1 関西ベンチャー・ビジネス研究会総会の開催について

 平成114月に発足しました関西ベンチャー・ビジネス研究会も3年目を迎えています。次の要領で平成13年度総会を開催する予定ですので、ご参加ください。

  平成
13716()   研究会の入会手続き

日時 15:3016:30  記念講演
               京都大学大学院経済学研究科教授 吉田和男
              「ベンチャー・ビジネスの新動向」
16:3017:00  (株)関西ベンチャー・キャピタル株主総会
              (オブザーバーとして参加可能です)
17:0019:00 懇親会(立食及び飲み物にて参加費5,000円)

場所 京大会館(別紙地図参照)

2 (株)関西ベンチャー・キャピタルが投資事業組合を設立

 関西ベンチャー・ビジネス研究会の支援によってベンチャー・ビジネス、特にシード段階ビジネスへの投資を行うために設立されました(株)関西ベンチャー・キャピタルが最初の投資事業を行いました。この対象となったのはアワーズテック(株)です。この投資は関西ベンチャー・ビジネス研究会が提起した関西ベンチャー・キャピタル構想のスキームに沿って行われました。この投資のために、関西ベンチャー・ビジネス研究会のメンバーを中心に資金を募集し、1億2100万円の資金を調達しました。3月1日に投資事業組合を設立し、1億円をアワーズテック(株)に投資し、ベンチャー・ビジネス育成事業のスタートを切りました。

 関西ベンチャー・キャピタル構想では次のようなベンチャー・キャピタルを作ることを目指していました。

@ シードインベストメントに重点を置く。日本のベンチャー・キャピタルはレイターステージへの投資が大半で、シード及びアーリーステージへの投資が不足していることがベンチャー・ビジネスの発展を遅らせていた。最近になってアーリーステージへの投資がでてきたが、アイデア段階や企業として呈をなしていないスタートアップ段階のベンチャー・ビジネスへの投資はまだまだ充分とはいえない。

A 一般のベンチャー・キャピタルはまず資金を集めてそれをベンチャー・ビジネスへ投資することとしている。この方法ではシード段階の投資が難しかった。そこで、(株)関西ベンチャー・キャピタルでは、シードを見つけてきてそれに対して投資家が自らの判断で投資を行うスキームを取っている。つまり、シードがファンドの先にあるという方法を採った。また、資金は私募の性格を強めるために関西ベンチャー・ビジネス研究会の会員に投資家としてベンチャー・ビジネスを支援することを期待した。特に、コアになる投資家にはジェネラル・パートナーのような形で積極的に参加してもらうこととした。

B (株)関西ベンチャー・キャピタルの重要な仕事としてベンチャー・ビジネスを志す者にビジネスプランを作成させ、投資家を説得させることを指導した。すなわち、ビジネスプランを全ての出発点として、ベンチャー・ビジネスを始めさせることとした。投資したベンチャー・ビジネスに対しては(株)関西ベンチャー・キャピタルがコンサルティングを行い、ベンチャー・ビジネスとして成功に導く方策とした。

C また、投資対象はシードであるので、企業として十分な体制を確立していない。関西ベンチャー・ビジネス研究会のメンバーの御協力を仰ぎ、各自の立場でベンチャ−ビジネスを支援していただくことを期待した。

 今回のアワーズテックへの投資は次のように「関西ベンチャー・キャピタル構想」の方針に沿ったものです。

@に関しては、アワーズテックは設立後、1年というほぼスタートアップの企業である。会社の設立は既に行っているが、早稲田大学、大阪電通大学等との共同研究によって製品開発に没頭しており、まさにシードからスタートアップへの段階であることから(株)関西ベンチャー・キャピタルの投資対象となった。

Aに関しては、投資対象を提示して投資事業組合への出資を募集することとした。ジェネラル・パートナーとして特定の投資家に審査してもらったのではないが、ビジネスプランを提示して投資家の判断で投資してもらった。

