ピルについて

     ピルについて

 現在、わが国は世界でも少ないピル未認可国ではあるが、実際には約50万人位の
女性が常用しているものと推定されている。近年、含有ホルモン量を少なくした低
用量ピルが開発され、避妊の手段として比較的安全で、かつ有効であることが認め
られており、近く低用量ピルが経口避妊薬として認可されようである。

1.ピルとその歴史
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  ピルpillは本来、丸薬または錠剤を意味するが、経口避妊薬が世界的に普及する
に従い、ピルと言えばこれを指すようになった。

(1)ピルとは              *progesterone:黄体ホルモン及び類似作用物の総称
 ピルpillは、経口避妊薬oral contraceptive pill とも呼ばれる。女性ホルモン
の卵胞ホルモンestrogenと黄体ホルモン(類似作用物質を含む)progesterone*の
 2種の合成ステロイドホルモンが配合された製剤である。
  エストロゲン量が、51μg以上のものを高用量ピル、50μgのものを中用量ピル、
50μg 以下のものを低用量ピルと言う。なお、低用量ピルではプロゲステロンとし
ても、ノルエチステロンとして 1.0mg以下、レボノルゲストレル、デソゲストレル
として0.25mg以下である。          ・出題(2)
  月経周期の初めに脳下垂体からはFSH(卵胞刺激ホルモン)が分泌され、その
刺激で卵巣の卵胞が発育する。この卵胞が発育するとエストロゲンが産生される。
このエストロゲンはnegative feedback 機構により、下垂体のFSH分泌を抑制す
る。卵胞が成熟すると間脳からLH−RH(黄体化ホルモン放出ホルモン)が分泌
されて下垂体を刺激し、LH(黄体化ホルモン)が放出され、排卵が生じる。排卵
後の卵胞は黄体に変化し、そこからエストロゲンとプロゲステロンが分泌され、子
宮内膜に作用して着床しやすい環境を作る。約 2週間後に黄体は機能を失い、そこ
からホルモンの分泌が停止すると、子宮内膜が剥離して月経が始まる。
  この生理循環を利用して、月経周期の初めからエストロゲンとプロゲイテロンを
投与すれば、FSH、LHの分泌は抑制され卵胞発育も起こらず、排卵も生じない。
そして、子宮内膜も薄く、着床が困難な状態になる。そこで投与を中止すると、子
宮内膜が剥離して消退出血(月経様出血)を起こす。従って、月経周期を 4週間と
すれば、それに合わせて投与期間を 4週間とし、消退路出血を繰り返すことにより、
確実に避妊できる。      ・出題(1)
 このように、ピルは 2種の女性ホルモンによって、間脳−脳下垂体−卵巣系の排
卵機構を抑制し、無排卵状態を出現させて受精を防ぎ、避妊を行う方法であるが、
この他にも、子宮頚管から分泌される粘液の量を減少させて精子の進入を阻害し、
また子宮内膜を変化させて受精卵の着床を妨げるなどの作用もある。このためピル
は、現在行われている避妊法の中では最も効果が確実である。
 服用は月経開始の日より数えて第 5日目から毎日 1錠を21日間内服する。中止す
ると 2〜 3日で出血するから、これを月経とみなし、その第 5日目から再開する。
(2)ピルの歴史
 卵胞ホルモンと黄体ホルモンの 2種の合成ステロイドホルモンを使用すると排卵
が抑制されることは、1930年代から知られていたが、当時は大量に注射しなければ
