品は、出張で来られる問屋などから購入しておき、修理は専門店に任す、などという考えは虫が好すぎます。私が現役の時に展示会で「実演をしてほしい」という要望があり、会場でしておりますと驚いた事に、日頃の取引きのまったく無い客が修理品を持ってきて「その場で直せ。」などという、あまりの事に呆れ返ったという過去がありました。
ここで断っておきますが優良得意先というのは、一、途切れない注文があって二、支払いが良く三、お互いが対等の関係である事「フィフティーフィフティー(互いの気持ちを理解しあう)の関係」をいうのです。やはり人間関係が大事ですから、無理を理解しあう事が大切でしょう。しかし現実には「買ってやっている。」と思っておられる方が相当多いと思います。そういう得意先はこれからの時代には生き残れないでしょう。
以前にも書かせていただきました「共生」という言葉は、同業者同士だけではありません。お客様とメーカーとの間にも必要になってくる言葉だと私は思っております。
私の考えにご意見ある方は、編集部までお寄せ下さい。お待ち申し上げます。
それではこの辺で…
かしこ
(こちょうのおきな・珠数師)
平成13年1月掲載 宗教工芸新聞より抜粋