Bに関しては、(株)関西ベンチャー・キャピタルの村上副社長がビジネスプランの策定の指導を行い、また、京都大学の西山孝教授の御批判を仰ぐなどして、投資家を説得する材料をそろえることとなった。そして、(株)関西ベンチャー・キャピタルが経営に対してコンサルタントができるにように、シニアー・ベンチャー・サポーターの公募を行った。その結果、大阪ガス元常務取締役で京都リサーチパーク前社長の野村透氏に社外取締役としてアワーズテックの指導に当たっていただくこととした。また、野村氏には(株)関西ベンチャー・キャピタルの会長にも就任していただいて、事業全体の御指導を頂くこととしている。

Cに関しては、アワーズテックはこれまで研究開発に専念してきたことから、営業や財務など企業としての体制を作るのはこれからである。特に、重要となる営業に関しては、関西ベンチャー・ビジネス研究会の会員の紹介によって三井物産の現役室長クラスのベテランである馬場正修氏を業務担当取締役として入社してもらうこととした。

 当初の構想とは若干の修正を余儀なくされましたが、おおむね「関西ベンチャー・キャピタル構想」で考えた投資を行うこととなりました。これも関西ベンチャー・ビジネス研究会の皆様の御協力の賜と思っています。

 (株)関西ベンチャー・キャピタルの第一号投資を是非成功させるべく、今後とも皆様のご協力をいただきたいと思います。

3 (株)関西ベンチャー・キャピタルの第2期決算

 関西ベンチャー・ビジネス研究会の支援で平成117月に発足した(株)関西ベンチャー・キャピタルは第二回目の決算株主総会を迎えることとなりました。これまで、取締役にほぼ無給で奉仕していただき、シード・スタートアップ期のベンチャー・ビジネスへの投資という難しい事業に注力していただき、まずは最初の投資にこぎ着けたところです。

 この投資によって、(株)関西ベンチャー・キャピタルにも投資事業組合の管理手数料などの収入が入ることになり、ようやく会社としても収支が改善することになりました。第二期で単年度黒字になっているので、まずまずではないかと思います。森脇社長をはじめ役員、顧問の御努力、御協力の賜と思います。

 (株)関西ベンチャー・キャピタルはシード・スタートアップ期のベンチャー・ビジネスへの投資を次々に行うことを目的に設立されましたが、実際に行ってみると、審査の難しさ、応募者の指導の難しさ、資金調達の難しさ、会社の支援の難しさなど予想されたとはいうものの事業の困難さを実感させられました。この二年間のノウハウの蓄積が次の投資事業の発展につながることを期待している次第です。
 株主総会は716日に、京大会館で、関西ベンチャー・ビジネス研究会の研究会の後に行う予定をしていますので、株主でない方もオブザーバーとして御出席いただければ幸いです。(株)関西ベンチャー・キャピタルが関西ベンチャー・ビジネス研究会の支援で設立、運営されることは当初からの趣旨ですので、オブザーバー参加は期待されているところです。そして、さらに(株)関西ベンチャー・キャピタルの支援に関して御理解を頂きたいと思っています。

4 関西ベンチャー学会

 本年2月に、関西のベンチャー関係の研究者が中心になって関西ベンチャー学会が設立されました。会長に塩沢由典大阪市立大学教授が、副会長に私が就任しています。関西における大学での研究者だけでなく、ベンチャー支援を行っている実務家、ベンチャー・ビジネスの志願者など幅広く結集しようと言うものであり、関西におけるベンチャー・ビジネスの振興に資することを狙っています。参加資格は会員の紹介以外に特にありませんので御関心のあられる方は是非、ご参加くださいますように御案内します。
 ここでは、研究者を中心にベンチャー・ビジネスについての研究分科会を行って、会員間の研鑽を行うと共に、年に一度、大会を開いて研究成果の発表を行う予定です。

