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御祭神

八坂神社すなわち祇園さんの御祭神は、スサノヲノミコト(素戔嗚尊)・クシイナダヒメノミコト(櫛稲田姫命)・ヤハシラノミコガミ(八柱御子神)です。

 

素戔嗚尊は、『古事記』では「須佐之男命」、『日本書紀』では「素戔嗚尊」と表記されており、神話では天照大神の弟神として語られています。

 

 

祇園さん

天照大神は天神(アマツカミ)の代表、素戔嗚尊は地祇(クニツカミ)の代表的存在として崇敬されています。特に素戔嗚尊は、母の死に慨き悲しみ、あるいは天照大神との勝利に驕り、さまざまな罪も犯しましたが、高天原からの追放という悲境に自ら雄々しく立ち向かい、遂にこれを克服して、善悪を超えて彼岸に到達したわが国最初の英雄神でもあります。

 

素戔嗚尊こそが、日本神話の中で一番個性的で魅力的な神であるともいえます。それというのも、現に素戔嗚尊を祀る神社は全国に数多く存在するからです。

天照大神よりも圧倒的に多いのではないでしょうか。

その多くは、「祇園さん」、「天王さま」、「天王さん」と呼ばれて親しく信仰されています。

 

祇園祭

平安時代のはじめ頃、都に疫病が流行して、多くの人々が死に絶えました。 近年、病原性大腸菌O157が猛威を振ったり、最近では狂牛病や炭疸菌の不安の恐怖に悩まされていますが、むかしは、疫病の流行は大災害でした。この災厄の発生を政治的に失脚して処刑された人の怨みによる崇りであろうと考え、はじめはこの御霊をまつったのですが、怒りは治まりませんので、より強い神仏が求められたのです。この怨霊(御霊)を退散せしめることができるのは、素戔嗚尊のような、偉大な神格の神に頼るほかないと、祇園社に祀られているこの神に祈ったのです。

 

怨霊は御霊(ゴリョウ)といい、これを退散させる祭りを御霊会(ゴリョウエ)と称し、貞観7年(865)6月7日にも行われたことが『三代実録』に記されています。

そこには、京畿七道の諾人、事を御霊会に寄せ、私かに徒衆を聚め、走馬騎射することを禁ず。 小児の聚戯は制限にあらず。とありますから、それ以前より随分盛大に行われていたことと察せられますが、祇園社の名ではっきり記されているのは『祇園社本縁録』で、貞観11年(869)6月7日のことです。神泉苑に矛66本を立て、祇園社から神輿を送ったとされています。これが祇園祭のはじめでした。

 

牛頭天王

そしてまた、祇園の神である素戔嗚尊は、インドの釈迦の生誕地に因む祇園精舎の守護神であるゴヅテンノウ(牛頭天王)ともされていました。牛頭天王という名は、新羅に牛頭山という山があり、熱病に効果のある栴檀(センダン)を産したところから、この山の名を冠した神と同一視されました。それというのも、素戔嗚尊は、新羅の曽尸茂利(ソシモリ)という地に居たとする所伝も『日本書紀』に記されていまして、「ソシモリ」は「ソシマリ」「ソモリ」ともいう韓国語で、牛頭または牛首を意味し、韓国には各地に牛頭山という名の山や牛頭の名の付や島がある由です。さらにインドの密教や陰陽道の信仰とも混じりあって、神仏習合の形で祇園信仰が広まりました。つまり祇園の神といえばわが国固有の神道と、インドに成立した仏教と、中国の道教等の習合によって生み出された、まことに国際的な神さまなのです。

 

素戔嗚尊と習合

祇園祭が始まったのは、平安京が定められて、都市化が進んだ貞観11年ですが、祇園さんが鎮祭されたのは、それよりさらに古く、奈良時代以前に遡ります。

記録の上では詳らかでありませんが、斉明天皇2年(656)高句麗の使、伊利之使主(イリシオミ)が来朝したときと伝えられています。伊利之は『新撰姓氏録』に八坂造の祖に、意利佐の名がみえ、祇園社附近はもと八坂郷と称したことによります。

すなわち、韓国より渡来した人々が住みついて、牛頭天王をまつったのでありましょうが、わが国人にとっては、素戔嗚尊でありました。この神を武塔天神とも申しました。

 

そのことは、『伊呂波字類抄』に、

天竺北方の九相国に吉祥園があり、牛頭天王はその城の王で武塔天神ともいう。

と記されており、さらに『備後国風土記』の逸文には、

昔、武塔神が旅の途中、蘇民将来は貧しかったけれども宿を貸してもてなし、弟巨旦将来は富み栄えていたが断ったため、後に疫病が流行したとき、蘇民将来の子孫には茅の輪をつけて災から免れさせたが、その他の者はことごとく死に絶えた。

という説話が記されていまして、これに「われはハヤスサノヲの神なり」と仰せられたとあることによります。『釈日本紀』には「これすなわち祇園社の本縁なり」ともありまして、古くより、牛頭天王=武塔神が、素戔嗚尊と習合されていたことが判明します。

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