京都の老舗の数珠屋さん 中野伊助

 数珠つなぎコラム

「珠数販売必勝マニュアル(?!)」

 拝啓、大空にこいのぼりが躍りはじめる頃、貴殿におかれましてはいかがお過ごしでしょうか?
 さて、今までは珠数の起源や使用されている石について、あるいは修理についてなどを説明させていただいておりましたが、今回からはそのものの功徳・意味・心構え等お客様がセールストークとして利用できる事柄を御説明させていただきましょう。
 これがあれば「珠数マニュアル」に成らん事を望むものです。そうすれば「珠数」の地位も少しは向上する事が出来るでしょう。なぜなら現役の頃常々私は感じておりましたが、例えばフランス料理で言えば「珠数」は前菜かスープかあるいはデザートのようなものか、もしかしたらメインディシュのステーキの脇に付いているポテトやニンジンのようなものかと思った事も数知れません。と申しますのもお客様(卸・小売店)はあくまで仏壇や仏具を売るのが主であって、珠数は無くてはならないものだが、いつまでたってもステーキには絶対なれない、必要なものだが食べ残される事も多い、そんな扱いを受けているような気がしてなりません。   
 いかがです?同業者の方もそう思われた事はございませんか?お客様の言葉の端々や態度にそういった思い感じられませんか?私の思い違いでしょうか?もちろんすべての方だとは申しませんが、一部の方の中に取り扱いのいいかげんさを感じていたのです。
 ですからもし「珠数販売必勝法」のようなものがあって、「珠数」がどんどん売れて笑いが止まらないようになれば、売り上げや利益に大きく貢献できればもっともっと真剣に取り組んでいただけると思うのです。そうすればメーカーと販売業者が対等の関係になり、しいては相乗効果を生み業界自体の発展に繋がりしかも「珠数」の地位も向上するのではないでしょうか。理想論かもしれませんが「夢」を持てば、それに向かって邁進すればいずれそれは花が開く、私の現役時代には達成できませんでしたが後輩諸君に少しは貢献しようと日夜念じております。
 やあ、それにしても又前置きが長くなってしまいました。年寄りは話がついつい永くなってしまってそれが若い人にいやがられる原因の一つでしょう。本当に申し訳御座いません。紙面も無くなってまいりましたのでそれではこの辺で。次回にご期待ください。ではお体ご自愛下さいませ。
かしこ

(こちょうのおきな・珠数師)
平成13年4月掲載 宗教工芸新聞より抜粋