 御質問・御入会案内は下記の事務局にお問い合わせください。

               541-0053 大阪市中央区本町 1-4-5 大阪産業創造館内

        Tel 06-6264-9818 Fax 06-6264-9889

        e-mail infokansai-venture.org
           
      url   http://www.kansai-venture.org/
        事務局の担当者は水落智子さんです。

5 本腰を入れる日本政府

 日本経済がバブル崩壊後の長期の不況から回復する施策の一環としてベンチャー・ビジネス振興が行われました。当時の通産省だけでなく、文部省、労働省、郵政省、自治省など我も我もと霞ヶ関でブームとなりました。各都道府県にベンチャー財団が作られ、多くの支援制度が取られたのです。しかしながら、現実に成功したものはほとんどありませんでした。それはあくまで中小企業対策であり、バラマキ行政の一部でしかなかったためでした。
 平成11年に関西ベンチャー・ビジネス研究会が設立され、その夏に21世紀日本フォーラムとの共催でベンチャー・ビジネスに関するサマーフォーラムを行いました。そこで、通産省の幹部とベンチャー・キャピタルの経営者の間で大論争になったことは記憶に新しいところです。通産省の幹部はあくまで中小企業の枠組みを前提に議論し、ベンチャー・キャピタリストはベンチャー・ビジネスのための資金提供を主張しました。
 その後、通産省は中小企業基本法を変えて、いわゆる中小企業とベンチャー・ビジネスを区別して取り扱うような形に移行します。そして、中小企業総合事業団から投資事業組合に対して、リミテッド・パートナーとして資金提供を行うスキームを作りました。さらにアーリーステージを対象とした投資事業組合に対して、日本政策投資銀行が出資参加するスキームが生まれています。すなわち、これまでの都道府県を通じてばらまき型のベンチャー・ビジネス支援ではなく、民間のベンチャー・キャピタルの力を助成することでベンチャー・ビジネス振興を図る方向に移っています。
 また、小泉内閣の誕生に合わせて、都道府県を通じるばらまきを排除して、地域でのクラスター作りに中小企業政策を移し始めています。科学技術庁も文部省と統合したことをきっかけに、大学を中心にしたベンチャー・ビジネスのクラスター作りの研究を始めており、私もその審議会の委員になっています。
 いずれにしてもこれまではベンチャー,ITといった新しい分野への政策も都道府県を通じるバラマキという古い型の行政で行われていましたが、これが大きく転換しようとしています。ようやく政府でもベンチャーの基本が理解させるようになったと喜んでいます。

  学界の動向

大学でもベンチャー・ビジネスは新しい分野として多くの大学に講座が設けられ始めています。また、多くの大学でベンチャー・ビジネスの支援を行えるようにベンチャーのオフィスをおくことが進んでいます。京都大学でも平成13年度から大学院に「事業創成講座」として4人のスタッフでの講座が始まっています。ここで、社会人を含めて大学院、学部生にベンチャーの教育ができることが新たな展開を生んでゆくものと考えています。
 関西ベンチャー学界もできたことですので、関西にもこの流れがさらに強くなり、関西経済の復興に資すればと期待しているところです。

7 今後の関西ベンチャー・ビジネス研究会の活動方向

 関西ベンチャー・ビジネス研究会はベンチャー・ビジネスの支援を行う団体として誕生しました。そして、現実にベンチャー・ビジネスを生み出すために、関西ベンチャー・ビジネス研究会の支援で(株)関西ベンチャー・キャピタルを設立し、投資事業も始まっています。これまではベンチャー・ビジネスについての認識を深めるための啓蒙活動が中心でしたが、(株)関西ベンチャー・キャピタルの活動が軌道に乗ってくることで、この活動への協力が中心になると思います。
 投資事業組合の設立に当たっても関西ベンチャー・ビジネス研究会のメンバーを中心にご案内することとしています。ベンチャー・ビジネスを現実に拡大して行くためには(株)関西ベンチャー・キャピタルの活動が拡大する事が基本です。そこで、この支援を行っている関西ベンチャー・ビジネス研究会の会員の裾野が広がっていくことが、(株)関西ベンチャー・キャピタルの活動を拡大する基本になります。会員の皆様には、新たな会員のご紹介を是非ともお願いしたいと思います。また、(株)関西ベンチャー・キャピタルから投資するベンチャー・ビジネスに関してお願いをしましたときには、是非とも御協力のほど宜しくお願いします。

関西ベンチャー・ビジネス研究会の入会手続き