ならず、それに伴って副作用も強いために、避妊薬としては実用化しなかった。し
かし、1950年代後半に、経口で服用しても有効なステロイドホルモンが合成される
ようになったので、米国のピンカスG.Pincusらが、1956年にプエルトリコのサンフ
ァンで経口避妊の実験を開始し、1954年ハ−ツらが、経口投与でエストロゲン活性
を失わないステロイドの合成に成功したこともあり、1959年から経口避妊薬として
の研究開発が進んだ。
 当時、人口増加抑制など、避妊の必要性が問題になったいたこともあり、FDA
が“Enovid 10” の使用を許可してから、欧米を中心に急速に世界中に広がり、使
用者は各報告で違いがあるものの、世界で 6,000〜9,000万人位と推定されている。
 ピンカスらが実験を開始したときのピルは、ノルエチノドレル9.85mgと、メスト
ラノ−ル150μgを含有していた。はじめはコストダウンのためステロイド含量を減
少させることが検討され、次第に含量の少ないピルが開発されてきた。 
 米国のFDAが1960年にピルの臨床使用を承認して以来、欧米を中心に急速に使
用されるようになり、それとともに副作用も報告され、特に静脈血栓症との因果関
係が問題になった。これに伴い1960年代の後半には英国、米国で含有エストロゲン
を 50μg以下にするよう勧告がなされている。
  1970年代初めの世界におけるピル使用人口は3,000〜4,000万人と言われ、エチニ
ルエストラジオ−ル 50μgとノルエチンドロン 1mgまたはノルゲストレル 0.5mgの
製剤であった。
  1980年代にはエチニルエストラジオ−ル 30〜35μg、ノルゲストレル 0.3mgと副
作用を減ずるため、ステロイド量を減らす研究がなされ、1985年以降はさらに低用
量の 3相性ピルが主流になってきた。
 わが国でも1960年、経口避妊薬として、エナビット(ノルエチノドレル 2.5mg、
メストラノ−ル 50μg)などを用いて治験が始められ、1962年には承認申請が行わ
れている。そして1964年には日本産婦人科学会の内分泌委員会において、医師が注
意して投与するならば 2年間程度の使用はそれほど問題がないだろうとの結論が出
された。しかし、その当時、感冒薬アンプル死亡事故があって、厚生省が新薬許可
に慎重になっていた。それでも1965年 7月に、ピル認可のための審議会が開かれる
予定であったが、特別部会での審議を突然中断、正式承認が行えなくなった。
  1972年には高用量ピルを要指示薬に指定し、処方せんのない店頭販売を禁じる措
置*がとられた。
 *:1957〜1966年には、高用量ピルが月経痛治療薬や月経周期調節薬として店頭
   で販売されていた。
  低用量ピルがわが国で、経口避妊薬として正式に認可を求める動きが出始めたの
は、1985年になってからで、日本母性保護医協会と日本産科婦人科が、低用量ピル
臨床試験の要望書を厚生省に提出した。これを受けて厚生省は「経口避妊薬の医学
的評価に関する研究班」が設置され、翌1986年には経口避妊薬としての低用量ピル
の臨床試験が始まった。そして一時は承認されるかと見られていたが、中央薬事審
議会配合剤調査会での審議がほぼ完了した1992年に、厚生省がHIVの感染拡大を
配慮して、審議を中断した。しかし、1995年 4月、調査会での審議が再開、 9月に
は「HIV感染とピルの使用率との間に明確な相関は認められない」と言う結論に
達した。


