ごった日記2001 3月1日〜10日


【3月1日(木)】
●いつまで経ってもモニターが届かないので未だにcubeは使えず。頭にきて(前からきてるが)アップルに電話すると、「担当者が二人とも休んでいるので分かりません」。
 ……。
 明日は東京なので「とにかく朝のうちに電話をくれ」と言っておく。

【3月2日(金)】
●もうそろそろ昼前になって出かけなきゃいかん時間になってもアップルから連絡がないので、仕方なくこちらから電話をかける。「もうすぐだと思います」と言うだけで結局はっきりした日付は分からず。どんな会社?
●ホテルにチェックインしてから、東京會舘へ。SF大賞、SF新人賞、大薮春彦賞の徳間三賞授賞パーティである。今回あまり関係ないのだが、明日が神代創さんの結婚式のため、せっかくなので顔を出すことに。
 藤木稟さん、波多野鷹さんなどが初対面。
 大薮賞の五條さんはSF大賞の巽さんよりはまだよく知っている方なので、そちらの二次会へ。ホラー系の面々とおとなしくしていたはずなのに、遅れてやってきた五條さんはまさに我々のいるテーブルに見知らぬ美男と座る(後でその人は石田衣良氏と判明)。
 浅田次郎を始め錚々たるメンツが挨拶した後、倉阪氏にも挨拶が回り、まさかなーと思っていたらぼくまでご指名がかかってしまった。しどろもどろに祝辞を述べ、早々に座る。あー冷や汗かいた。
 五條さんは何だか悪性の風邪だかインフルエンザだか、とにかく調子が悪いらしく二次会で解散。担当C嬢は彼女をお見送り。ホラー系の顔ぶれ(倉阪、東雅夫、W田中、牧野修)と共に、大森夫妻とカラオケに。やはりハイパージョイではないのでキリンジは「グッデイ・グッバイ」のみ。とりあえず歌う。
 その後、岩井志麻子さんと共にT社のFさんという女性が合流。ハスキーボイス(?)でド演歌を絶叫し、大受けに受ける。
 しかし、自ら禁じていたはずの冷酒をいつの間にか注文しており、くいくいと飲んでいるうちに記憶が途切れる。

【3月3日(土)】
●起きるとゆうべどうやって帰ったかの記憶がない。12時にロビーで、と言って別れたような気がするなあと思ってシャワーを浴びていたら電話が鳴る。タッチの差で間に合わず。どうやら11時半という約束だったらしい。髭を剃っていると再び電話が鳴り、案の定田中さんで「今髭剃ってるんですぐ下ります」と言うと、「牧野さんは待ってられんゆうて帰りました」。
 下へ降りると、カラオケボックスをどうやって出たかも覚えていないので、「昨日カラオケの金払ったかな?」と聞いてみると、
「あんたは三回も払おうとしたわ!」と吐き捨てるように答える田中氏。
「う〜ん、記憶にない」
「どこまで覚えてます?」
「……一時間延長したとこまで、かな」
「岩井さんが山本リンダを歌ったのは?」
「え、そんなん歌ったん。もったいない。覚えてない」
「でも、最後にちゃんと『バス・ストップ』歌ってましたで」
「そういえばそんなん入れたような気はするけど……歌った記憶はないなあ」
 ほぼ記憶の途切れた瞬間が特定できたようである。これで安心だ(何が?)。
●田中さんと二人でタクシーに乗り、案内図を見せると首を傾げながら地図をくるくる回している。大丈夫か。
 しかし案ずることはなく、無事時間前に会場である白金のレストランに到着。
 白金といえば話題のシロガネーゼの発見されたところであろう。確か納豆か何かに含まれる酵素の一種だと思うがよく分からない。多分ネバネバしたものだろう。
 ともかく神代創氏の結婚式は始まった(一人でやったわけではない、念のため)。
 立食形式ではあるものの、和食の店で、いかにもありがちなメニューではなくてどれも味がよい。寿司やてんぷらをその場で作ってくれるコーナーもあったりして。
 見知った顔は大森夫妻、霜島ケイ、堺光保、柳下毅一郎、神命明(ミステリマガジンで書評コーナー担当)、といったあたり。総勢100人はいたと思われる。アットホームだが、盛況な結婚式であった。
●式が終わって特に二次会などもないようだったので、いつものようなメンバーでぞろぞろと恵比寿へ移動、お茶でも飲もうとするが、中々入れず、結局ガーデンプレイスのオープンカフェで少し震えながらお茶。
 その後、ビアホールへ移動。
 何も予定を入れていなかったので、何やら定例の会合があるというSF者について高田馬場まで。雑破業さんという人を紹介してもらい、著書をいただく。
 一旦、借りたサックスを返しに三鷹まで行った田中さんが新宿まで戻ってくるのに合わせて、SFマガジン編集長と三人で待ち合わせ、居酒屋で飲む。冷酒は飲むまい、と思ったがうまそうな酒が並んでいたのでやはり少し飲んでしまう。
 記憶はなくさずホテルへ戻る。

