●9月定例市会代表質問要旨●

  民主・都みらい市会議員団   梅林 等議員

「2001年、京都は歴史を有する世界の都市の中で、最初に新しい世紀を迎える都市である。 京都は、歴史と伝統の礎のもと、先人たちのたゆみない努力により、常に時代に先駆け新しいものを創造し続け、幾多の苦難を乗り越えて千年を超える時を刻み続けてきたまちである。新しい千年紀の始まりに位置する21世紀の幕開けを迎えるに当たり、この千年を振り返りつつ、全世界に向け21世紀へのメッセージを発信するには、1200有余年の歴史を有するとともに、今日においてもなお活き活きと息づく都市・京都がその役割を担っていかなければならない。
 20世紀は、科学技術が花を咲かせたサイエンスの時代であり、物質文明が驚異的な発展を遂げ、モノの豊かさを享受できた時代であったが、その反面、二度の世界大戦をはじめとする数々の世界紛争や、人間疎外から環境破壊に至るまで、克服すべき様々な課題を突き付けられた時代でもあった。 新しい世紀を示すキーワードは、「環境」、「平和」、「人権」であり、まさに共に生きる「心の豊かさ」が求められている。来るべき21世紀は、これまで、ともすればないがしろにされてきた心の気高さや精神の尊さを再構築し、人類がその生来有する良心や人間性を豊かに開花させる時代でありたいと願う。 私たちは、新世紀を迎える節目の時を契機として、多くの市民の創意と英知、そして行動力を結集し、人類の平和と繁栄を希求する21世紀新時代のメッセージを、「日本の心のふるさと京都」から発信する。」として21世紀京都の進むべき方向を指し示しつつ、過ぎゆく2000年の12月31日から新世紀幕開けの1月1日にかけて、大文字五山の送り火をメイン行事に火の祭典「21世紀の火」など数々の記念行事を実施するため、市民と共に今、その準備を進めています。
 世紀が変わるといっても、単なる時間の経過に過ぎないと冷めた見方をする人もいますが、私はそうではないと思っています。
 人間の内なる深層意識の集積が大きな流れとなって、社会を変化させるエネルギーに転化していった過去の事例を多く知っているからであります。京都市民がこの記念行事の中から考え、改めて学び、感じるものがあれば、21世紀の京都にとってそれは大きな収穫といえます。
 20世紀はどのような時代であったかという総括、その上に立って21世紀のあるべき都市像の設計、21世紀における市民社会、市民生活の方向性、在り方について、ちょうど二つの世紀にまたがる節目に市政を担当する桝本市長の基本的な理念をまず改めてお示しいただきたいとここで決めたいところでありますが、市長の抱いておられる理想、選択、希望だけをお聞きするだけの場ではないとも考えています。 「新基本計画」づくりのための壮大な「21世紀・京都グランドビジョン」策定から具体的な実現に向けては、かつてのベルリンの壁、鉄のカーテン、38度線と同じように立ちはだかる現実の分厚い壁をクリアしながら進んでいかなければならないからであり、私は、それらのことを踏まえて、数点について質問致します。

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まず、21世紀の自治体運営の基本である地方分権についてであります。

 間もなく12年になりますが、私が市議会に議席を得たときの市長は、古都税紛争の渦中に巻き込まれ退任された方でしたが、その後すぐ医師出身の市長が就任されるという時期でした。

 前の市長には、アカウンタビリティ、「説明責任」とディスクロージャー、「情報の開示」を、その後のドクター市長には、ちょうど今、相次ぐ医療事故、医局の閉鎖的体質について国民の非難が噴出し、医療の情報開示、閉鎖的体質改善が求められていますが、医療界でいうインフォームド・コンセント、「説明と同意」、更に「医師と患者の関係と同様に行政と市民の対等の関係」がこれからの行政には基本的に不可欠であると機会あるごとに申し上げていました。

 住民が一番身近な自治体に日常の生活上の要望、要求を出すのが当たり前であるにもかかわらず、それが満たされないことに対する不満が蓄積し、自治体行政に対する不信が醸成されていく。

 逆に中央メニューを補助金で誘導する、行政で決まった計画が、地域に下ろされてきて、通知説明だけの場が設けられ、住民の反対運動、告発型の市民運動が巻き起こる。計画変更のできない段階で職員は住民説得のために多大のエネルギーを費消し、消耗するというパターンが繰り返されてきたのであります。

 いわゆる上下の関係である「措置」という制度が基本形になっているのであります。住民が住み、暮らし、憩うまちづくりの政策決定過程、意思決定段階での市民参画、提案型市民運動が不可欠であるにもかかわらず、形式的にはともかく、あるいは京都市のように可能な限り努力を傾注しているとしても、実質的には三割自治の実態が、中央集権システムの実態が明らかにされない中で、自治体行政に対する市民の不満、不信を生み職員のモラールの喪失につながっているということを議会人となって何よりも強く感じたからであります。

 しかし自治体の首長として、そのことを頭の中で理解していても冒頭に申し上げましたように「現実の分厚い壁」をクリアすることができない、あるいは国依存型の行財政システムの囲いの中で、安住する方向を選択する多くの首長、自治体行政マンの存在もまた現実の状況であります。

 各局ごとの通年の東京詣での迂回路に費やす膨大なエネルギーの総量を地方自治の政策づくりの直線回路に向け、転換、集中することにより、職員のやる気、仕事への仕甲斐、意欲が起こり、結果的に士気も向上、自由で新しい発想、創造力が生かされる市民の、市民による、市民のための本来の地方自治体行政、市役所になることができるのであります。 7年前、私は、地方分権をメインテーマに本会議で初めてこの基本的な問題を取り上げ、代表質問に立ちました。

 藩閥体制の古典的地方自治体体制から明治政府の脱亜入欧、富国強兵政策の必要性から廃藩置県による中央集権化、第二次世界大戦敗戦、そして地方自治法の制定も空文化させる新中央集権体制への新たなる構築により、税財源、許認可権等の権限の中央集中が、夏の「予算獲得大会」から翌2月段階の「箇所付け」の時期までの自治体、業界の陳情スタイルを生み出してきたのであります。まさに蝟集という言葉どおりであり、私も何回か東京に参りましたが、あの陳情光景はとても近代国家とはいえないし、その渦中から発生する汚職メカニズムは後を絶たず、その当時の事件だけでも、造船疑獄、武鉄疑獄、大阪タクシー汚職、日通事件、ロッキード事件、砂利船汚職事件、佐川事件などその質問の中でも挙げていますが、状況は今と少しも変わっていないのはご案内のとおりであります。

 私の代表質問の後、理事者の答弁から地元紙のコラム欄に「地方分権の質疑があったが、地方分権はまだ遠い。」と書かれていました。しかし次第に変化してきたのは、「これはおかしい」とする国民意識、市民意識であります。

 そしてその市会で「明治以来の中央集権的行政システムは、不公正、非効率、腐敗政治の根源となっている。国は国の根幹に関する行政のみを担当し、住民の生活や地域に関することについては、住民の個性や地域の主体性が生かされる分権的な行財政システムに転換することが不可欠」とする「地方分権推進に関する法律の制定を求める意見書」が、地方分権を前面に出した意見書を採択している議会は少ないとされる中で、京都市の本会議場で採択されたのであります。

 そして翌年、この地方自治の最も基本的な問題の少しづつの状況の変化、少しづつの進展の方向を自治体議会の立場から追いながら、私はこの議場から地方分権について再度発言を続けました。

 こうした地方分権行財政改革を求める国民世論を背景に、93年第三次行革審の最終答申が出され、地方分権推進のための法律の制定が提唱され、衆参両院で「地方分権の推進に関する決議」が採択、95年地方分権推進法が成立、その法律に基づいて地方分権推進委員会が発足、翌96年に第一次勧告、97年に第二次、第三次、第四次勧告、98年に第五次勧告、そして昨年99年7月、「地方分権の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」いわゆる「地方分権一括法」、「地方分権整備法」が成立し、本年4月施行となったのであります。

 地方分権が推進委員会で議論され、市民の関心が高まってきた頃、京都市主催の「地方分権・シンポジウム」がアバンティホールで開催され、評論家の樋口恵子さんがゲストスピーカーで参加し、議論が展開されました。このシンポで一番印象に残った発言は、先の市長選挙が最終に近づいた時、急逝された女性団体のリーダーのTさんが「これからは国からお金を取ってくるという国会議員には投票しないことです。」と言われた言葉でした。 しかし、「平成13年度国家予算に関する要望書」の「146万人の市民の暮らしが息づく都市として発展していくためには、国の御理解と御協力なくしては解決できない課題が数多くございます。

 つきましては、本市の実情を御賢察いただき、平成13年度の予算編成に当たりまして、なお一層の御配慮を賜りますようお願い申し上げます。
 また前文に、重点要望事項として、保健・福祉、教育、環境、人権、生活、道路・交通、基盤整備、住環境、産業・観光、文化など市政全般にわたる数十項目を国にお願いする内容であります。

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 同じく、12の指定都市共同の「国家予算に関する要望書」に、「地方分権一括法」が施行され、地方分権の推進が実行の段階を迎えた。」と言いながら、「是非とも、国のご理解とご協力を得なければ解決できない。」としているのであります。

 多言を要しません。全く例年どおりのこの要望書がいみじくも我が国における「地方分権」の在り姿をそのまま示しているのであります。

 10日前、民主党は高知県の橋本大二郎知事と宮城県の浅野史郎知事を招いて「分権社会を目指して、いま、何をすべきか」と題したパネル・ディスカッションを開催しましたが、7月18日の全国知事会の様子を報じた新聞の囲み記事に「補助金をくださいとお願いしてばかりでいいのか。」。64頁の来年度政府予算への要望書の中に補助金増額の「お願い」が数行をおかずにでてくる。このことに苛立ちを覚えている知事さんたちの発言を伝えていました。市税の減収、税の公平性の観点から地方税の徴収率アップの努力は必要でありますが、同じ観点から中央に対しても毅然とした姿勢が求められているのではないでしょうか。

