ごった日記2001 8月21日〜31日


【8月22日(水)】
有栖川有栖『作家小説』(幻冬舎)。
 有栖川さんには「登竜門が多すぎる」(『ジュリエットの悲鳴』所収……かな?)という作家もののケッサクがあるが、ああいったバカなノリのものからサイコスリラーまでとにかく作家ものを集めたノンシリーズ短編集。「夢物語」には結構しんみり。

【8月24日(金)】
●CSで「海の上のピアニスト」。
 船の中で捨てられ、一度も陸に降りなかった名ピアニストという設定がやっぱり素晴らしい。どうしてピアノを弾くようになったのか、どうしてそんなにうまいのか、という説明が何にもないとか、あれだけ話題となった勝負をしていながら歴史に名前がないのはどうしてなのかとか不思議なことは色々とあるが、ファンタジーだからいいのだ。
 しかしティム・ロスって「ライアー」でもそうだったが、なんか心の一部が欠落したような役にぴったりだね。これって演技?

【8月25日(土)】
●人形シリーズの表紙、イラストをずっと描いてくださっている伊藤正道さんのホームページを発見! 早速メールを出してリンクさせてもらうことにしました。

【8月26日(日)】
池上永一『レキオス』(文藝春秋)。
 よくまあこれだけハチャメチャなものが書けると感心する。天性のものなのか計算の上なのか。こりゃまとまるわけないわと思ったら一応収束してしまうのだから不思議。なんともはや。
 帯には「マジックリアリズムの最高傑作」と書いてある。前から「マジックリアリズム」という言葉の意味はつかみ切れていないのだが、こういうものを指しているのではないのは確かだと思う。……それともこれがそうなのか? そうなんか?

【8月30日(木)】
牧野修『呪禁官』(ノンノベル)。
 ノンノベルらしくない装幀に驚く。カッパ同様イメチェンを計っているのかも。
 で、中身ですが、本人が「二十一世紀は泣かせに行くよー」と言っていただけあって相当ストレートなカタルシスを目指して突き進む話になっている。でも昔もそういう面はあったから『王の眠る丘』とか『リアルヘブンへようこそ』あたりとそんなに変わってるとも思えない。少し残虐描写が抑えめになってるかな、という程度。
 ストーリーは……これが驚いたのが、ほとんど『ハリー・ポッターと賢者の石』なのである。ということはこれも受けるということ? それともパクリと思われるか?(そんなはずはないのだが)
 ハリー・ポッターが努力とか成長、そして敗北といったものと無縁なのに対し、ギアはきちんとそれらを踏まえてくれるので、子供に読ませるなら絶対こっちですよ、皆さん。
 タイトルが『呪禁官』のくせに呪禁官にならずに終わってしまうんだから、こりゃもうシリーズ化するしかないわな。

【8月31日(金)】
北村薫『リセット』(新潮社)。
 エンタテインメントというよりは、何かすごく個人的な要請によって書かれた私小説か何かではないのかという気がする。
 ありきたりなストーリーではあるのだが、乙一あたりが百枚くらいで書けば泣ける話になったかもしれない(乙一ならもう少しひねると思うが)。普通なら書くはずのことをほとんど書かず、その代わりに時代時代の風俗、生活、心情を細かく細かく書いてある。『スキップ』も期待したのとは相当違っていてがっかりしたものだったが、それ以上に理解できない作品。


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