2.低用量ピルとその特徴
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 ピルの利点は確実な避妊効果にある。ピルの避妊効果はゴナドトロピン(LH、
FSH)の抑制による排卵抑制が主な作用であるが、ピル使用者の避妊効果は、 0
〜0.59( 100婦人年当たり)で、しかも妊娠例の多くは服用忘れによるものと推定
されている(水口)。         避妊率(pearl index) 

(1)従来のピルと低用量ピルの配合量比較
  ピルの副作用を少なくするために、避妊効果が低下しない範囲で含まれるステロ
イドの量をできるかぎり減少させる工夫が行われた。
  1969年FDAや国際家族計画連盟(IPPF)よりエストロゲン量は、50μg 以
下が望ましいと勧告がなされ、それに基づきエストロゲンの低用量化が進められた。
ピルの副作用は必ずしもエストロゲンに起因するものばかりでなく、プロゲステロ
ンが脂質代謝に悪影響を及ぼし、その結果、動脈硬化等の血管病変による虚血性心
疾患、高血圧の頻度が増加することが、1974年、英国の Royal College of General
Practitioner(RCGP)から指摘された。これはプロゲステロンのもつアンドロ
ゲン作用によるものであり、その後エストロゲンと同様プロゲステロンの低用量化
も進められた。しかし、ホルモン含量の低用量化により不正出血の増加、消退出血
の不規則化、避妊効果減弱等の問題が指摘され、より強力な作用を有するプロゲス
テロンの開発の必要性が促進された。      

〔表 1〕ピルのステロイド含有量の比較                  
-----------------------------------------------------------------------
1.従来のピル
    エチニルエストラジオ−ル      50μg×21= 1,050μg= 1.05mg
    dl-ノルゲストレル             500μg×21=10,500μg=10.5mg
                                  ------------------------------
        合計                                             11.55mg     
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2.低用量の一相性ピル(例)
    エチニルエストラジオ−ル      30μg×21=  630μg=0.63mg
    d-ノルゲストレル            150μg×21=3,150μg=3.15mg
                                 -----------------------------
      合計                                  3.78mg      
-----------------------------------------------------------------------
3.低用量の二相性ピル(例)
    エチニルエストラジオ−ル      30μg×21=  630μg=0.63mg
    d-ノルゲストレル              75μg×11=  825μg=0.825mg
    d-ノルゲストレル            150μg×10=1,500μg=1.5mg    
                                 --------------------------------
        合計                              2.955mg     
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4.低用量の三相性ピル(例)
    エチニルエストラジオ−ル      30μg×6 =  180μg=0.18mg
    エチニルエストラジオ−ル      40μg×5 =  200μg=0.2mg
    エチニルエストラジオ−ル      30μg×10=  300μg=0.3mg
    d-ノルゲストレル              50μg×6 =  300μg=0.3mg
    d-ノルゲストレル              75μg×5 =  375μg=0.375mg
    d-ノルゲストレル            125μg×10=1,250μg=1.25mg    
                                 ---------------------------------
        合計                                           2.605mg        
-----------------------------------------------------------------------
   (注)ノルゲストレルが、2.〜4.では d- 体になる。

(2)含有ホルモン剤の変遷
 一般にエストロゲンでは、エチニルエストラジオ−ルの効果は、メストラノ−ル
の 1.7倍強力である。従って、低用量ピルにはエチニルエストラジオ−ルが使われ、
プロゲステロンでは 19-ノルステロイド系のものが使われる。

1.エストロゲン:卵胞ホルモン、発情ホルモン
  a.ethinyl estradiol    b.mestranol
 ピルに含有されるエストロゲンは、メストラノ−ル(MEE)とエチニルエスト
 ラジオ−ル(EE)で、メストラノ−ルは体内で加水分解された後、脱メチル化
 を受けエチニルエストラジオ−ルに変換され生物活性を発揮する。しかし、この
 変換率は50〜70%で、しかも個人差があり効果は不確実である。従って、現在使
 用されている低用量ピルでは、すべてエストロゲンとしてエチニルエストラジオ
 −ルが用いられる。
2.プロゲステロン:黄体ホルモン
  a.19-nortestosterone誘導体
  b.3-desoxy-19-nortestosterone誘導体
  c.17-acetoxyprogesterone誘導体
  d.retroprogesterone誘導体
  e.その他  
 第一世代のものとして、estrane系化合物 のノルエチステロン(NET)、ノル
 エチノドレル(NE)、酢酸エチノジオ−ル(EDA)などがあり、いずれもノ
 ルエチステロンに代謝され活性を発揮する。
  第二世代のプロゲステロンとして、1970年代にgonane系のノルゲストレル(dl−
 体)が開発された。このdl−ノルゲストレルは受容体と強い結合力を示し、ゲス
 テロン作用はノルエチステロンより数倍強く、エストロゲン活性を有しない。
 現在では、dl−体(ラセミ体)の異性体のうち、活性を有しないl−体を除いた
 レボノルゲストレルが用いられている。このようにレボノルゲストレルは、薬理
 学的に不活性の立体異性体が混合していたものを分離することによって(d-体の
 みが薬理学的活性がある)、従来の半分の量で有効になった。
  第三世代としては、プロゲステロン受容体との結合力が強く、しかもアンドロゲ
 ン受容体との親和性を減少させたデソゲストレルが開発された。また、アンドロ
 ゲン受容体との結合力に変化はないが、より強力にプロゲステロン受容体と結合
 するゲストデン、アンドロゲン活性を示さず抗エストロゲン活性を有するノルゲ
 スチメイトも開発された。