 昨年9月1日付けの市民しんぶんには、見出しに「地方分権が大きく前進」、中味には「現段階では、政令指定都市への更なる事務や税財源の移管等、課題が残されていますが」と書いていますが、自治体財政の破滅の危機の原因がどこにあるのか、自治体サイドとしては、この中味部分こそ地方分権の核心であり強調すべきであるのに、「大きく前進」という見出しを書く認識度に疑問を持たざるを得ないのであります。

 去る7月31日、京都市は平成11年度の一般会計決算の概況と平成12年度予算の概要から分析した「京都市財政のあらまし」を発表しました。

 決算概況によりますと、総括で、平成11年度決算は、市税収入が2年続けて前年度を下回るなど、極めて厳しい経済情勢と財政状況の中で、基金の取崩しによる財源対策や経費の節減に努めたものの、実質収支で約4億円の赤字となり、昭和57年度以来17年ぶりの赤字決算となる見込みであると述べ、「今後の財政見通し」では、脆弱な財政基盤に立つ本市財政は、歳入の根幹を成す市税収入に伸びを期待できず、一方、歳出面で、少子・高齢社会への対応をはじめとした行政需要や累増する公債費負担などに多額の財政需要があることから、恒常的な財源不足状態にあることに加えて、財源不足対策として活用できる基金の残高が底を尽くなど、今後も一段と厳しさを増す状況にある。

 このため、「京都新世紀に向けた市政改革行動計画」の取組に続いて、新たな行財政改革に更に積極的に取り組むとともに、国に対する要望活動の強化、京都経済の活性化による財政基盤整備の強化に努めることが必要であるとしています。

 財政基盤の確立のために、行財政改革の一層の推進と国への要望強化、京都経済の活性化を挙げていますが、後の2点は京都市の主体的、自主的な意志だけで事態を処理することができない問題であり、残るのは行財政改革だけであります。行財政改革とは歳出の抑制だけでないことはいうまでもありません。

 そして、ここに記述されているのは、京都市財政の現況はこんなに厳しいのであります、今後5年間、毎年375億円から540億円の財源不足が生じます、という結果だけであります。

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 今年の流行語大賞に「結果として」という言葉が有力だと噂されています。

 結果として、このような状態になったのは事実でありますが、結果が生まれるのには必ず原因があるはずであります。その原因が明らかにされなければなりません。これが因果関係といわれるものであります。

 私が議員になったのが、先ほど申し上げましたが、12年前であります。在職期間がちょうどバブル経済の絶頂期、崩壊、そして現在まで続く不況、不景気の「失われた10年」の期間であったわけであります。

10年前の90年6月の本会議でバブル経済について取り上げました。その質問要旨の一部だけを当時の状況を振り返るために抜すいします。

 「最も大きな要因は、金融政策の総元締である日本銀行が異例の自己批判をし、既に世論から厳しく指摘されていますように、やはり金融機関や生保、ノンバンク系などの余剰資金力の動員による土地投機に対する融資、特に企業に対する巨額の融資であります。

 近年の地価上昇に合わせて、これらの貸付残高が増えている事実から、相関関係は明らかであり、その額は、銀行の不動産向け融資残高が45兆円に達していること、ノンバンクを含めると、まさに90兆円に上り、生保関係を含めると更に巨額になるのであります。

 我が国の企業は、今あらゆる手段を駆使して空前の利益を上げています。資本金10億円以上の大企業3,220社の内部留保額は、74兆1,516億円にも達しています。そして更に内需を拡大するためであった大幅な金融緩和政策を利用して、その融資で土地を買いあさり、更にその土地を担保に膨大な資金を調達して、別の国内の土地を求め、地価を高め、結果的には保有地の資産価値をアップさせる。あるいは海外の土地を買い占めるという図式を繰り返しているのであります。そして今や企業の地価高騰等によるその含み益は、70年に比べて12倍の434兆円に達しています。

 ちなみに国土利用計画法の土地利用勧告制度では、取得後2年以上放置している土地を低未利用地としていますが、国土庁の資料によると、企業の持つ事業用の未利用地の78パーセントは、具体的な利用計画がなく、土地を購入しても当初から利用する意思のなかった企業が、50パーセントもあったということであり、全く含み益狙いの土地購入であるわけです。」

 これが10年前の質問内容の一部であります。不況、不景気は自然現象ではありません。

 そのバブル発生の土壌を造ったのが、85年のプラザ合意、内需拡大政策、日銀の金融緩和策、そして銀行、証券会社の不動産担保への超過剰融資であり、無茶苦茶な土地価格の上昇、地上げ屋の跳りょうが、まち並みと地域共同体、人心、社会の荒廃状況を作り上げたのであります。まさに社会的狂気の時期であったのです。

 そして当然の結果として、バブルがはじけ、今、銀行と大企業の膨大な不良債権の残滓が発生源の動かぬ証拠となっているのであります。そのことがまた長すぎる「失われた10年」と言われる日本経済の今日の状況の原因となっているのであります。

 不況克服、景気回復があたかも至上命令となり、その原因と政策責任問題が先送りの中で究明されることもなく、60兆円余の金が日本発経済恐慌を防止するため、預金者保護の大義名分で次から次へと公的資金が投入されているのであります。

 我が国の金融機関に支配を強めている外資によって大企業が倒産に追い込まれていますし、ゼネコン、流通グループに対する借金棒引きも横行しているのであります。バブル劇主役の金融機関は、公的資金の投入を受け、不況の中で苦しむかつてのお得意先の中小企業を見捨て、融資の回収、貸し渋りで倒産、破産に追いやっています。

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 7月の京都の企業倒産件数、負債総額は過去最高となっています。倒産、失業率は一向に改善されず、倒産、リストラによる中高年者の自殺の急増、過労による死亡、ストレス病、ホームレスの増加、家庭崩壊が深刻化しています。

 その銀行は、片方で年金生活者など預金者への超低金利政策で30兆円の利ざやを稼ぎ、更に貸付金利の高い商工ローンには多額の融資をし、その利ざやを不良債権処理の原資に当てているのであります。また、金融機関による貸し渋り対策の信用保証協会の債務保証残高が急増。代位弁済額も過去最高を記録し、高い事故率が保険賠償超の自治体負担、補助金が自治体の財政を圧迫する要因となることが懸念されています。しかもその融資額の中から銀行は、自行の貸付金を優先的に回収するというベニスの商人顔負けの行為すら行っているのであります。

 その結果、国と地方の借金は645兆円といわれていましたが、「隠れ借金8兆円」を含め、平成12年3月末の国の借金は55兆円増と膨らみ続けています。地方財政も同様であります。市債残高は11年度末で9,141億円に、本年度末には1兆380億円に達する見込みであります。

 これはG7の国及び地方の財政収支を表したグラフであります。

 先ほど、「因果関係」と表現しましたが、「因果応報」が今日の状況であり、日本の公的債務は、90年の国内総生産比60パーセントから120パーセントまで上昇してしまっているのであります。GDPが500兆円、仮に成長率2パーセントを達成したとしても、GDPの年間増加額は、10兆円に過ぎないのであります。

 京都市財政の厳しい現況が、不況、不景気、減税による法人市民税の落ち込みによるとするだけの結果説明でいいのか、市の税収回復の最も重要なファクターである個人消費が伸びない理由は。市債残高が過去最高に膨れ上がった理由は何か。政府の景気浮揚策による公共事業の自治体負担増の内容は。いわゆる「財政錯覚」で事業を膨らましてこなかったか。交付税措置の見通しは。

 政府は、2000年度予算の公共事業等予備費5,000億円の早期執行のため、地方負担分を9月議会に補正予算に計上するよう求めています。この負担分をどうするのか。お答えをいただきたい。

 また、いま市会に提案審議されています上下水道事業の料金、使用料アップ問題につきましても同じであります。市民生活の健康、衛生上不可欠の上下水道をいかに維持、保持していくのか。現在の不況下の市民生活を守るために、料金、使用料をいかに抑えるかでありますが、結果的には現行制度の下では、一定の決められた条件の中でしか議論でき得ないのであります。赤字の先送りか、一般財源からの税投入か、受益者負担か、人件費圧縮を中心とした企業内努力か、その負担割合、調整の議論、三方一両損、正確には三方一両負担の議論になっていかざるを得ないのであります。これが地方自治体の現状、置かれている実態なのであります。

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●次に地方分権に関連する点を一点、
  財政に関連する点を一点質問します。

 昨年8月、国旗国歌法が成立し、戦後半世紀にわたる論争に法的な面での決着がつきましたが、「人、一人ひとりの内心の領域を侵さない」ことは当然であります。

 きょう、私が地方分権に関連するこのことを申し上げたいのは、学校には校歌があり、校旗がありますし、全国都道府県、市町村にもそれぞれ自治体の歌と旗があります。企業にも社歌や社旗があります。我が京都市にも市歌があり、市旗があります。

 もっとも私個人としてはある人が言っているように、ヒット曲のテネシーワルツを州の歌にしているテネシー州、国歌二大名曲といわれているアメリカの「星条旗」、映画「カサブランカ」で観客を感動させたフランス国歌の「ラ・マルセイエーズ」の酒場でのレジスタンスの合唱シーン、サッカーのワールドカップ優勝でシャンゼリゼ大通りで歓喜した数十万人の市民が歌う国歌、酒場で、ビヤホールで、街頭で国民が、市民が、腕を組んで合唱できるような歌ならと思うのでありますが、威儀を正して整列し、整然とした場所で深刻な顔つきでしか歌えないということに国民の、市民の歌になりきれない問題があるのではないかと思っていますし、若い世代もなじめないのではないかと思われるのです。

