徂徠 春子 「御陵村」

グループホーム「御陵村」(賃貸)
伏見桃山の町のざわめきが聞こえる場所につくる


普段の生活の要素が身近にあり、住民を外へと誘う
町の時間の経過を味方につけて一日の感覚を養う

地域のアイデンティティーの要素をユニット名に取り入れる
〜伏見桃山という場所〜
伏見の名水
 御香宮神社 → 「御香」
 酒蔵の町 → 「御蔵」
 桃山御陵 → 「御陵」


 伏見桃山城 → 「御城」   5名1ユニット×4ユニット


  ─町の一員である事を意識させる
   街中に住むことによる車などの危険性より町の外に孤立して住むことによる
   人間性の危険のほうがずっとずっと高い。
   街中に住むことによって互いに見守りあう。


集合住宅「御陵参道」
OL、単身赴任のサラリーマン、夫婦、学生、高齢者などいろいろな人が普通に暮らす賃貸マンション
求めるのは普通の賃貸マンション。
そこは隣人であり、同じ町を形成する仲間となる


 OL
 単身赴任のサラリーマン
 子どもが小さい夫婦
 ミュージシャン
 学生
 熟年カップル
 福祉に興味を持つ学生
 建築家
 記者

いろいろな人に住んでほしい。


地域交流館「名水館」
伏見の名水を中心要素
地域のアイデンテティーである伏見の名水を活かした飲み物を中心要素とした
地域住民の交流の場
 カフェ
 バー
 茶室
 宴会場
 情報エリア
 機能訓練室
 サンルーム
 屋上庭園


  ─求めている「大人の空間」の重要な構成要素
   同じ敷地内にあることで、外に出にくい人の生活の中にも交流の場が生まれる。


配置図兼1階平面図
講評

 高齢者の居住施設を自分の問題に引き寄せて考える時、高齢者だけを集めて郊外に施設を計画するのではなく、街中のコミュニティーの中でさまざまな年齢層、職種の人と共に暮らすような場所を提供することこそ望ましいのではないか、というのが発想の原点である。このため、高齢者のグループホームと一般の集合住宅を関連付けて計画し、地域との交流を生みだす仕掛けを各所に用意している。中心となる高齢者の居住部分は、光の採り入れ方やスケールが適切で特によく計画されている。外観の計画も周囲の景観にとらわれない斬新なものであるが、その図面表現は不足気味である。

グループホーム+集合住宅+地域交流館=町
住み慣れた町の中で気の合う仲間と普通に暮らしたい
年をとったら何かしら助けがいるのは当たり前のこと
一緒に暮らすのは家族でなくてもいい、そのほうが幸せなこともある。
求めるのは大人(ADULT)の空間
敷地周辺写真、地図
2階平面図
南、北立面図
断面図
かなばかり図
御陵村」(グループホーム)
1ユニット5名とし、全部で4ユニットを1階に配置。部屋の広さは24uを最小としてさまざまであり、全室個室とした。各室に専用便所とミニキッチンを設置。廊下を普通より狭くしどこを進んでも庭に出て帰れる回遊式とした。2ユニットごとにそれぞれ3つの浴室、一つの洗濯室、台所、食堂を設置。随所に大小さまざまのリビングを配置し、お気に入りの場所を選べるようにした。スタッフルームはスタッフ用通路を兼ね、フットワークを軽くした。


「御陵参道」(集合住宅)

各室に専用庭、ベランダを設け外とのつながりを感じられるようにした。各室はこじんまりしているが、廊下、便所、浴室などは広めにとり、車椅子生活にも対応。グループホームの屋上庭園とブリッジでつなぎ一体感を演出。
住民用玄関までと各住戸までのアプローチは路地的空間とし、交流の場としての可能性を創出。

「名水館」(地域交流館)
来館者の裏方への視線カットと作業環境をよくするためスタッフエリアを別に配置。グループホームの内部玄関はスタッフの視線が行き届くよう配置。
御陵村」(グループホーム)
庶民の住処なので大げさにならぬよう普通のワンルームマンションのような外観をめざした。


「御陵参道」(集合住宅)

特別な建物ではなく普通のマンションと見てわかる外観をめざした。

「名水館」(地域交流館)

伏見の酒蔵の外観を思い起こさせる杉板張りとした。
御陵村」(グループホーム)
住宅の落ち着いた雰囲気を出すため天井高を低めの250cmとした。


「御陵参道」(集合住宅)

グループホームより天井高を10cm上げてより開放感を出すようにした。

「名水館」(地域交流館)
グループホームと集合住宅と外との接点の役割を果たすオープンな空間とするため玄関から1階のカフェ、情報エリアは吹抜けとした。中央の階段は吹抜けからトップライトを用い、明るい空間を演出。