(3)低用量ピルの投与形式
 低用量ピルでは、含有ホルモン量の低用量化とともに、 1周期当たりの服用ホル
モン量の減量を目的として、月経周期の生理的ホルモン動態に類似させた段階的投
与法が考えられ、それぞれ 1相性、 2相性及び 3相性ピルに分類される。
   3週間ホルモン含有量が同じものを服用するのが 1相性で、周期中の前半と後半
で量が異なるものを 2相性、さらに 3段階で異なる量を服用するのが 3相性ピルで
ある。                    ・出題(3)
   1錠中の含有量のみを減少させた 1相性のものは服用法が簡単であるが、無月経、
月経不順、不正出血などが起こりやすいという欠点がある。これに対して、月経周
期の時期によって、ステロイドの含有量の異なった錠剤を服用させ、生理的なステ
ロイドホルモンの濃度変化に類似した状態を作り出す 2相性・ 3相性では、月経異
常が起こり難いという利点はあるが、反面では服用法が複雑で、のみ忘れの場合に
どうするか迷うなどの欠点もある。
 従来の中用量ピルでは、月経周期の 5日目から服用を開始するが、低用量ピルの
場合ホルモン含有量が著しく低いため、服用開始が遅れると避妊効果は得られない。
従って、服用開始の第 1周期は月経開始第 1日目より始めることが必要で、 2相性
ピルでは11日と10日の計21日間、3相性では 7日、7日、7日あるいは 6日、5日、10
日の計21日間にわたり 1日 1回 1錠を服用し、 7日間の休薬後、次の周期の服用を
開始する。
  薬剤によっては、21日間のピル服用を続けて、 7日間不活性の錠剤(プラセボ−)
を服用させ、29日目には次周期のピル服用を開始するという方法をとるものもある。
その結果、服用周期は確実に28日型にコントロ−ルされ、消退出血の持続日数、出
血量は正常月経に比較して短縮、減少の傾向を示す。

(4)低用量ピルの利点
  低用量ピルの利点としては、副作用の少ないことが挙げられる。
1.含まれるステロイドの全量が少ない
2.エストロゲンの副作用として、血液凝固への影響や吐き気・乳房緊満感が少ない。
3.プロゲステロンの副作用として、糖代謝・脂質代謝への影響が少なく、高血圧発
 症の可能性が減少した。
4.post pill syndrome(休薬後無排卵)を起こすことが少ない
 低用量ピルの場合、ホルモン含有量が極めて少ないため、服用者の約 5%は排卵
が抑制されない。しかし、十分な避妊効果が得られるのは、低用量ピルではゴナド
トロピンの抑制による排卵抑制作用の他に、子宮内膜への直接作用による着床阻害、
卵巣への直接作用によるステロイドホルモン合成阻害、頚管粘液の減少、粘性増加
による精子通過障害作用も関与していると考えられる。従って、飲み忘れによって
血中ホルモン濃度が低下すると、精子通過障害作用や着床阻害作用が低下し、妊娠
可能の状態になる。特に 2回以上の飲み忘れは妊娠のおそれがある。従って、飲み
忘れがあった場合は、すぐに前日の飲み忘れ分を服用し、その後当日分を服用する。
 ピルと子宮内膜ガンの関連性に関する疫学調査では、ピルの長期服用により相対
危険率は0.2〜0.5と1/2〜1/5に減少すると報告されている。これはプロゲステロ
ンの子宮内膜細胞増殖に対する拮抗作用によると考えられている。また、ピル服用
者の卵巣ガンの相対危険率は 0.6で、特に 4年以上の長期服用者の相対危険率は、
 0.3までに低下する。これはピル服用による排卵の抑制が卵巣ガン発生の予防に働
くことによるとされている。