 話を元に戻しますが、歌や旗の他にもその地方、自治体ごとに特色を表し、住民に愛されている樹木や花、鳥、シンボルなどが決められています。 地方で国際会議や国家行事、セレモニーが開催される時、あるいは国の出先機関の行事の時は、国旗が掲出されていいのですが、自治体が主催する諸行事の場合は自治体の旗が中心になるべきだと考えます。

 議会も行政側も、欧米の各都市を毎年訪問していますが、どの都市の市庁舎、議事堂も市旗の掲出が普通なのであります。(パネル)

 これは、姉妹都市イタリアのフィレンツェ市議会の本会議場を訪ねた時の写真であります。

 これは、姉妹都市チェコのプラハ市のマンホールに施されていたプラハ市の紋章であります。自治体の旗が、自治体の、そして住民の本当のシンボルであり、誇りなのであります。これが、地方自治の本来あるべき姿勢なのであります。この際、地方自治体としての見解を求めておきたいと思います。

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次に京都市財政の現状との関連で一点質問しておきます。

 「京都市庁舎の建て替え問題」についてであります。この問題につきましても、9年前に本会議質問をしていますが、現庁舎は大正14年に起工、坪数3千坪、工費124万1千円、昭和2年竣工、当時の組織は、総務、教育、産業、保健、水道の5部制から、暫くして、2局5部25課制となり、職員数は870余名、現在の9局38室・部102課と比較すれば状況は歴然であります。

 平成2年度から「市庁舎整備基金」の積立を始めましたが、現在置かれている条件の中で、抜本的な対策を講じるのは極めて困難であり、むしろ他都市から見て建設が遅れ、アンカーになっていることを幸いにして21世紀の国際化、情報化、経済のソフト化、サービス化などの高次の都市機能に対処でき得る他都市庁舎より優れた庁舎を目指すべきだと提言し、それまでの間、現庁舎の改善策について数項目の提言をしました。国際文化観光都市として外国からの訪問者のための玄関の英語版庁舎案内板の設置、バリアフリーのための可能な限りの施設の改善点について、市役所前ひろばを駐車場から市民の自由ひろばに開放することなどであります。

 しかし、その後、モニター調査、検討委員会の設置、有識者による新庁舎整備懇談会の提言を受けて、庁内に新庁舎建設基本構想策定委員会、市会にも防災・市庁舎建設特別委員会を設けるなど10年の時間をかけて建設目指しての議論、検討を続けてきました。

 ところが、この7月に突然「先送り」、「凍結」を市会特別委員会に提案してきました。

 率直に言って私自身も、新しい時代における新市庁舎の建設問題は、建設場所等の問題だけでなく、来年1月の中央省庁の再編問題と地方自治体の組織編成の関連、縦割り組織の部課制からフラット・ネットワーク型の組織形態への変革の必要性、地方分権の本格的な確立時の自治体の組織編成、区役所機能の強化、拡充。サテライト方式の可能性、IT革命によって確実に変化が予見できる職員の職位、職階制と代議制度。デジタルガバメント時代の事務事業の見直し、デジタル経済の拡大の中での公共サービスの分担議論、PFI、アウトソーシング導入の是非等々について、9年前は他都市のアンカーとなったことを幸いにとしていましたが、今は「一周遅れのトップランナー」として、近未来の自治体事務の変化を予測し、全方位の議論に費やす時間として遅れたことを活かす方が良いと考えています。

 この点についてと7月3日の突然の先送りの発表についてであります。

 市財政の厳しい状況は、今年になって「予期せざることが発生」して厳しくなったわけでないことは、先ほど市の財政状況の質問の中で述べましたが、市庁舎建設の所管局は主要管理3部局のひとつである総務局であります。
 今日に至るまで市の財政状況を把握せずに、その関連性を考慮せずにまさに「砂上の楼閣」議論を進めてきたのは、部局間の情報伝達、調整機能、庁内体制、機械的画一的な人事異動制度の弊害部分などに問題があるのではないかと危惧するのでありますが、お答えいただきたい。

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次の質問に入ります。

 連日、マスコミに報道されない日がないくらい取り上げられ、今や「DV」というだけでほとんどの人が理解されるようになってきましたのが、この「ドメスティック・バイオレンス」問題であります。

 95年、私が初めて本会議質問で「DV」に関する質問をした当時から見れば市民の関心度はかなり高くなっていることを感じます。

 パートナーからの暴力に怯え、悲鳴を上げ、SOSを発している女性に対する各国の取組、欧米あるいは近くの韓国での積極的、具体的な対応策について例示し、自治体としても啓発活動はもちろんのこと、シェルター設置などの対策に取り組む必要があるのではないかと質問しました。しかし、当時はまだ行政側の認識も低く、売春防止法第34条「売春を行うおそれのある女子」の保護施設として設置された府の女性相談所などと連携を取り対処するという程度のものでした。

 そして、更に3年後の98年にも本会議でこの問題を取り上げました。

 「家庭内の問題」とされていたDV問題が、今日では「社会的問題」として早急な対応策を求める内外の世論の高まりの中で、男女共同参画2000年プラン、厚生白書の記述、東京都のDV調査、札幌市、神戸、伊丹市などの実態調査等進む各地での取組状況を紹介しながら、この問題への認識を深め、京都市の前向きな取組姿勢の必要性を強調しました。
 現在、世界の多くの国でDV禁止法が成立しています。我が国の20年遅れが指摘されています。京都市も本年3月に「女性への暴力に関する市民意識調査」を実施し、その結果を発表しました。市内に住む女性の3割、推定ですが十数万人の女性が被害を受け、身体的な暴力だけでなく、性的暴力、精神的暴力、経済的暴力など心身に及ぶ深刻な被害の実態が明らかにされました。これは6月の「国連特別総会女性2千年会議」に提出された「女性と少女に対する家庭内暴力」の状況をまとめた中間報告をはじめ、内外の調査による被害実態と同内容の調査結果であります。

 京都市における実態が明らかにされたのであります。求められている対策も明確に示されています。総理府の「男女共同参画審議会」の答申、法務省の「人権擁護推進審議会」の中間答申も法の制定を求める内容であり、国会でも議員立法目指して超党派の作業部会で法案づくりの作業が進められています。類似の「児童虐待防止法」と「ストーカー規制法」も11月に施行されます。

 こうした状況の進展と背景に京都市も「男女共同参画社会の実現に向けて『第二次京都市女性行動計画』を策定し、女性に対するあらゆる形態の暴力への対策強化を重点推進事業の一つとして位置付け、取組を進めている。」、「この調査結果を踏まえて、被害者支援策の検討や広報啓発の充実など女性に対する暴力を許さない社会づくりに取り組む。」としていますが、私の過去二回の質問、今年の5月市会の公明党議員の質問に対する答弁でも感じ取れるのは、実際には広報啓発の部分だけであって、暴力への対策強化、被害者支援策の具体的な取組内容については検討が進められているようには思われないのであります。

 幾つかの自治体では条例化などを含めて具体的な対応策に踏み込んでいるところがあります。
 広域措置、生活支援措置、中間施設ステップハウスの開設、民間シェルターへの援助策、シェルターボランティアの育成など当面の取組について法律が制定されなければ、あるいは国の動向が明らかにならなければ自治体として対策が取れないのか。あるいは既に京都市は先述の内容のとおり「前向きに検討を進めている」ということであればその検討内容をご説明いただきたい。

 これからは「ハコモノ」を誇示するような「市場経済第一主義」、「物質主義」、「商業主義」から脱した「心と命の輝きを大切にする」、「人間生活の内面的な質を高める」社会政策的な施策の競争が、その都市の新しい価値、魅力として評価され、格付けの基準になっていくことを考えていかなければならない時代なのであります。

 国連の「人間の安全保障」の概念、人間の生存、生活、尊厳に対する脅威への取組強化の方向や京都市が昨年4月に施行した「市民生活安全条例」に基づく「生活安全基本計画」策定の精神にも通ずるものであります。

 DV問題に熱心に取り組む自治体の考えもそこにあることを付け加えておきたいと思います。

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次に、かって京都の中心的な産業であった和装産業について
  感ずるところを述べてみたいと思います。

 応仁の乱で焦土と化した京の都を再興する原動力となった「町衆」の中に織物の技術集団が生まれ、西軍の陣のあった西陣にきものの一大産地を造りあげました。

 そして、江戸時代の中期、京都を中心とする呉服商はその商い、隆昌を極めていました。それは後に、近代日本の象徴的な存在になった流通産業の花形、百貨店の前身の姿であったのです。

 ところが、その近代化の過程は生活の洋式化であり、それに合わせた衣服の洋装化でありました。関東大震災がその流れを加速させたという説もありますが、それ以前にも既に16世紀中頃の宣教師の渡来やペリーの来航などで洋服が欧米から輸入され、ちょんまげ姿の南蛮服が時の特権階級のシンボルになっていました。ちょうど、南蛮服の江戸時代の風俗を現代風にアレンジしたイベントが、この12月3日、京都国際会館でKYOTO青年元気まつり企画運営委員会による「21世紀大風流―百花繚乱―」として開催されますが、その後の明治維新、政府は洋服の採用をめぐって各大臣を集め大評定、洋服党の「泰西の服は起居進退がいかにも便利である。」、和服党の「単に便利という軽薄な理由で伝来の服装を一朝にして西洋風に改めるのは何事か。」という激しい議論の末、西郷参謀の一言で洋服採用が決定され、それ以降政府主導の洋装化が本格化し、軍服、官服の洋装化、そして次第に一般庶民も洋服を着用するようになっていきました。日本人の着用する衣服の本格的な転換期が近代化と共に訪れてきたのであります。 しかし、それ以降もまだ和装は健在で、長い間、きものを愛用する人たちによって和装産業は支えられ、また周辺の高級料理旅館も花街も羽振りのいい旦那衆と職人で殷賑を極めていました。ただ、時勢の変化は次第に世代のきもの離れを加速させていました。もともと日本国内の需要に限られるという市場の地域限定性もありましたが、これまでから指摘されていた「高価」、「着付が難しい」、「活動的でない」などのきもの離れの三大原因は、今年3月に実施された京都織物卸商業組合のアンケート調査でも改めて実証されていますが、退蔵する和服は30兆円に上るともいわれています。その非日常性が需要の減少傾向を速め、「高価」の原因であります和装業界の古い商慣習、取引慣行、複雑な流通過程にバブル崩壊後の資産価値の下落による借入金の過重負担が加わり、更にその後の長引く不況、不景気による消費の低迷が追い討ちをかけるなど新旧、内外からの複合要因によって不振に拍車がかかり、販売高はピーク時の三分の一近くに落ち込み、この10年間で120社を超える和装企業が消失し、中でも業界を代表する丸十小泉、丸勝の破産は業界だけでなく、京都の経済界に大きな衝撃を与えたのであります。

