【8月13日(月)】
●戸梶圭太『the TWELVE FORCES』(角川書店)。
某電波系作家が絶賛していたので初めて読んでみました。
なるほどなあ。確かに妙な面白さはある。しかしこれは……一般受けはせんと思うなあ。
最初から最後まで短いエピソード、キャラクターの面白さの積み重ねで、血湧き肉躍るものになりそうなストーリーをオフビートにオフビートに語るのが特徴。スラップスティックとかコメディになるわけでもないので、全編ニヤニヤ笑いのまま終わってしまう。
●田中啓文『ネコノメノヨウニ…』(集英社スーパーダッシュ文庫)。
あとがきにもあるとおり、よくまあこんなものをcobaltに書いとったなあと呆れるやら感心するやらの短編集。「異形」だろうが「cobalt」だろうが関係ないのね。
●小泉首相、意表を突く靖国参拝。
みんなどうして8月15日という日付にこだわるのか不思議。いつ行っても一緒やん。なぜ日付をずらすと「失望する」のか教えて欲しいものだ。15日に行くという「示威行為」を必要としてるってこと?
小泉人気のせいか日の丸を振ってる野次馬が大勢いたが、天皇誕生日ならともかく、ああいう場にふさわしい行為なんでしょうか? 「小泉がんばれ」ってマラソンの応援みたいな感じ?
【8月14日(火)】
●有栖川有栖『暗い宿』(角川書店)。
火村ものの短編集なのだが、講談社の国名シリーズとはひと味違ったものばかり。語りをどれも定型から崩しているため、どこへ転がる話なのか見えず、短編らしい楽しみが味わえる。キャラ萌えファンにはあまり楽しくないのが多いかも。
【8月15日(水)】
●J・K・ローリング『ハリー・ポッターと賢者の石』(静山社)。
しばらく前に買ってあったのだがようやく読んだ。
……まあ、面白い。
こういう児童書の名作といわれるものには、読みやすい中にも深みを感じるのが普通だと思うが、これに関してはそういう部分ははっきり言ってない。スピルバーグ的な薄っぺらいエンタテインメント。成長もしないし、まわりの人物像も一面的(一ヶ所だけ、面白い仕掛けがあるが)。
両親を失い、自分の才能を知らずに育てられていた恐ろしく強い(らしい)魔法使いの少年――この設定からすぐ思い出したのはエディングスの「ベルガリアード物語」だが、そりゃもうあっちの方が断然面白いのは間違いない。読みやすさでは負けるんだろうけど。
【8月16日(木)】
●大倉崇裕『三人目の幽霊』(東京創元社)。
名探偵が最初から答を知っているとしか思えない作品は多々あるが、これほど「推理」の欠如した探偵も珍しい。明かされる真相には面白いものもあるのだが……。
トリック(狭い意味で)のある話の場合、そのトリックが唯一無二のように見えれば演繹的過程がなくとも納得する場合があるが、特にこのような「日常の謎」「人間の謎」みたいな話では無数の可能性がありそうに見えるだけに、最低限の論理は欲しい。
改めて北村薫の偉大さを思う。
【8月17日(金)】
●明日からSF大会なのだが、新幹線は混みそうだし、昼早くから打ち合わせもあるので前泊することに。
秋葉原のホテルをネットで予約したらえらく安い金額で取れたのはよかったのだが、秋葉原って夜食事できるところが少なくて、蕎麦なら大丈夫だろうと思ったらまずかった。しかも二人前頼んでやんの。
【8月18日(土)】
●石田衣良『池袋ウエストゲートパーク』(文春文庫)。
何となく勝手に、やくざ以上に怖い若者たちの様子をクールに暴力的に描いた「文芸」っぽいものだと思っていたのだが、全然違ってました。普通のエンタテインメントなのね。
変な期待(予想)をしていたせいか、主人公の驚くほど普通のモラリティにちょっとがっかり。結構熱いし。回りの連中も、「え? 本物はもっと壊れてるんじゃないの?」と思うのは偏見でしょうか。
すごくかっこいい、とは思わないけれど、こういう若者たちを描いてカッコ悪くならないでいるのは多分恐ろしく難しいことだと思うので、やはり注目すべき才能なのでしょう。
しかし、「海外作品」とひとくくりにしたものを説明抜きで上位に置いてしまっているこの解説は一体なんなんでしょう。大体「海外」ってどこやねん。
●昼、井上夢人さんと落ち合い、アスキーとの打ち合わせ……というか顔合わせ。
●夕刻、SF大会会場である幕張メッセに到着、まずは田中啓文率いる「鮭と鱒の日々」+田中哲弥、津原泰水というセッションバンドの演奏を聴く。井上さんはSF大会初体験なのにいきなりこれでは大いなる誤解を生みそうだなあと思うが仕方がない。
【8月19日(日)】
●夜中、田中啓文バンドの面々が宿泊しているホテルへ行き、サックスのU氏を囲んで盛り上がる。死ぬほど笑った。あんな人がおるんやねー。そうか、犬かー。
●明け方会場に戻ってビデオを見たり。
●午後、「三人のゴーストハンター」企画。まあ、予想通り。
●大勢で近所のホテルでお茶。
●関西勢+南智子の面々で東京へ向かった……はずが、なぜか途中で道をそれ、とんでもないところに運ばれていたらしい。生き馬の目を抜くっちゅうのはこういうことか。東京は怖いとこや。
おかげで新幹線を一時間遅らせる羽目に。ああしんどかった。