植物園に立つ休憩所   建築科1年自由課題 2002

『池のほとりで』        建築科1年  佐野 公亮

水辺しか見えないベンチを作って、ゆっくりと落ち着ける場所になるように設計しました。
休憩所と言えば、みんなでわいわい話をしながら団欒できるのが多いですが、
一人で読書したり、二人で誰にも邪魔されずに話ができる、
そんな空間があってもいいなと考えました。



 模型写真


壁で囲ってしまえば、明るさが奪われることも
あると思い、格子を設け、又、水辺の近くにいるという
雰囲気を作り出す為にアプローチの床板を半分にして、
近くにまで水辺がくるようにしました。
ほんとに落ち着ける休憩所です。
一度座ってみませんか?


 エスキース

 平面図と立面図

講評

 今年はカリキュラム変更に伴い、秋の集中講義週間に連続10回の授業で休憩所の課題に取り組んでもらった。例年とは違って、デザインやプレゼンテーションを学ぶところに力点を置いたコースを15人ほどが希望した。敷地の見学、スケッチ、過去の先輩たちの作品の分析、エスキース制作、模型制作、図面作成、プレゼンテーションと公表という一連の作業をおこなったが、敷地のエスキースや画像をもとにモチーフについての発表、おおよその形が出来上がった時点での発表、そして最終の模型画像を用いてのプレゼンテーションの発表と、3回の公表とクリティークを全員で行なったものである。
 例年のように興味ある作品が数々出て優劣つけがたいが、その中から佐野君の作品を取り上げた。彼の作品の優秀性もあるが、常に進行をリードして他の生徒たちの範となり、進んで世話をしてくれた人柄に好感が持てたからである。また、こういう発表にあっても、よくまとめ直してくれた。 さて休憩所の作品であるが、他の多くの生徒たちの多くが立地に公園内の水辺を選んでいる。水面のもつ癒しの力に惹かれてのことだろう。水面近くにたたずむ、小さい空間に籠る、大きな樹の下に潜む、といった基本テーマが多いというのも、同様だ。もちろん、中には樹木の上空に登りあがって周囲を睥睨するといった力強い意志を示す作品もあった。(作者が女性という点が面白い。)
 この作品は立方体と三角形を組み合わせ、全体として素直なデザインである。が、周到につくられた模型に見られるように、その格子フレームが簡素な中によい緊張感を与えている。また、色々な角度から眺めたときのフレーム見えの変化は実に安定していて心地よい。こうした素直さが建築の基本であると思う。注文をつけるとすれば、すべてフレームのみではなく、面(壁パネル)を適宜入れて、半ば包まれた空間を考えてみてはどうか。より閑かな場所をもたらしてくれることだろう。(さのはるひと)