 業界の構造改革については、ここに至って業界内部でも真剣に取り組みはじめていますが、古い商法体質から近代的経営体制への転換が図れるか注目されるところであります。ただ、この状況の中でも、京都の呉服卸商として店頭公開をした企業や高い利益成長を続けている企業もありますし、新しい感性の起業家が新たに西陣の地に集まりつつあり、西陣地域の新しい創造発展につながることを願っています。また、従来の伝統的な定番きものから染、織、柄、素材、着やすさなど消費者志向の変化を捉えたきものの制作、洋服感覚、斬新なニューきもの、アロハ柄、パステル調、洋服の有名ブランドのきもの、あるいはレトロの復活人気、異業種との連携企画、既成概念にとらわれない「きもの解放区」の試みなど様々な工夫、努力が続けられており、これらの新しい発想、企画が和装再生への起爆剤となる可能性に期待されるところであります。

 これらのことに関連することとして申し上げますが、今この議場には議員、理事者合わせて百人余りの人がいるわけでありますが、ほとんどの人は洋服で、ごく一部の方が和装姿であります。

 今枝副議長のようにきものを簡単に着こなし、日常から着物が好きな方もいますが、和装産業振興の一助にと和装PRのために着用されている方もいます。

 和装組は羽織、袴着用の正装であり、洋服組は別にダークスーツでもない普通の背広スーツ姿であります。これは、ある意味で違和感のある風景であるといえます。和・洋のオートクチュールとプレタポルテの混在であります。背広スーツはその誕生の経緯から略々式服装であります。和装の正装に対してはこの議場に飾られている昔の議長さんの写真で分かるようにブラック・フォーマルの服を着用しなければ本来釣り合いがとれないといえるのであります。ホワイト・タイはともかく、ブラック・タイのタキシードも本来はティル・コートと呼ばれる燕尾服の燕尾の部分を活動的に切断した準礼装であり、そのまたタキシードの略装が原形となったスーツが、この百50年間にわたって、多くの国の紳士服として普及してきたのであります。

 ここで申し上げたいのは、和装着用といえば、高価な絹の羽織、袴の正装でなければならないという固定観念がきものの着用に距離をおくことになってはいないかということであります。
 もちろん高価な洋服を着用されている方もいますが、汎用タイプのスーツの水準に見合った素材でデニムであってもコットン、シルク、ウール、化繊であってもいいし、形も伝統のフォルムにこだわることなく、「着付け」のいらない作務衣の礼式用や野袴スタイルであってもいいのではないかと考えます。私たちのような普通の生活者では、数十万円のきものを無理して求めることはできないのであって、スーツ並みの価格でスーツ並みの着脱しやすい、現在社会に合ったスーツ水準の和服はないものかと探索し、今日、私はその和風の衣装を着てきたのであります。

 和装の底辺を開拓、拡大し、日常化を図る中から、伝統的なきものに関心を持ち、やがて保有したいという気持ちが起こり、長い伝統に培われてきた技の結晶である本物を持った満足感と喜びを実感する。逆に、特定場所用の、儀礼用の高級和服は特定の人の、特定の時間の着用に終わり、免罪符的着用になっているのではないか。

 実は西洋の衣服にも和服と同じような変遷がありました。特に男性服の場合、中世の絵画や映画でご覧のような華美で複雑系の服がハイ・ソサイエティのシンボルであったのです。着難く、召使いがいなければ着られない。しかも金らんどんすの高価な衣服であったのです。着難く、高いのが逆に上流社会に属していることの証しであったのでありますが、1663年、イギリス国王チャールズ2世の「衣服革命」宣言によって、「貴族に倹約を教える服」が登場し、それが原形となり、現代の背広スーツとなり、世界の多くの国の男性服として普及、定着してきたのであります。

 構造改革のためのカンフル剤的な「特別融資」も必要でありますが、和装産業は振興、復興、再興というかつての姿への復帰、再現を追い求めるのでなく、現代人のライフスタイル、意識変化、多様化という現実の上に立って、いかに存続を図っていくのかという視点からの方策が必要ではないかと考えるのです。

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 この間、民主党は演出家の宮本亜門さん、世界的ソムリエの田崎真也さんのお話を聞く機会を持ちました。その中の田崎真也さんの「伝統のために料理を作るのではなく、誰のための料理なのか」という話は示唆に富んでいました。ご意見があればお聞かせいただきたい。

●今年の夏のはじめ、大阪天王寺の一角に飾られた少女の絵にブレイクした59万人の熱い視線が注がれました。日本・オランダ交流四百周年記念特別展覧会「フェルメールとその時代展」の中の「青いターバンの少女」という50センチ足らずの小さな作品にでした。

 生涯30数点という寡作の画家フェルメールは、オランダの地方都市デルフトで生まれ、ここで作品を描き、一生をその地で終わるのですが、このデルフトのまちは当時ヨーロッパの王侯貴族、富豪が珍重し、競って手に入れようとした日本の有田焼、伊万里焼のその技法を採り入れたデルフト焼で後に有名になったまちであります。

 日蘭交流4百年の歴史は日本・オランダそれぞれに文化交流の影響を与え合っていたのであります。その展覧会の少し前、京都文化博物館で「江戸時代・京都が見たヨーロッパ」を副題とした「異国の風」展が開催されていました。

 我が国は、大陸文化からの影響の後、南蛮といわれた西洋の国々との交流、交易を始め、京都の文化は更に飛躍的に変化、発展を遂げたのであります。技術や人の交流から新しい文化が生まれるのであります。

 京都は1200年余の歴史を有する古都といわれていますが、停止したまま生きていたのではありません。当時を偲ぶ建造物などは今は何一つ残ってはいませんが、連綿として続いてきた伝統というのは、古いものをそのまま保ってきたということではなく、大陸、西洋からの渡来文化を先進的に大胆に取り込み、絶えずその時代、その時代の最先端の新しいものを創り続けて進展させてきたその進取の気風と技が止どまることなく生き続け、それが京都の文化の成長エネルギーとなってきたのであります。近世では、琵琶湖疏水の開削、発電所の建設、そして都大路に路面電車を開通させるなど西洋の最新技術を導入して京都を活性化したのであります。その発展性がなければ京都は早くに滅亡していたでしょうし、それこそ遺跡の運命を辿っていたのであります。

 祇園祭・山鉾のタペストリをはじめとする多くの渡来の装飾品、装身具類、衣服、陶磁器、絵画、更に茶道の関係に至るまであらゆる京都の伝統工芸の中に西洋が溶け込み、息づいてきたのであります。また日本の書画や伝統工芸品、絹織物など文物もヨーロッパに移入され影響を与えていました。

 エミール・ガレもその作品の中に九谷の絵皿をモチーフにしていますし、今我が国の主婦の間で一番人気の印象派の代表的画家、クロード・モネの「睡蓮」の日本庭園の池に架かる木の橋は日本の浮世絵の橋を取り込んだものです。

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 洋画に描かれた浮世絵の橋とは逆のケースの橋といえば、この時期、鴨川歩道橋問題が再燃してきました。

 京都市は改めて鴨川に架かる橋全体の在り方を検討する「明日の鴨川の橋を考える会」を設置し、来年3月に提言を受けることを発表しました。これに対し「鴨川の景観を守る連絡会」は、計画の中止を京都市に申し入れました。

 2年前の98年、この橋の建設を巡っての景観論争が起こり、京都市側が計画を撤回した経過があります。その時、私は本日の質問の冒頭でも取り上げました地方分権の件りで事業の計画段階における市民参画の必要性の考え方から、市の計画撤回もやむを得ないと考え、理解しました。

 しかし、同時に反対派の人々が「京都にヨーロッパの橋はいらない」、「鴨川にフランスの橋はいらない」という大量の、しかも原色のポスターを街角に張り巡らすネガティヴキャンペーンを見て、果たしてこれで景観問題が論じられるのかと大いに疑念を抱かざるを得なかったのであります。 そして、当時問題とされたこの橋問題のオリジナルとなったセーヌ川に架かるポン・デ・ザール、芸術橋について正確に理解するため、この橋について少し触れてみる必要があると思いました。

 鴨川には38橋、パリ市内のセーヌ川には32の橋が架かっています。フランスだけでなく、ヨーロッパの都市河川に架かる橋は、この昔の写真のように頑丈な石造りで彫刻が施され、中には金色の彩色をしている橋も多くあります。明治44年に完成したお江戸日本橋もこの様式であります。この写真の当時は、西洋の橋の上はご覧のように馬車でごった返し、衝突、馬の暴走、歩道がないための人身事故の続発、加えて大量の馬ふん、放尿で非衛生極まりないという喧騒の状況でした。現在の自動車の混雑と排気ガスが充満の状況と同じであったのです。

