作品3 「マチナカに住む」  木下 直大
プレゼンテーション

 この地域にはまだ町家がたくさん残っている。そこで、景観に合わせて町家風の集合住宅を考えた。
まず周囲の建物に比べて高さがあまり飛び出さないようできるだけ低い建物にするため、2階と屋根裏部屋を
合わせた3階建てとした。

配置図

 さらに南側の前面道路沿いには軒が出ている建物が並んでおり、これに合わせるように建物を
敷地の南側に建て、軒を出し、外観も焼杉板張りと漆喰塗りにした。

平面図

 プライバシーを守るため、南側を共用の廊下とし、窓には格子を設け、またその共用廊下と住戸を
渡り廊下でつなぎプライバシーに配慮した。南側に吹き抜けの庭を設け採光もとれるように工夫した。
これにより南側と北側に居室を設けることが可能になった。

断面図

 住戸全体のコンセプトとしては、街中においてゆったりとした空間を楽しめることを考えた。
各住戸のプランは、1階は専用庭のある2タイプと、2階は収納部屋としての屋根裏を設けたタイプと、
広々とした洋室を設けた2タイプを設計した。各住戸とも居間は畳敷きで1段高くし、床下収納を設け
収納スペースをとった。台所は対面式にし、ダイニングと居間を見渡せ、広々とみせるようにした。
 2階の2つの住戸には浴室から坪庭を眺められるようにし、くつろぎを感じられる空間とした。

立面図

講評:前2案と共通する課題であるが 町家の建ち並ぶ既存の町並みのデザインを現代の集合住宅に採り入れようとするとき、プライバシーの考え方をどうするのか、ということが常に問題になる。近所の人が勝手に土間まで入り込んできて「こんにちは」という住まい方と、玄関ドアできっちりプライバシーを守りたいという現代の住まい方は大きく異なる。この設計では、南側の前面道路側にあえて共用廊下を設けて緩衝地帯とすることにより、現代的な意味でのプライバシーをきちんと確保しながら、そのデザインに伝統的な建築の要素を引用して町並みとの調和をはかっている。南面のファサードが左右対称で、やや威圧的な印象を受ける点に疑問が残る。