京都の老舗の数珠屋さん 中野伊助

 数珠つなぎコラム

「サバイバルな珠数業界 - 修理について」その3

 拝啓、小川の水もぬるみ花粉も良く飛ぶ今日この頃、貴殿におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
 さて早速ですが前回の続きを。
「修理の件」を此所数回続けておりますが、前回の「宗教工芸新聞」に驚いた事に某珠数組合様が「保証書」を発行されるという広告が出ました。あまりにタイミングがよすぎるような気が致しましたが、そのことはさておきこれ自体は非常に良い事だと思います。私が現役の頃には「電化製品には保証書は付き物だが、珠数にも修理は必ずあるので、何か他店との区別のためにもそういった物は出来ないだろうか?」とのご提案があり、「保証書」の原形のような「修理袋」なるものをお客様と共同で考案した事も御座いました。
 これは某組合様のように一年間内無料修理というものではなく、お買い上げ時に「修理カード」を作成し「日付・店名・商品名」を記した袋を一緒にお渡しし、修理時にその袋に入れてお買い上げ店に持ってきてもらえれば格安で修理をする、その袋が無い場合は判断にもよりますが、他店でお買い上げとみなし修理はするが価格は安くない、といった方法で御座います。こうすれば余程の場合を除いて(あまりに遠方で持っていけない等)少なくともお買い上げ店に顧客は修理品を持っていかれるでしょうし、その際に線香や蝋燭の小物の一つもお買い上げいただけるでしょう。これによりいわば「顧客の囲い込み」、つまり固定客が出来るという計算だったのです。
 ということで小売店様にとっては、同じ商圏内でライバル店に顧客を取られるのが困るわけですから、珠数の修理ひとつをとっても他店と差別化が出来ます。それに小売店様も実際は修理を預かるということは、管理の面倒な事を考えると、出来るだけ引き受けたくないといった声も聞きますので、自店で販売した商品についてはこれで責任が持てるという判断もありました。
 しかし、実行してみますと物事というのは思い通りにいかないもので、商品名の記載がいいかげんだったり、修理袋自体を顧客が紛失されたりいろいろトラブルも御座いまして、結局一社だけでこのような事をしてもあまり効果が薄い、実行するなら一斉にそれも同業者と共同でないとと言う事になりました。その後は残念ながらお蔵入りになっていましたがどうでしょう?某組合様一度ご検討頂いてこの案も採用いただけませんでしょうか?二本立てで保証すれば効果絶大だと思いますが…。
 それでは勝手なお願いをして今回はこの辺で。
かしこ

(こちょうのおきな・珠数師)
平成13年3月掲載 宗教工芸新聞より抜粋