京都の老舗の数珠屋さん 中野伊助

 数珠つなぎコラム

「大繁盛の法則」

 拝啓、向暑のみぎり 貴殿におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
 さて、最近の講演会では「私は皆さんにどうやって勝つか、という話をしたいと思います」と、切り出す講師は受けないそうです。人気があるのは「いかに日本経済はだめか」という話をする講師だそうで、それを聞いて「うちの商売が悪いのは日本経済が悪いせいだ」と、安心して帰ることが出来るからだそうです。しかしこれでは、何の解決にもなりません。
 たしかに、不況でも売れている商品はたくさんあるでしょうし、有望な市場も多いでしょう。売れないことを景気のせいにしないで、そんな暇があるなら、有望な市場と自社の接点を探してみてはいかがでしょう。こんなことから、ある経済誌が「売れないのは不況のせいにしないこと」をはじめ大繁盛五つの法則を導いています。
一「あれもこれもやめ、力を一点に集中させる」=物が満ち溢れているから、なかなか消費者の心に届きません。そこで「これだけは競合に負けない」という一芸を持った商品に絞り、そこに力を集中させる。
二「変化球でなく直球で勝負する」=例えば、わかりやすいネーミングで商品の特性を打ち出すことが重要でしょう。最近のヒット商品で「体に脂肪がつきにくい健康エ○ナ」のように、商品の機能をそのまま名称にしているものも多いのです。
三「素人発想で業界の常識を覆そう」=○○があったらいいな、という消費者の素朴な思いを素人発想と馬鹿にしてはいけません。カット十分で壱千円という理容店が繁盛しているように、業界の常識や既成概念にとらわれない消費者の素朴な思いに応えた企業が、いわゆる勝ち組みとなっているのです。
 最後が私は最も重要かと思いますが、
四「安く売るな、高く売れ」=格安品と高級品が共に売れる消費の二極化現象が進んでいますが、最近では格安品はもういい、という気分が広がりつつあるのも事実です。今後はちょっと贅沢をしたい、という欲求を満たす若干高めの商品が狙いです。また、中途半端な値下げをするぐらいなら、競合店、競合商品の二倍の価格で売るにはどうすればいいかを考える方がいいでしょう。
 私達の関係する宗教用具業界は、たびたび商品を買い替える業界ではないですから、いかに高く売れるかがお店の存続につながるのではないでしょうか。もちろん消費者をだます霊感商法にならない範囲内で。
「愚かな味方ほど危険なものはない」
      かしこ

(こちょうのおきな・珠数師)
平成14年6月掲載 宗教工芸新聞より抜粋