【2月22日(木)】
●ダフネ・デュ・モーリア『鳥 デュ・モーリア傑作集』(創元推理文庫)。
「鳥」はパニックものというよりも、意外と静かな恐怖を醸し出す佳品。「動機」もなかなかいい話。しかし全体に、ミステリ、と思って読むと古い感じは否めない。
【2月23日(金)】
●CSで「ヴァイラス」。「グリード」を思わせる船上アクション・ホラー。まあまあ面白い。シナリオに何かひとひねりくらいあってもよかったような気はする。
【2月24日(土)】
●えひめ丸の衝突事故の遺族(といっていいのか?)に配慮して、「GODZILLA」のテレビ放映を中止して「フィフス・エレメント」に差し替えるのだとか。
「GODZILLA」の冒頭で巨大な物体(もちろんゴジラだ)にぶつかって漁船が沈むシーンがあるから、というのだ。
大体、今回の事故で亡くなった(と思われる人々)は9人。事件としては重大なものではあるとしても、被害者の数はさほど多くはないし、どんな小さな事故や事件でも、家族を失った人の気持ちに違いはない。年間一万人の交通事故死者がいるというのに、ドラマで交通事故を扱うことを自粛するだろうか? 交通事故で家族をなくした人や「普通の」殺人事件で家族をなくした人は、この数ヶ月で9人より少ないなどということはありえないが、それらの人の気持ちをテレビ局は配慮などしない。
配慮しているのは「遺族の感情」なんかではない。他の視聴者から「不謹慎ではないか」と言われないためであることは明白だ。
放送を差し替えること自体はあってもいいと思う。悲劇の記憶が生々しい時に、それを想起させる場面があれば、関係者でなくとも素直には楽しめないかもしれないし、だとすると作品にとっても不幸なことだ。「GODZILLA」の場合は……冒頭のシーンより、ゴジラ誕生をフランス核実験のせいにしてしまうアメリカ人の厚顔無恥さが何だか米軍の目茶苦茶さとダブっていやあな感じになるかもしれないな。
【2月25日(日)】
●小野不由美『黒祠の島』(ノンノベル)。
間然とするところのない佳作。
あらすじからするとありがちな孤島連続殺人ものに見えるが、実のところ驚くのは、全編島の人々に尋ね回るだけで、リアルタイムに何かが起きるということがほとんどないこと。連続殺人であるのは間違いないのだが、それらは全て過去に起きたことなので、骨組みとしては謎とその解明に終始する。ひたすら関係者に対する尋問と推理だけなのに、なぜかぐいぐいと読ませる。異教、閉鎖的な島民といった意匠から、宗教・民俗学蘊蓄に行くのかと思いきやそちらも必要最小限にさらっと流してあるし、キャラクターの面白さで読ませるわけでもない。ストイックな本格とでもいうか。
メインの部分は予想がついたが、別のところで驚く。孤島ものということで帯では『十角館』を引き合いに出しているが、むしろこれは裏『霧越邸』かも。
【2月27日(火)】
●CSで「エース・ベンチュラ」。ジム・キャリーの芸風はあまり好きではなくて、途中でやめてしまう映画もあるのだが、これはさほど気にならず、楽しめた。イルカの誘拐という割にほとんどイルカが出てこないのが残念。
●歌野晶午『生存者、一名』(祥伝社400円文庫)。
フーダニットかと思ったら、重点はそこにないようだが、ツイストの効いた、読み応えのある中編。
【2月28日(水)】
●このページを立ち上げた時(6年前)に作ったプロフィールがずっとそのままで、余りにも古くなっていたので書き直す。これ。