(5)低用量ピルの注意点
 FDAによれば、次の場合は禁忌としている。
1.血栓性静脈炎または血栓性障害のあるもの
2.深在性血栓性静脈炎または血栓性塞栓障害の既往歴のあるもの
3.脳血管または冠動脈の疾患のあるもの
4.乳房ガン腫の判明しているもの、またはその疑いのあるもの
5.エストロゲン依存性腫瘍の判明しているもの、またはその疑いのあるもの
6.診断されていない性器異常出血のあるもの
7.妊娠の判明しているもの、またはその疑いのあるもの


3.低用量ピルとの相互作用
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 エチニルエストラジオ−ルは、P-450(CYP-3A)の阻害薬物として知られている
が、低用量ピルの場合は、その用量が少ないこともあって相互作用で問題になるこ
とは少ないが、次の薬物との相互作用が考えられる。但し、喫煙には注意する。
1.ピルの作用を強く減弱させる薬剤(代謝酵素誘導剤及び抗菌剤、吸収阻害剤):
  →他の避妊法に変更すべきである(FDAガイダンス)
  a.抗けいれん剤:フェノバルビタ−ル、フェニトイン・・・・バルビツ-ル酸系
    →他の避妊法に切り替えるか、中用量ピルを服用する。また、中毒に注意する。
      フェニトインはCYP3A4を強く誘導し、ピルとの併用により不正性器出血や妊
   娠例の報告がある。フェニトインをバルプロ酸などに切り替えることもある。
 b.抗菌剤   :ペニシリン系、テトラサイクリン系、リファンピシン
    →服用中と服用後 1カ月は他の避妊法に切り替える
      リファンピシンなどは、CYP3A を誘導し、ピル成分を血中から速く喪失させ、
   月経周期の異常や妊娠例が報告されている。
 c.抗真菌剤    :グリセオフルビン
    →他の避妊法に切り替えるか、中用量ピルを服用する
 d.抗結核剤  :リファンピシン、イソニアジド
 e.消炎鎮痛剤  :フェニルブタゾン
2.ピルの作用を軽度減弱させる薬剤:→他の避妊法に変更した方がよい
 a.抗菌剤   :1.-b.以外の抗菌剤
 b.抗トリコモナス剤  :メトロニダゾ−ル、タブソン
 c.サルファ剤  :スルファメトキサゾ−ル、トリメトプリム
  d.抗けいれん剤:プリミドン、エトスクシミド、カルバマゼピン
  e.催眠鎮静剤  :メタカロン、ニトラゼパム、トリアゾラム
 f.トランキライザ-   :クロルプロマジン、ジアゼパム、クロルジアゼポキシド、メプ
         ロバメ−ト
 g.消炎鎮痛剤  :アセトアミノフェン、フェナセチン、アスピリン
  h.利尿剤      :スピロノラクトン
 j.制酸剤      :      →ピルの吸収阻害
3.ピルの効果を増強させる薬剤:
  a.シメチジン  :
  b.ビタミンC :
    ピル成分(EE2:エチニルエストラジオ-ル)にVCを併用すると、血中EE2 の硫酸抱
  合能が低下し、逆に遊離型エストロゲンが増加する。