【3月4日(日)】
●記憶を保ったまま起き、チェックアウトした田中さんと蕎麦を食って別れる。
 京都から来た相方と駅で待ち合わせ、映画を観る。話題の「アンブレイカブル」である。
 そんなに面白いかあ? というのが見終った感想。ラストは驚きはするけど、期待していたものとはまったく別のところの驚きで、伏線といえるものが何もないから不意打ちなわけで、さほど評価できない。そして何より途中が退屈。ストーリーテリングというものとは無縁の人らしい。「シックス・センス」よりましな気もするが、まあ似たりよったりか。
●相方は別に映画のために上京したわけではなく、『半熟探偵団』完結の打ち上げに参加するために来たのだった。河内実加さんとアシスタントの方々(全員初対面)、そして夫の人と総勢8人で中華を食べる。そういうものなのかどうかよく知らないが、河内さんのおごりである。
 その後、お茶を飲んで解散……したのだが時計を見るとまだ10時。久しぶりにカラオケがしたいという相方のたっての願いにより駅へ向かった河内さん達に連絡、有志を募ってパセラへ。
 パセラにはハイパージョイが入っているという事前の調査ゆえなのだが、ここで陥穽が。すべての集中カラオケがそうなのかどうか分からないが、どう見ても全曲は入っていないのである。ネットでキリンジについては5曲は入っていることを確認していたのに、「牡牛座ラプソディ」と「風を撃て」の2曲しかない。しかもDAMも入っているはずなのに「グッデイ・グッバイ」も見当たらず。ネットで検索して直接番号を入れるという荒技も、独自番号なので使えず。一体どうなっているのかいずれカラオケ番長に聞いておかねばなるまい。ともかく2曲を一緒に歌うが、相方は頻りに「ちがーう!」とダメ出しをしていた。難しいっちゅうねん。
 途中で新譜のところに「アルカディア」を発見、これも歌う。とにかくどれも高いので苦労する。
 終電で帰るアシスタント二人が帰った後も、アニソン縛りの(?)河内夫妻と四人でしばらく歌い続ける。

【3月5日(月)】
●昼間、鴨せいろを食べたがっていた相方といつもの蕎麦屋へ行き、帰京。
●新幹線はなぜか小田原に止まり、おまけに名古屋から各停。「こだま」っちゅうもんがあるのになんでこんなことするかな? 馬鹿にしとる。岐阜羽島の駅に止まるとむかむかするのはぼくだけではあるまい。
●晩飯を食って帰るのに、テレビで見た高野ホリデイ・インに新しくできた回転寿司屋を目指す。なかなかうまいのでまた行こう。

