京都の老舗の数珠屋さん 中野伊助

 数珠つなぎコラム

「日課珠数」その2

 拝啓、秋涼の候、貴殿におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。お彼岸商戦はいかがでしたでしょうか?残念ながら戦う前から「負け戦」の風評が飛び交っていたようですが。さて早速ですが前回の続きを書かせていただきましょう。
 前回「日課念珠」についてでしたが、その後の調べでいくつか新しく分かった事が御座いますので書かせていただくと「阿波介」が当時あった「百八珠数」で念仏の数を計ったところ弟子珠の上下が激しく、その緒が度々切れたので、ついに両手に「百八珠数」をもち一方が一巡すれば他方のひとつを操り、その数を相乗して念仏の数を計算した事から始まったそうです。そして三万繰は一心院の称念上人考案ですが、六万繰は鹿ヶ谷の忍徴上人の考案だそうです。そして数の余りですが(三万繰の三万二千四百回の二千四百と六万繰の六万四千八百回の四千八百)は息継ぎの空転分として数の計算に入れないそうです。大変誤った解釈を書いてしまい申し訳御座いませんでした。お詫びの上、訂正させていただきます。もし今後も間違いが御座いましたら遠慮無く、編集部の方までご連絡下さい。)
 さて、そういった「百八珠数」や「日課珠数」といった珠数をもって拝むのは、手に持つだけとは限りません。すなわち頭上に捧げ、髪あるいは耳や首や肘に掛け、掌中に収め、手に持つといった七種類の拝みかたがあるといいます。
 しかし決して不浄の身でそのような持ち方はいけないと「仏説陀羅尼経」では戒めています。また円光大師も「よく身を清めて手も洗って珠数を取って袈裟を着る。不浄の身で持佛堂にはいるべからず。」と申されています。「しかし多くの人達がそんなことは気にせず、不浄の身で珠数を持ち、鼻紙と一緒に懐や袂に入れているのは恐れ多い事だ。」と嘆かれています。
 そして珠数は仏前に安置しますが、その置き方は円壇相や蛇盤相のように置く事になっています。この円壇相とはただ一重に置く事で、蛇盤相とは蛇が巻いているように幾重にも巻いて置く事だそうです。現在では「珠数掛け」が販売されていますので、それに掛けて仏前に置くのが良いでしょうし、貴殿もそれを顧客にお勧めなさったらいかがでしょうか。また携帯するのも「珠数袋」に入れることで汚れも防げますし、珠数も長持ちしますのでこれもお勧めです。当たり前の事でしょうが原点に戻って考えてみると、なにやら商売につながる事が出てくるかもしれませんね。
 それでは今回はこの辺で。お体ご自愛くさだい。
かしこ

(こちょうのおきな・珠数師)
平成13年9月掲載 宗教工芸新聞より抜粋