4.ピルの副作用
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 ピルと子宮頚ガン、あるいは乳ガン発生の関連は現在のところ不明である。

(1)高用量ピルの副作用
 従来の高用量ピルは、血液凝固系及び脂質代謝に影響を及ぼし、静脈血栓塞栓症、
心筋梗塞等の虚血性心疾患、高血圧、脳卒中などの脳血管障害の増加をもたらす。
                                  ・出題(5)
ピル服用者の静脈血栓症の相対的危険率は2.0〜5.6倍になるとされており、虚血性
心疾患の相対的危険率も 2〜6 倍で、高血圧でも1.5〜3.0倍で、 5年以上の服用者
では約 5%が高血圧を呈すると報告されている。  
 ピル服用と脳血管疾患との関連性に関しては、報告によって異なるが、高年齢、
高血圧の素因、喫煙者では注意が必要である。これらの循環器系の副作用は、喫煙
と年齢に高い相関を示し。35歳以上の喫煙者では危険率が高く、特に45歳以上の喫
煙者では著明に増加する。      ・出題(8)
 血栓症の副作用は、主としてエストロゲンの作用によるもので、血液凝固因子の
増加、血小板凝固機能の亢進、線溶活性の低下により血栓症の危険が増大する。た
だ、プロゲステロンは血中のHDLコレステロ−ルを低下させ、HDLコレステ
ロ−ルの有する末梢血管に沈着したコレステロ−ルを肝臓に移送する逆転送を阻害
し、動脈硬化を進行させる。    ・出題(7)
  経口避妊薬(ピル)服用中の患者で、肝障害、肝内胆汁うっ滞、肝腫瘍等の発現
が知られており、これらは主にエストロゲン成分の作用によるものと考えられてい
る。また、エストロゲン投与が慢性肝障害の悪化等、既存の肝疾患に影響を与える
場合があり、肝障害を有する患者へのエストロゲン投与にあたっては、慎重な配慮
が望ましい。

(2)低用量ピルの副作用
 低用量ピルでは、ステロイドホルモン含有量の低下により、従来の高用量ピルで
問題となった血栓性静脈炎、虚血性心疾患、高血圧などの重篤な副作用は著明に低
下し、わが国で行われた臨床治験では、これらの副作用は認められなかった。
                                          ・出題(6)
 しかし、エストロゲン配合量が少ないため不正出血が起きやすい。薬剤によって
頻度に差はあるが、わが国の臨床試験の結果では、11.6〜42.3%であった。不正出
血は服用始めの2〜3カ月で起こるが、服用を続けていると、体が順応して起こらな
くなる。                                  ・出題(4)
  また、服用のはじめに、悪心・吐気がしたり、乳房の膨満感が起こるが、これも
服用を続けていると消失する。          ・出題(9)
  服用により月経出血が減少し、貧血の頻度が減り、月経時の疼痛も消失する。し
かし、ピルの内服により約10%の人に血圧の上昇が起こる。
  低用量ピルでも、授乳中や、本態性高血圧、糖尿病、血栓性静脈炎や塞栓などの
既往のある人、ヘビ−スモ−カ−は避ける。


5.発売が予定される低用量ピル
・・・・・・・・・・・・・・・                                                  

  ミニピルの成分は、排卵を抑制するプロゲステロンのみである。これは、エスト
ロゲンの発ガン性その他の副作用を除去する目的で、プロゲステロンのみのもので
あるが、合剤型ピルにはその効果が及ばないので、現在では合剤型の研究開発が進
められている。

