拝啓、冬の名残がなかなか去らず、貴殿におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
さて、この連載も早いもので丸二年を迎える事になりました。ちょうどこの原稿を書いております今は「正月号」が発刊された時でそれを見ながら書いておりますが、アンケートの中でこのエッセイの事が記載されておりますと大変うれしい気持ちになるものです。老人のつたないエッセイが、ここまで続けられておりますのも皆様のおかげです。これからも引き続いてご指導ご鞭撻の程をよろしくお願いいたします。
しかしながら、この連載を珠数業界関係者の方はいったいどういう風に見ておられるのでしょうか?「こんな文章は、私にも書ける。」とおっしゃる方もいらっしゃるでしょうし、私も昨年来体調を崩していて粉骨砕身努力はしておりますが、多少疲れてきましたので一・二度交代して書いてみられてはいかがでしょう、お願いいたします。(まったく無理なお願いかもしれませんが)
さて「修理の件」の続きでありますが、この原稿を書いている今現在、一月末の時点で編集部への前回についての意見・抗議はいっさいございません。ということは、購読者の方々の中で珠数を販売なさっているほとんどの方が「修理は何でも預かる。安物でも形見の品ならともかくも、修理代金のほうが新品より高く付いても構わない。それによってもしかしたら仏壇を買ってくれるお客様が手に入るかもしれない。」こういう風に考えていらっしゃるのではないでしょうか。「珠数屋」にとってはたまったものではありません。しわ寄せはこちらばかりで、良い商品は買ってもらえず修理品ばかり送ってこられる、といった図式が完成致します。小売店様の多くが「珠数はどこの店で買っても同じだ。」と思ってらっしゃるかもしれませんが、とんでもない間違いです。仕立ての仕方や使用している材料の差はかなりのものがあると思います。
昔からある言葉ですが「値段相応」は珠数の中で完全に通じている言葉です。単純に景気が悪いから少しでも安い商品を買って販売しよう、とされている方は注意していただかないといけません。それはクレームの問題で小売店様にとって悪いうわさは大変な痛手となるでしょうし、珠数に関して言えば「買ってすぐに切れた。」が一番いけない事でしょう。石類の安物は「穴磨き」・「面取り」・「センターあわせ」のいずれかがされていませんからそこを注意してください。「穴磨き」か「面取り」がされていないから切れやすいわけです。商売の基本である良い品質で安い珠数をお取り扱い下さい。
それでは今回はこの辺で…
かしこ
(こちょうのおきな・珠数師)
平成13年2月掲載 宗教工芸新聞より抜粋