 1804年、当時新しい建築資材として登場しはじめた鉄の橋脚に床面を木材にしたこのポン・デ・ザールがルーブル美術館とフランス学士院の間をつなぐ利便橋として、馬車は通行禁止、歩行者専用の橋として建設されたのであります。ちなみに同じく鉄素材で造られた1889年のパリ万博のモニュメント、あのエッフェル塔もパリに似合わないということで当時は反対されたのでありますが、実はこのポン・デ・ザールもセーヌ川には似合わないとパリっ子の反対に遭っていたのであります。鉄と木の、しかも余りにもシンプルなデザインがヨーロッパ風の橋でなかったからであります。最後にはナポレオン・ボナパルトの現場視察の際の一声で存続が決まったという話であります。

 この絵は、1867年に制作されたルノワールのポン・デ・ザールであります。背景のリシューリュ宮殿とフランス学士院の建物がなければセーヌ川に架かる橋とは誰にも分からないような素朴な橋なのであります。しかしこの橋は多くの画家たちに愛され、ルノワール、そしてこれは有名なアンリ・ジェルヴェクスーアルフレッド・ステバンスの「十九世紀の画家の肖像〈今世紀の歴史〉に描かれているポン・デ・ザール、これはポール・シニヤック、描くポン・デ・ザール、これは写真家による現在のポン・デ・ザールであります。

 馬車が通らない安心して歩ける橋として、昔は学士院会員もここで立ち話をしたり、画家や音楽家なども議論の花を咲かせ、ベンチに腰かけた恋人たちが、大道芸を楽しむなどポン・デ・ザールは今では憩いの橋としてパリ市民に愛され、親しまれているのであります。

 約200年前、パリでヨーロッパ的橋でないと「ノン」と言われ、今は「ウイ」。200年後の今、東洋の姉妹都市京都でヨーロッパの橋はいらないと言われているポン・デ・ザールが、もし話せるとしたら何と言うのだろうかと思うのでありますが、橋は左岸と右岸を結び、両岸の人が自由に往来するための施設であります。実りある議論こそ市民は期待していることを申し上げ、私の質問の締めくくりと致します。

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◎市長(桝本頼兼君)

梅林等議員の御質問にお答え致します。
 大変格調の高い物事の本質に迫る深い洞察力を持った御見解を拝聴させていただきました。初めに20世紀の総括と21世紀のあるべき都市像について、できるだけ簡潔に私自身の考えを申し述べます。まず20世紀は端的に申しまして科学技術、物質文明の時代でございました。20世紀の間に市民の暮らしは大きく変わり水道や電気も普及していない時代から、今日では自動車や電化製品、通信機器など実に便利で快適な生活を送ることができる時代となりました。こうした物質的な豊かな暮らしをもたらしてくれたのは科学技術の進展でございます。しかしながら、20世紀は一方で様々な課題が生じた時代でもございます。2度にわたる世界規模の戦争により多くの貴い人命が失われたことは20世紀最大の痛ましい出来事でございます。また大量生産、大量消費、大量廃棄型の都市文明は、地球規模での深刻な環境問題を引き起こし、私たち自身の生存をも脅かすような事態に立ち至っております。本来、人間を豊かにするはずの科学技術が逆に人間を疎外してしまう、20世紀は皮肉にもそうした面も持ち合わせた世紀であったとも言えると思います。
 さて、その中で21世紀を展望したとき、私も平和、環境、人権が21世紀のキーワードになると考えております。まず平和につきましては、京都市の都市理念であります世界文化自由都市宣言にありますように全世界の人々が人種、宗教、社会体制の相違を超えて平和のうちに集い、自由な文化交流を行うことが大切であり、平和は正に人類繁栄の基礎となるものでございます。また環境につきましては、COP3の開催都市として環境との調和を目指す持続可能な社会をつくり、貴い命をはぐくんできた地球をしっかりと未来に引き継いでいくことが必要であると考えております。更に人権につきましては、子供も高齢者も、女性も男性も、障害のある人もない人も、また国籍や民族、生まれや生立ちに関係なくすべての人が自分の居場所を確認し、自己の資質を十分に発揮しつつ生き生きと活動できる場所と機会に恵まれたまちを目指していくことが必要であると考えております。このように21世紀は平和、環境、人権をキーワードに心の豊かさが求められる時代であります。私は、世紀の大転換期に京都市政を預かる市長として、こうした認識に立ち21世紀京都のグランドビジョンである京都市基本構想に基づき、誰もが生き生きと暮らせる、そして一人一人が支え支えられる安らぎのある市民の暮らしと活力と、魅力あふれ華やぎのある京都のまちの実現に向けて全力を挙げて取り組み、京都の新しい歴史の創造に邁進して参ります。
 次に、地方分権改革についてでございます。地方分権は、地方自治体が市民と共に個性豊かな地域社会づくりを可能にする制度改革であり、この改革により本市はますます活力に満ちたかつ品位のある都市づくりに邁進することができるものと認識致しております。今回の分権改革につきましては、機関委任事務制度が廃止され地方自治体の自己決定権が拡大したことなど、これまでの中央・集権から自治・分権型へとレールのポイントが切り替えられたことの意義は誠に大きく評価できるものでございます。しかしながら、一方では大都市機能を有する京都市をはじめ政令指定都市の行財政運営能力に見合う事務権限が、今回の移譲ではその大半が都道府県止まりで政令指定都市には極めて少なく、この点については大きな不満を感じております。とりわけ税財源の移譲に至っては、具体的な成果は全くと言っていいほど得られなかったのでございます。率直に申し上げて、この税財源の問題は地方分権の本質にかかわるものでございます。すなわち仕事は自治体の方がたくさんしているのに財源の方は逆に国の方がたくさん握っており、多額の財源が補助金や交付税の形で国から地方に配分されるという中央集権システムが自治体の自主性、自立性を阻害している要因の一つであると考えるからでございます。
 また地方分権と市議会の関係についても、今回の国における地方分権論議の中では議論の機会が少なかったことを誠に残念に思っております。しかし、地方分権が進み深まるとともに議会の権能と役割はいよいよ大きく重要となるのは間違いのないところでございます。議会と行政は車の両輪として、これまで以上に必要にして十分な深い論議を交わし連携を強めることが肝要であろうかと考えております。更に御指摘のとおり分権改革がスタートしているにもかかわらず、国と地方の税財源システムが改革されていない現状におきましては、自治体の国へ依存する姿勢は容易には変えにくい側面も確かにございます。梅林等議員の御指摘にもある国家予算要望活動につきましても、現実問題としてはまだ当分の間は必要であろうかと考えております。しかし、その活動規模なりスタイルは年々縮小、簡素化の傾向があり、やはり分権化の影響はここにも如実に反映していることを実感致している次第でございます。
 以上申し述べましたように、私は今回の改革は、あくまでもその出発点と受け止め、重要なのは、残された課題について国に強く要求していくと同時に、それだけでなくて、京都市におきましても今回の改革により拡大された自己決定権を最大限に生かし切り、住民福祉の向上をはじめ京都市の発展に向けて必死の覚悟で取り組んでいかなければならないと考えております。私は、地方分権は小さな流れからスタートし、山河を経てやがて大河となり大海に至るがごとく、誰にも止めることができない歴史的必然であると考えております。御指摘の点を十分に踏まえ、自己決定、自己責任、すなわち自分たちの判断で決定し、その結果に責任を持つ地方分権型行政システムの転換に向けまして、今後とも精一杯、力一杯粘り強く取り組んで参る所存でございます。
 以下、副市長が御答弁申し上げます。

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◎副市長(中谷佑一君)

 まず京都市旗の掲出についてでございます。本市におきましては、京の文字を図案化したものに御所車を配した正に京都の歴史と文化の特色を象徴する京都市紋章を昭和35年に制定し、その紋章を京都市旗として使用しているところでございます。これまで本市のシンボルとしてのこの市旗をより多くの市民の皆様に親しんでいただき、また京都市民としての連帯感を持っていただくため、市民が数多く参加される自治記念式典をはじめとする本市が行う各種式典、行事などにおいて基本的に市旗の掲出を行っているところでございます。また昭和60年1月からは本市のシンボルとして市庁舎の屋上に常時掲揚を行っております。梅林先生の御指摘にありますように、本格的な地方分権時代を迎え自治体の独自性が問われる今日、市旗の掲出は郷土愛や自治意識の高揚を図るうえで大変意義があるものと考えております。したがいまして、今後施設の整備も含め市旗を積極的に掲出し、京都市のシンボルとしてより一層市民の皆様に愛され、親しまれ、定着していくよう努めて参ります。
 次に、市庁舎の整備についてでございます。現在の市庁舎につきましては、老朽、狭隘が著しいうえ、高度情報化や防災機能の向上など今日求められている課題にも十分に対応できていない状況であり抜本的な整備が必要であります。このため平成9年度に京都市新庁舎整備懇談会を設置し、市会議員の皆様方をはじめ各界の有識者の方々からあるべき市庁舎像についての貴重な提言をいただくとともに、平成10年度からは庁内に新庁舎建設基本構想策定委員会を発足させて、懇談会の提言を参考にしながらその建設場所、機能、規模、本庁舎の取扱いなど建設に係る基本的事項について検討を重ねて参りました。同時に、これら基本的事項の取りまとめとともに新庁舎の建設を実現へと導くには、現実問題としてしっかりした財源確保の見通しを立てることも不可欠であります。この財源の確保につきましては、ここ2年間市庁舎整備基金の積立ても見送らざるを得ない状況であり、本市の置かれている財政の厳しさは認識していたところでございます。しかしながら、本年6月下旬に本市の中期財政見通しがまとまり、将来5年間にわたり予想を超える大きな財源不足が見込まれることが明らかとなったことから、新庁舎建設の基本構想案につきましては、今後の財政状況も十分踏まえ、建設の実現可能性の見通しが立った段階で市庁舎整備の最終的な結論を出し提案を行っていくべきとの判断に至ったものでございます。なお先生御指摘のように現在本市では情報通信技術革命等の進展による大きな変革の時代を迎え、市民の皆様に効率的で質の高い行政サービスを提供するための様々な研究や取組を進めております。具体的には公共部門への民間活力の導入を図るためのシステムの研究、コスト削減や資源の有効活用等を図ることを目的としたアウトソーシングの導入、市役所インターネットを活用した行政業務情報化の推進、事務事業評価システムの導入等でございます。これらの取組につきましては今後も研究を重ねて参りますが、取組の成果の中から新庁舎建設の基本構想に採り入れられるものは採り入れ、先生の言われる1周遅れのトップランナーとなるべく努めて参りたいと考えております。また御指摘のありました部局間の連携につきましては、関係する所管局が情報を共有し、共通の認識を持ってその機能等を十分発揮するよう今後指導して参ります。以上でございます。

