【2月5日(月)】
●北野勇作『かめくん』(徳間デュアル文庫)。
「かめくん」と呼ばれるカメ型戦闘ロボットを主人公としたのほほんSF。短編連作といってもいい断片的なスケッチの積み重ねでできており、何やら派手な戦闘なども行なわれているらしいのだが、最初から最後までこののほほん具合は揺るぎない。甲羅に哀愁を漂わせる木訥なかめの姿に作者自身をオーバーラップさせてしまうのはぼくだけではあるまい。
色んな意味でほろ苦い。
●歯抜けのままでもいいやっと諦めて日記をアップしたが、更新日付を「2/6」と間違えていた。
【2月7日(水)】
●エリック・マコーマック『隠し部屋を査察して』(東京創元社)。
カナダのボルヘスとでもいうか、短くて想像力溢れる短編集。
結構の整った短編ではなく、断片の集積なので、物語はほとんど描かれない。一番刺激的だったのはやはり「パタゴニアの悲しい話」で、未読の長編『パラダイス・モーテル』はどうもこの一部を長編化したもののようだからいずれ読まねばなるまい。
【2月9日(金)】
●霞流一『スティームタイガーの死走』(ケイブンシャノベルス)。
幻の機関車を玩具会社が作って走らせる、という発想が面白い。しかし舞台が中央線で、ほとんど旅情らしきものとは無縁なのは残念。
参考資料には列車ものの映画がずらりと並んでいて、その手のものになるのかと思っていると、あれあれと変な方向に話が進み、ミステリらしいミステリになったと思った途端解決。少々あっけないかと思いきや、最後にはとんでもない結末が……。
最後のどんでん返し(?)がメインなのだとしたら、もう少し腑に落ちる伏線が欲しかったし、そのことを利用したトリックがあってもよかったという気もするのだが、それにしてもまあ変なことを考えたものである。
【2月10日(土)】
●泡坂妻夫『奇術探偵曾我佳城全集』(講談社)。
本格ミステリ大賞の候補作であるため、未読分の短編を消化。
最後にこういうものが来るのはなかなか泡坂さんらしい。ある一作がキーポイントになっているようだが、完全にすっきりと理解はできない。深い意味はないのかなあ……。
しかしそれにしても、既刊分の短編を除いて普通に一冊の短編集として出ていた場合どういう評価になったのか、果たして候補になったのかどうかと考えると、素直に大賞にはしにくい。特別賞のようなものがあれば、一番ふさわしいだろうという気はするのだが。