【7月13日(金)】
●東直己『残光』(角川春樹事務所)。
子供を連れて逃げる話だと聞いたので、それは好みの話かもと思って読んだら、全然違った。1、子供との交流に主眼はなく、2、主人公がスーパーヒーローで、3、シリーズキャラクターが一杯出ているらしいが他のを読んでいないためと思われる。
主人公の人間離れした強さにもしらけるが、頭を使うということをまったくせず、結局、一杯いる仲間だかなんだかよく分からん連中の方が頭を使って色々助けてくれる、というのではなあ。
西木正明氏は協会賞の選評で『永遠の森』に対して「前作を読んでいない人にはよく分からない」と完全な勘違い発言をしていたが(どうしてあれに「前作」があると思ったのか不思議)、それはまさにこの『残光』にこそ当てはまる話なのでは?
【7月15日(日)】
●CSで「ヴァンパイア 最期の聖戦」。
カーペンターなのに(だから?)ちっとも話題にならないなあと思っていたが、見て納得。見るべきところなし。最近の低調なカーペンター作品の中でも輪をかけてつまんないかも。
●柴田よしき『淑女の休日』(実業之日本社)。
連作短編集だと思って読み始めたら長編だった。が、細かい謎が一つ一つ解決していくのでどんどん先を読ませる。相変わらずうまい。
【7月16日(月)】
●月崎時央『「少女監禁」と「バスジャック」』(宝島新書)。
精神医療について追いかけているフリーライターが新潟少女監禁事件と佐賀バスジャック事件について書いた本。精神医療の現場にも詳しい人らしく、精神科医とも普通のマスコミともちょっと違った視点から書いている(例えば、バスジャック犯を「なぜ退院させたか」と問うのではなく、「なぜ入院させたか」と問うべきだ、とか)。帯に「事件の全貌!」とか書いてあるが事件そのものについての記述はほとんどないのでそういうものを期待する人は別の本を読むように。
【7月18日(水)】
●京極夏彦『ルー=ガルー』(徳間書店)。
最初二分の一は少女たちの区別さえつかなくて正直ノれなかったのだが、さすがに色々と仕掛けが明らかになるにつれてぐいぐいと読ませる。最後は一気。
結局充分楽しみはしたのだが、気になるところも多い。
同い年の少女たちがみんな何だか似たように見えてしまうのは、キャラ立ての得意な京極さんにも手に余ったということだろうか。静枝と橡の章では年齢も性別も違うせいか何ら問題は感じなかったのだが(橡が木場修のように思えてしまうということはあっても)。
また、「旧来の勧善懲悪」や「二元論」を批判しつつ、物語の面白い部分をそこに頼っていてはいかんのではという気もする。あれは批判じゃなくて、「必殺」好きとしての自戒の念の現れ?
「近未来」小説と京極文体の相性の悪さということもノれなかった原因の一つだと思う。未来のディテールも、現在とは相当断絶した社会形態であるように見えるのに、具体的な描写が非常に少ないのでとうとうイメージがわかなかった。
【7月19日(木)】
●推協理事会のため上京。その前に「編集会議」という雑誌の取材を受ける(e−NOVELSで)。前に見たときも業界人にはなかなか読みどころのある雑誌だなあと思ったものだが、ライターさんも相当詳しく勉強している人なので話しやすい。
●理事会。
【7月20日(金)】
●タワーレコードで色々見てたら「エスレフノック」(converseを逆読みしたのだとか)とかいうインディーズバンドがふと目に止まり、試聴したらちょっと琴線に触れたので購入。有名なアーティストならまずそういうことはないのだが、インディーズだと「一期一会」的な感じで買っちゃいました。
帰京。