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◎副市長(高木寿一君)

 まず財政についてのお尋ねでございます。
 御指摘のように我が国経済は、いわゆるバブル経済崩壊後、不良債権の増大などに伴う金融不安も加わりまして不況が長期深刻化し、更に設備投資や個人消費の低迷、そして企業倒産や雇用情勢の悪化など極めて厳しい危機的とも言えるような経済情勢が続いて参りました。このため京都市におきましても、企業収益の悪化に伴いまして法人市民税の収入が大きく落ち込み、景気対策の一環として減税の実施も重なりまして平成11年度決算ではピークでありました平成元年度の500億円と比べますと2分の1近くまで減少しておりまして、これが財源不足の大きな一因になっているものでございます。現在のところ数次にわたる経済対策の取組の結果、公共投資の下支えによりまして我が国の経済は緩やかな回復基調にはございますが、御指摘のように個人消費が伸びず自律回復には至っていない現状にございます。これはなお残る先行き不透明感や雇用情勢が依然として厳しい状態を脱していないことなどによるものと思われます。こうした中で、一方ではIT関連産業を中心に企業収益の回復や設備投資の増加と共に雇用情勢もいささか改善の兆しが見られるようになっておりますので、今後この回復基調を確実にすることが国や地方自治体の当面の急務になっているところでございます。
 起債残高の増嵩についてでございます。京都市におきましては、平成6年度の平安建都1200年に向けて地下鉄東西線をはじめとする記念事業を積極的に推進して参りました。このような後世に残る大規模事業につきましては、世代間の負担の公平化を図る観点から市債を活用してきたところでございます。更にバブル崩壊後の景気対策として、国の経済対策に積極的に呼応し公共事業などの推進に努め、加えて減税による市税の減収分について減税補てん債を充当して参りましたことも市債残高が増嵩した原因となっております。このような経済対策に伴う公共事業等の財源と致しまして活用しました市債は、減税補てん債につきましては後年度の元利償還に対して地方交付税措置が講ぜられることになっております。京都市では、公共事業などの実施に当たりましては、市民の生活の向上に寄与する身近な施設整備から21世紀の京都の発展に不可欠な都市基盤整備に至るまで真に必要な事業をバランス良く選定し、国の経済対策に伴う有利な財源を活用することに努めてきたところでございます。今後見通しの厳しい財政事情の中で御指摘のような財政錯覚に陥ることのないように十分留意しつつ、なお一層堅実な財政運営に努めて参る所存でございます。
 なお本年度の国の公共事業予備費に係る地方負担につきましても、これまでの経済対策と同様に地方債の元利償還に対する地方交付税措置が講じられることになっております。今後この事業内容の把握に努めまして、京都市が実施致します事業についてできるだけ早い時期に市会にお諮り致したいと考えております。
 次に、女性に対する暴力への対策についてお答え致します。御指摘のとおり身近な男性から女性に加えられる暴力いわゆるドメスティック・バイオレンスにつきましては、その形態のいかんにかかわらず女性の人権と個人としての尊厳を侵害する極めて重大な社会問題であると認識致しております。その対策につきましては、暴力の取締りはもとより被害者の状況に応じて相談から一時保護、そして身体的ケアや精神的ケア、更には自立支援と再発防止などきめ細かな対応が必要でございます。そのために行政、警察、医療機関、相談機関、そして民間援助団体など役割や権限の異なる機関が相互に連携して女性のための相談ネットワーク会議を組織致しまして一体となって取り組んでいるところでございます。京都市と致しましては、平成9年3月に第2次京都市女性行動計画を改定し、新たに女性に対するあらゆる形態の暴力への対策強化を重点推進事業に掲げ取組を進めております。その内容を申し上げますと、まず第1に相談事業につきましては、これまで女性総合センターの一般相談で被害者からの相談を受けて参りましたが、ドメスティック・バイオレンスに関する専門相談が必要と考えておりまして、カウンセラーによる専門相談の確立に向けて鋭意取組を進めております。
 第2にドメスティック・バイオレンスに関する市民の認識を高め、その発生を未然に防止するために、これまで啓発情報紙での特集やシンポジウムの開催、更に本年4月からは女性大学における特別講座の開設など様々な機会を通じて市民の啓発に取り組んで参りました。国の調査によりましても、今日依然としてドメスティック・バイオレンスが人権侵害であるという認識が十分に浸透しておらず、引き続き啓発事業の推進に力を注ぐ必要があるものと考えております。
 第3に被害者の一時保護につきましては、福祉事務所との連携の下に母子生活支援施設及び京都府婦人相談所で実施致しておりますが、とりわけ母子生活支援施設につきましては、昨年4月の厚生省の通知を踏まえまして母子の身体の安全を確保するために他都市の施設に入所できる広域措置や子供のいない女性の一時保護につきましても対応しているところでございます。また、いわゆるシェルターやステップハウスの開設につきましても関係者と協議して参りたいと考えております。
 第4に地域におけるドメスティック・バイオレンスの対策の一つと致しまして、本年8月に策定致しました生活安全基本計画の着実な推進により地域住民と関係機関の連携が深められるよう取り組んで参ります。なお国におきましては、本年7月に男女共同参画審議会から女性に対する暴力防止のための法整備の必要性や警察を含む公的機関による取組の推進に関する答申が出されておりますが、京都市と致しましても、現在策定中の第3次女性行動計画におきまして更に効果的な対策を検討して参りたいと考えているところでございます。以上でございます。

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◎市長(桝本頼兼君)

 引き続き、梅林等議員の御質問にお答え致します。
 和装産業存続に関する方策についての御質問でございます。現在、和装産業を取り巻く環境は、大型倒産の続発、着物の購買層の高年齢化、古い取引慣行の存在などに見られるように内外において非常に厳しい状況にございます。御指摘のとおりでございます。私は、京都の基幹産業である和装産業振興のために市長としてしっかりと役割を果たしていきたいという思いから、市長就任以来様々な行事におきまして着物を着用して参りました。その機会が重なるにつれまして和の文化の粋とも言える着物の良さと楽しさを実感するようになって参りました。私が着物を着るのは仕事柄セレモニーが多いわけでありますが、着物の持つその場の雰囲気に合った凛とした感覚が大好きですし、またくつろいだときに感じるゆとりと優しさも非常に好んでおります。
 本市では、これまで西陣夢まつりをはじめとする関係業界、団体に対する事業支援やすてきに・きもので・クラシックなどのきもの着用機会づくり事業等を通じて着物ファンを一人でも多く増やす取組を続けて参りました。そして私は入洛観光客5,000万人構想を達成するためにも着物が似合うまち京都の実現に向けて一層努力して参りたいと考えております。
 一方、議員御指摘のように着られない、高い、機能的でない、約束事が多すぎるといった着物の持つ側面が着物離れを招く要因となっていることも事実であると思います。今年の祇園祭におきましては、例年以上に浴衣姿の人々が目に付きました。昔ながらの着こなしの方もいらっしゃいましたが、若い人の中にはミニや斬新なデザインの浴衣などファッションとして浴衣を楽しむ姿が見受けられました。また着物のリサイクル市場の活性化にも見られますように、若者にとっての和装への魅力は根強いものがあるのは間違いございません。このような例から見ても、和装文化を広げていくためには、これまでの習慣にとらわれることなく現在の生活や感性に合った取組もまた必要であると考えております。本市におきましても、着物開発事業による現在のライフスタイルに合った着物づくりや染織デジタルアーカイブ事業における優れた染織意匠のデジタル化による異分野、他産業への利用を積極的に推進して参ったところでございます。また業界におかれましても、消費者の視点に立った流通機構の改善等に鋭意取り組んでおられるところでございます。今後とも消費者のニーズを積極的に採り入れた取組を力一杯支援致しますとともに、京都経済の活性化になくてはならない和装産業の振興発展に全力を挙げて参ります。

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●9月定例市会委員報告要旨●

  民主・都みらい市会議員団   小林あきろう議員

●議長(二之湯智君)●日程に入ります。

 日程第1、●議第166号阪神高速道路公団法第30条第1項の規定による基本計画の変更に関する協議について議題と致します。
 建設消防委員長の報告を求めます。建設消防委員長小林あきろう君。
 〔小林建設消防委員長登壇(拍手)〕
●建設消防委員長(小林あきろう君)●本委員会に付託されました議第166号阪神高速道路公団法第30条第1項の規定による基本計画の変更に関する協議について、審査の過程において論議されました主な事項とその結果を御報告申し上げます。
 当委員会と致しましては、9月8日の本会議において付託を受け、9月13日に建設局に対する質疑を行った次第であります。
 今回提案の議案について理事者から、京都市道高速道路1号線いわゆる新十条通は、阪神高速道路公団法第30条第1項の規定による建設大臣からの基本計画の指示を受け阪神高速道路公団が平成6年度から着工しているものである。この基本計画に関し、平成12年8月10日付けで建設大臣から道路管理者である本市に対し京都府下の路線の新設工事に要する費用の概算額を約1,787億円から約2,003億円に変更することを内容とする協議があった。阪神高速道路公団からの報告によると、その理由として新十条通の工事の施工区間のうちトンネルを築造する区間では、工事を進めながら土質等を確認するためのボーリング調査を行ったところ、稲荷山の西側で破砕帯が発見されたり、これまで岩と推定していたものが粘土や砂の層であることが判明した。また十条ランプより東側の開削工法の予定区間でも土質の透水性が当初の予測以上に高く、地表から掘り下げた部分に地下水が流れ出て周辺地域で地盤沈下を生じるおそれがあることや開削工法のままでは薬液を注入するなどの相当の補助工法が必要となることなどから、本件工事の施工区間の一部についてシールド工法に変更する必要が生じたためとのことであった。
 本市としては、今回の工法の変更は、事業費の増額などが伴うことから阪神高速道路公団に対して本市の厳しい財政状況を勘案し当初の基本計画の範囲内での対応を強く要請してきたが、阪神高速道路公団からの報告に基づく工法の変更について十分に検討した結果、京都高速道路の整備を円滑に進めていくためには工法の変更もやむを得ないものと判断した。これに伴い事業費等が増額となることは誠に遺憾であるが、京都高速道路は21世紀の京都の発展のため不可欠な都市基盤施設であり、この度の建設大臣との協議に応じようとするものであるとの説明がありました。