【3月6日(火)】
●留守をしていた間にようやく届いた(新品と交換すると言ってから三週間!)モニターを本体と繋ぎ、少なくとも以前出ていたエラーは出ないらしいことを確認。しかし、何度もやりとりを繰り返したおかげで、cube本体外側のクリスタルと内側グレーの鉄板との隙間に発泡スチロールのかけらが入り込んでしまっており、何とも気持ち悪い。内側の鉄板は特殊な金具で固定されているようなので素人が外せるものではなさそうだ。一体どうすりゃいいのか。
 ようやく使えるようになった……と喜ぶ気にはとてもなれない。この機械を使うということは、今後もソフト等金を必要とするということでもあるし、何かあった時にはアップルサポートに連絡しなければいけないということでもある。
 とにかく最大の希望は、この会社と縁を切って二度と関らないでいられたらということなのだが……。

【3月7日(水)】
●アップルに電話して、一体どのような「誠意ある対応」を考えてくれたかと思いきや、結論は以前とまったく同じ「保証期間の延長」だけだという。
 今のcubeの実勢価格は5万も下がっていて、ディスプレイと合わせればさらに下がる。おまけにほとんど使ってもいないフォトショップのバージョンアップには3万近くかかるというのに……。
 無駄に費やした時間と精神的苦痛を加味すれば百万くらい賠償請求したい感じ。
●以前、喜国雅彦さんが、「ナンバーワンメーカー(車ならトヨタ、バイクならホンダ)は嫌いだからアップルを選んだ」みたいなことを言っていて、ぼく自身マイクロソフトは嫌いだしその時は一応気持ちは分かるなあと納得したものだった。
 しかし考えてみるとマイクロソフトというハードメーカーは存在しないわけで、AT互換機を作っているどのハードメーカーも熾烈な競争にさらされている。競争にさらされず信者に篤く支持されているアップルはいうならば独占企業で、だからこそこんなにもユーザーを無視し切った態度でこれまでやってこれたのだろう。
 マックユーザーの多くが「アップルのサポートはひどいですよ」と口にするのだが、みんな諦め半分で、どうにもならないと思っている口調だ。もしかするとアップルしか知らないせいで、「他のメーカーより少し悪い」くらいにしか思っていないのではなかろうか? もう二十年近くパソコンを使っているし、以前は悪口を言いながらNECのパソコンを使っていたものとして言わせてもらうと、こんな最低のメーカーは今まで見たことも聞いたこともない

【3月8日(木)】
●昨日、とにかく検証の経緯をファックスなりなんなりしてくれと言ったら、「明日また連絡します」とのことだったのだが、今日電話してきて「来週ご返事します」という。「通常しないことなので個人では判断しかねる」というのが時間のかかる理由なのだが「それなら判断できる人を出してくれ」と言うと「わたしが任されておりますので」と言う。あんたそれ矛盾しとるやん。

【3月9日(金)】
●夜中わずか2、3時間ほどの間に一気に三十センチほど雪が積もる。この冬最後の、そして最大の積雪であろう。
●起きたらほとんど融けててがっかりするやらほっとするやら。
●家電リサイクル法の施行を前に電気屋はポスターまで貼って買い替えを促し、売り上げは普段の1.5倍なのだとか。消費税導入前に買い替えよう、というのなら分からないでもないのだが、電気屋も、そこに殺到している消費者も、リサイクル法の導入目的を一体何だと思ってんのかね。

【3月10日(土)】
東海洋士『刻Y卵』(講談社ノベルス)。『Y』の字はアルファベットのワイではなく、中心は繋がっていない。「ア」という漢字だそうなのだが出ないので代用。
 本を見ても何の話かさっぱり見当がつかないので普段はやらないあらすじ紹介。
 幕府軍にじわじわと追いつめられ陥落寸前の城の中で決断を迫られる天草四郎。その傍らにある謎めいた卵形の時計「刻卵」。その時計が天草四郎の運命を告げるはずなのだが……。一方、友人の蔵から出てきた時計のような骨董品の失われたパーツを手に入れるよう頼まれた放送作家は、策を弄して無事それを手にするが――。
 こんな感じでしょうか。
 体言止めの多用や視点の乱れ、くだけた会話文と漢語が入り交じる、ある意味素人臭い文章のようにも見えるのだが、不思議とすっと腑に落ちる。
 ホラー……なのだろうけど、怖いというより居心地がいい。好み。


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