〔表 2〕わが国で発売が予定されている低用量ピル                            
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 分類  メ−カ−         商品名    錠数 プロゲスト-ゲン エストロゲン 
--------------------------------------------------------------------------
 1相性  日本オルガノン、三共          マ−ベロン  21    DSG   150    EE  30
        ----------------------------------------------------------------
     ヤンセン協和、田辺、協和発酵 オルソM   21    NET 1,000    EE  35 
--------------------------------------------------------------------------
 2相性  明治製菓                  エリオット21 10    NET   500    EE  35
                                          11    NET 1,000    EE  35  
--------------------------------------------------------------------------
 3相性  日本シェ-リング               トリキュラ−  6    LNG    50    EE  30
        山之内                    リビアン      5    LNG    75    EE  40
                                               10    LNG   125  EE 30 
       -------------------------------------------------------------------
        ワイス・エ−ザイ          トライディオ-ル     6   LNG    50    EE  30
        帝国臓器                  アンジュ      5    LNG    75    EE  40
                                               10    LNG   125    EE  30  
       -------------------------------------------------------------------
        日本モンサント                シンフェ-ズT28    7    NET   500    EE  35
        第一                      ノリニ-ルT28      9    NET 1,000    EE  35
                                                5    NET   500    EE  35   
       --------------------------------------------------------------------
        ヤンセン協和、田辺、協和醗酵  オルソ777   7    NET   500    EE  35
                                          7    NET  750    EE  35
                                             7    NET 1,000    EE  35   
---------------------------------------------------------------------------
注-1) 1相性は 2種のホルモンの比率が全性周期を通じて一定のもの。
       2、3相性のものは、 2、3段階になっているもの
注-2)プロゲステロン、エストロゲンの単位はμg
注-3)DSG:デソゲストレル、 LNG:レボノルゲストレル、 NET:ノルエチステロン
      EE :エチニルエストラジオ−ル

6.モ−ニングアフタ−ピル
・・・・・・・・・・・・・・                                                    

  モ−ニングアフタ−ピルとは一般的に使われる言葉で、医学的には性交後避妊薬
Postcoital Pill 、あるいは最近では救急避妊法Emergency Contraception と呼ば
れる場合もある。
  全く避妊をせずに性行為をしたり、あるいはコンド−ムが破損したなどのため、
避妊をしたが失敗した場合や、レイプされた場合に、72時間以内に処置すれば、
たとえ受精が起きても、子宮内膜への着床を防ぐことによって妊娠しないですむ。
 わが国では、もし妊娠したら中絶すればよいと考えが多く、この場合の研究はあ
まりなされていないが、欧米では広く研究され報告も多い。
  はじめの頃は、多量のエストロジェン(エチニルエストラジオ−ル5mgを5日間)
を内服させる方法が行われたが、その後、副作用などを配慮してエチニルエストラ
ジオ−ル 50μgとレボノルゲストレル250μgの配合剤を、性交後72時間以内に 2錠、
12時間後にさらに 2錠服用させる方法が報告されている。副作用としては吐き気、
嘔吐などの消化器症状が欠点であるが、避妊効果が高く、失敗率は 2.5%程度であ
ると言われている。

〔文献〕
    我妻    尭:避妊法の変遷,医学のあゆみ Vol.141 No.4, 178-180,1987.
    岡田・本庄:避妊薬の現況と今後の動向,月刊薬事 Vol.32 No.8,51-56,1990.
  水口 弘司:経口避妊薬の利点と問題点,産婦人科治療 Vol.65,160-166,
        1992.
    村上  旭:ピルの認可,治療学, Vol.27 No.5,96,1993.
    我妻    尭:モ−ニングアフタ−ビル,日医雑誌 Vol.112 No.14,1907,1994.
    千石・高岡:経口避妊剤,医薬ジャ-ナル Vol.31 No.S-1,209-212,1995.
    丸尾・望月:ピル服用法の現況,日本医事新報 No.3560,123,1995.
    NIKKEI MEDICAL:1995,12,15,107
    永田 一郎:経口避妊薬について,臨床と薬物治療,Vol.15 No.5,44-48,1996.

                                                        愛知県薬剤師会
                                                          薬事情報室

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