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 これに対し、当初計画策定時の十分な事前調査の必要性、工事困難箇所における開削工法の妥当性に関する認識、工法変更に係る阪神高速道路公団との協議状況と同公団の責任、工法変更による事業費増額の内訳、今後の事業達成の見通しと早期完成の必要性、本市独自の工程管理の強化、用地買収の促進、利用しやすい料金設定の必要性などについて論議が交わされ御意見がありました。
 概略以上のような審査の後、更に各会派において御検討いただき、昨日委員会を開会しましたところ、共産党議員団から審査を続行すべきとの動議が提出されました。そこで動議について表決を採りましたところ少数で否決されました。その後、各会派で検討された結果を御発表願いましたところ、次のとおりでありました。すなわち自民党、民主・都みらい、公明党の各議員団はいずれも原案に賛成する。また民主・都みらい、公明党の各議員団は共同で1個の付帯決議を付す。共産党議員団は反対する。
 以上のとおりでありましたので、本案について表決を採りましたところ、ただ今お手元に配付してあります委員会報告書のとおり、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決定した次第であります。  引き続きまして付帯決議の調整を行いましたところ、1個の付帯決議を付すことに決定致しました。以下これについて申し上げます。
 この度の京都高速道路新十条通の基本計画の変更については、当初の予測以上に土質の透水性が高いことなどから、工法の変更を余儀なくされ事業費が大幅に膨張するものであり、当初のボーリング調査をはじめとする事前調査の在り方と事業計画の甘さを指摘せざるを得ない。また、用地買収の遅れから完成が1年遅れ、平成15年度末となることも誠に遺憾である。
 よって理事者は、阪神高速道路公団に対し、二度とこのような変更のないよう強く申し入れるとともに、本市としての工期、工費についての十分な管理点検と用地買収の確実な実施に全力で取り組み市民の信頼回復に努めるべきである。
 なお完成後の利用料金についても、短区間の利用には割安の料金を設定するなど市民の利用しやすい料金体系とするよう阪神高速道路公団と協議を進めるべきである。
 以上であります。これをもちまして委員長報告を終わります。

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●9月定例市会代表質問要旨●

  民主・都みらい市会議員団   鈴木マサホ議員

●議長(二之湯智君)
  ●次に、鈴木マサホ君に発言を許します。鈴木君。

 〔鈴木マサホ議員登壇(拍手)〕

●鈴木マサホ君●抽薦で4番目になります。先の方々の質問と重なる所もありますが、答弁のほどよろしくお願いします。今期交通水道委員の鈴木マサホです。
 まず我が家の水道料金のことから質問を始めたいと思います。
 5月15日の検針によりますと、我が家の水道は95立方メートル使っています。2箇月で2万4,807円です。我が家は成人になった子供2人と両親と同居してますし、台所、トイレは別、洗濯機も別、しかし風呂は一つという家庭で、2世帯が住んでいるということになるわけですが、ちょっと高い。これから琵琶湖の方も渇水になりますが、節水を命令してやらなければならないわけですけれども、しかし我が家だけではなくて、今回の水道料金の値上げはそれぞれの家庭にそれなりの影響は及ぼす。市長の御家庭は今何人でお住まいになっているか知りませんが、奥さんが家計は握っておられる。使用水量のお知らせというのは見られたことはあるかも分かりませんけれども、一度桝本家の水道料金がどのようになっているのか、またお知らせいただきたいと思いますが、是非とも一度見ていただきたいと思います。

 そういうことで今回改定されますと、いわゆる19立方メートルを使っている標準家庭がアップされますと474円ということで、年間になると5,688円のアップということになります。経済状況も色々話されてきましたけれども、これが飲食店や公衆浴場、あるいは染色業界をはじめ産業界、また各種施設などで水を大量に使用する事業関係者にとっては今回の料金改定は、一般家庭もそうですが死活問題であることは間違いありません。我が民主・都みらい議員団にも中央市場の皆さんや各業界、連合京都傘下の組合などからも料金改定の見直しを含めて陳情がたくさん来ております。

 さて、先ほども少し話がありましたけれども、この30年間の水道料金の改定を振り返っておきたいと思いますが、1968年、昭和43年、このころは水需要が激増した時期ですけれども、第7期拡張事業の推進と施設の若返りのためということで54.02パーセントの改定が行われています。それからその5年後の1973年、昭和48年には、更にまだ需要が増えてまして、その増加に対応するため第8期拡張事業と配水管整備の着手、そしてまた財政を健全化するためにということで47パーセントの改定。76年、昭和51年、オイルショックに伴う経済変動による財政の変化に対応するためにということで驚くことに73パーセントの改定が行われています。その後90年には第8期拡張配水管整備のために18パーセント上がっていくわけですけれども、水需要はそこで横ばいになります。そこに消費税の話が出てくるわけですけれども、92年、平成4年には命の水にも消費税を転嫁するのかと私も委員会で論戦したのを記憶していますけれども、3パーセントの消費税分がアップして、97年、平成9年には消費税が5パーセントにアップしていますから、その2パーセント分の改定が行われています。

 こういう消費税分の改定は別にすると前回の改定は95年、平成7年でした。このときの提案は皆さん御記憶のとおり、1年生議員の方は御存じないかも分かりませんけれども、17.8パーセントの改定案が示されて市会で深夜まで大議論した結果、基本料金を暫定措置として1年3箇月、水量ランクの細分化、染色業に対する1年間の据置き、福祉施設関係に対する2年間の据置きの修正案が議会から出されまして、我々の方から出しまして実質16.3パーセントの改定で決着を見たところでした。前回は、我々市会の方からこのような修正案を示し少しでも市民負担を軽減しようとしたのです。このように水道料金はおおむね5年前後ごとに一回改定されてきたわけですけれども、今回の改定は、前回からすると5年目に当たるというわけであります。しかし、今までも議論がありましたけれども、時代背景が過去とは随分違っています。景気は回復の兆しを見せていると言われていますけれども、我々京都市民の生活実感からするとそうではない。サラリーマンの給与は上がらず、中小零細企業の多くは悪戦苦闘しているのが現状でありましょう。この間、公共料金の改定はほとんど行われずに来ました。
 この時期に市民生活の根幹を成す上下水道料金の改定が行われることについて、市民生活や京都の産業や経済に及ぼす影響はどのようなものになるとお考えか、市長御答弁いただきたいと思います。また、先ほどから言われてますけれども、改めて、なぜこの時期に改定が必要なのか副市長からお答えいただきたいと思います。

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 先に述べましたけれども、この30年間の料金改定の理由を見ても水道事業の変遷が分かります。水需要が増大した高度成長下の建設拡張の時代から、景気の低迷と人口の横ばいと水需要の鈍化に伴って今や維持管理の時代に入って、そしていわゆる環境ホルモンや病原性微生物や発癌性物質対策などを含めて安全でおいしい水をどう市民に供給するのかが大きな課題になってきています。また阪神・淡路大震災神以来、ライフラインの確保という観点からしても水道事業の在り方が変わってきています。

 一方、過去の高度成長期、人口増大期に配水設備の拡大のために設備投資を進めてきたわけですから、その財政の付けが今になって巨額になるのは当然であります。企業債の未償還残高が1,726億円に及んでいますし、起債の償還利率は高いときで年8パーセント、低金利の現在では2から3パーセントであると聞いていますけれども、その返済は使用料収入に対してピーク時で46パーセント、今年度の見込みは41パーセントの127億円になっています。ここが独立採算制の大きな問題であり、市民の皆さんに分かりやすくいえば、市民は水道料金の半分で水を飲んでいるのですが、あとの半分は利子を飲まされている、払っていることになるかと思います。

 本日の質疑のために議員インターンの学生の皆さんが昨夜グラフを作ってくれたので皆さんにお示ししながら、この10年間の水道事業の動向は一体どうなってきたのかを見たいと思います。単位とか上下、大小は一切関係なくグラフがどういうふうに折れていってるのかだけを皆さんに注目していただきたい。この赤いのは水道料金ですが、ここは水道料金を改定したとこ、1番上です。これは消費税が掛かったときです。それから横の線は年間の有収水量で、有収水量はずっと横ばいになっている。御承知のとおりです。建設改良費は緑で表してますけれども、ずっと上がってきています。しかし使用者数については横ばい、やや戸数的には増えてますけれどもほぼ横ばいになってきてます。これが現状です。傍聴席の人も是非見ていただきたいと思うのですが、上下水道等の推移、いわゆる企業債関係のことを表していますが、このピンクは償還額、年によって償還額は変わってきますけれども、ほぼ横ばいで増えたりすることは余りない。利子支払額もほぼ同じ額で推移しています。しかしながら発行額がこの間伸びてきている傾向にありますし、そして期末の未償還残高が今1,700億円になってますけれども、ずっとこの間伸びて参りました。こういう傾向が水道にあります。
 こういうグラフを見て市長はどう感じておられるでしょうか。

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 ところで水道事業は独立採算制ですから、その負担は市民に返ってくることになり、赤字経営すなわち料金の改定、値上げという悪循環の繰り返しになります。今、問われているのは、京都市総体としての総合的な水行政とでもいうべきものが求められているのではないかと考えています。すなわち独立採算制そのものの見直しが必要になってくるのでしょう。水道事業の今後の課題、在り方について、市長はどのように考えられますか御答弁ください。なお水道局職員の皆さんにおかれては、市民の命の水を守るという立場で誇りを持って今後も仕事に励んでいただきたいと思います。

 次に、下水道事業ですが、憲法第25条には、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するとあります。我が家のトイレが水洗化されたのは三十五、六年前のことだったと思いますけれども、きれいになったなと子供心に喜んだのを思い出します。そしてまた私の子供時代の鴨川は公害で汚れていましたけれども、この間下水が完備されて随分きれいになりました。このように下水道事業は環境衛生の向上だけにとどまらず、公害対策、環境保全や浸水対策に大きな役割を果たしてきました。また京都の場合、淀川下流に多くの都市が控えているわけですから、より適切な高度な処理方法が求められてきました。私たち自治体議員には、どぶ板議員という比喩がありますけれども、市民からは、大雨が降ると水があふれるから何とかしてくれという声が僕にでもよくありまして、下水道局の管理事務所に走りますけれども、すぐ適切な処置が採られてうまくいく場合もあるし、なかなかできない場合もいろいろあります。このように本当に市民に直結するのが下水道事業なんですけれども、振り返えれば下水道事業は1994年、平成6年の建都1200年事業として市街化区域100パーセントの面的整備を行うということで下水道局はしゃにむにその事業を進めてきました。もちろんその財源は起債に頼っていたわけですから、今では企業債の未償還残高が5,331億円と水道事業以上にあるわけです。

 次にこのグラフで示しますけれども、これが下水道のグラフであります。一番上は水洗の戸数が増えてきたことを示しています。ここは一つガタッと減ってますけれども、カウントの数字が監査委員の指摘で間違っていたということで減っておるわけですが、とりあえず水洗が増えてきた。下水処理費自体はほぼ横ばいで並んでいます。事業費用もこの10年間若干伸び続けてきています。下水道の使用料は、この節々で改定されてきてそれなりに伸びてきている。一方、企業債関係ですけれども、償還額は年によって多少変わってきてるわけですが、利子支払額は、ようやく95年以降横ばいになってきているかなと思います。この紫のラインは起債の発行額ですけれども、94年前後の平安建都1200年事業にかかわる以前あるいは拡張時代はものすごく多く、近年になれば随分落ちてきていることがこの表を見れば分かります。しかしながら一方で、期末の未償還残高がどんどん増えてきているということが下水道事業の財政状況をグラフで表したらすぐ分かるということで現状を報告させていただいたわけであります。

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 ところで昭和50年代までは、市民に分かりやすく下水道事業の建設費は公費負担、維持管理費は受益者負担の使用料で賄うという京都方式が採用されてきました。ところが1979年の国の強い指導によって下水道事業も大きく変化してきました。全国的には、下水道事業はほとんどが建設土木事業として市長部局が所管している所もあるわけですが、公営企業法の負担原則の適用を余儀なくされて京都市でも昭和61年度から、それまで一般会計の負担で賄われていた汚水の建設費が使用者負担となってきました。京都市では、その緩和策として当初26パーセントの汚水資本費を補助金として支出するようになりましたけれども、一般会計の財政難と下水道整備の進捗から半分の13パーセントになり、今年度当初予算では計上されず大きく議論になったところです。今回の改定案では更に半分の6.5パーセント、1年で12億円強、平成16年度末では合計約62億円になっております。仮に13パーセントを繰り出すと残りの6.5パーセント分、つまり62億円は一般会計の負担となり、当局が提案している今年度の59億円の累積赤字は解消することとなり、今後の市民負担もそれだけ軽減されるのではないでしょうか。
 現在京都市の財政そのものが危機的な状況ですが、今後京都市の財政状況がもし改善されたときには、市長も提案説明で引き続き対応を検討すると言われたように一般会計からの更なる支援を行うことを強く求めておきたいと思います。また公営企業法の枠もあるわけですが、建設費は公費、つまり税で、そして維持管理費は使用料、受益者負担でという考え方についてどうお考えでしょうか御答弁ください。そして今後の下水道事業の在り方についてどのように考えておられるのかもお答えいただきたいと思います。

 いずれにせよ料金改定問題の議案については、今後の上下水道事業の在り方も含めて、私も民主・都みらい議員団の同僚議員の皆さんと一緒になって交通水道委員会で市民生活を守る立場で議論を進めていきたいと思います。

 なおこの定例市会には、左京区静原に続いて大原地域から下水道の整備が請願として出されています。水道の未普及地域の問題では、静原に地域水道が設置されました。この京都市の取組は住民に大いに喜んでいただけましたけれども、この例のように水道事業と同様に下水道未普及地域の下水道事業についても、今後は京都市総体として考えるべきであることの教訓を残していると思っています。この請願についても交通水道委員会で審査していきたいと思っています。

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 以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

●議長(二之湯智君)●桝本市長。

 〔桝本市長登壇〕

●市長(桝本頼兼君)●鈴木マサホ議員の御質問にお答え致します。

 まず料金改定が市民生活や経済に及ぼす影響についてお答え致します。京都市の経済状況につきましては、一部に回復の兆しが見受けられるものの伝統産業をはじめ本市経済の中核を成す中小零細企業は悪戦苦闘され、依然として大変厳しい状況にあると認識致しております。したがいまして上下水道局におきましては、局始まって以来の行財政改革を懸命に行い、市民の皆さんに御迷惑をお掛けする割合を最小にするため、更に産業経済に及ぼす影響を極力少なくするよう効率化推進計画による人件費の削減及び物件費の削減等を断行し最大限の効率化を実施することと致しました。そして最小限の上げ幅とさせていただきました。

 先ほど鈴木議員のグラフを見せていただきました。改めまして上下水道事業は建設投資先行型の施設産業であり、巨額な投資に苦しむ事業だなと認識致した次第でございます。しかしながら市民の皆さんに安全でおいしい清潔な水を提供し、そして大規模な水害から都市を守るという非常に重要な使命が京都市にはあるなあということも改めて認識させていただいた次第でございます。なお改定後の水道料金は、政令指定都市の中では下から3番目、下水道使用料は下から6番目と低い水準となっておりますので御理解賜りますようよろしくお願い申し上げたいと存じます。

 次に、水道事業の今後の課題、在り方についてお答え申し上げます。御指摘のように水道事業は建設拡張の時代から維持管理の時代に入りましたが、なお多くの課題を抱えております。お説のとおり建設拡張の時代の投資や老朽施設の更新、原水水質悪化に係る多額の投資による元利償還金の増加は水道財政の悪化につながっております。今回、将来にわたる元利償還金を抑えるために建設事業計画について大幅な見直しを行いましたが、しかし一方では、市民の皆さんにおいしく清潔な水を安定的に提供し、そして今後ともしっかりとした都市をつくるためには必要な投資はやはり頑張って行わなければならないと存じております。

 独立採算制は、自主、自立の責任による能率的運営、受益に比例した負担など公営企業の経営の基本でございます。本市と致しましては、経営に当たって効率的運営に不断の努力を行い、他の指定都市と十分に連携致しまして国庫補助制度の拡充などを国に対しまして要求し、適切な負担を強く求め市民負担をできるだけ軽くする努力を今後も粘り強く行って参る決意でございます。

 また下水道事業の在り方でございますが、本市下水道の面的整備はお説のとおりほぼ完了致しました。今後は下水道の質的向上と致しまして10年に1度の大水に対する浸水対策、そして合流式下水道の改善、高度処理及び老朽施設の改築、再構築等の課題に取り組み、いつやってくるか分からない災害対策にも着実に対応していかなければならないと考えております。またこれらに対する国の財政負担の拡充について要望を強く続けていくとともに、事業運営の一層の効率化等企業努力を推し進め財政基盤を確立しまして安定した経営を目指して参りたいと考えております。

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 以下、中谷副市長が御答弁申し上げます。

●議長(二之湯智君)●中谷副市長。

 〔中谷副市長登壇〕

●副市長(中谷佑一君)●まず料金改定の時期についてでございますが、現行財政計画期間中に必要とされる経費を後年次に先送り致しますと料金の改定率が今よりも高くなり、結果として市民の皆様により一層の御負担を強いることになります。市民生活や民間企業は依然として厳しい状況にあると認識しており、最大限の効率化により市民負担をできるだけ低く抑えることとしておりますので、是非御理解をよろしくお願い致します。

 次に、下水道事業経費の負担区分の点でございます。本市におきましては自治省からの通知に基づき昭和61年度から現在の雨水、汚水の負担区分方式を採用致しました。この方式は他の政令指定都市もすべて採用しているところでございますが、自然現象であり公共性が高い雨水排除に要する経費は公費で負担し、排出者と排出量が明確で私的要素が強い汚水処理に要する経費は使用料で賄うという原因者負担が下水道事業の負担区分の原則であると考えております。しかし初期投資に多大な経費を要する下水道事業の特性にかんがみ、面整備を促進するため拡張期においては建設費を公費で負担してきたものであり、また現行の負担区分採用後も利用者の負担を軽減するため汚水資本費の一部を公費で補助してきたところでございます。面整備もほぼ完了し安定期に入った現段階においては市民負担にも配慮しながら負担区分の原則に近付けていくことが適切であろうと考えております。以上でございます。

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