京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(2004年8月号 掲載)


おすすめの本

町田おやじの会著 2004年『「障害児なんだうちの子」って言えたおやじたち』

(ぶどう社、\1500)

 トライアングルの皆様、ご無沙汰しています&初めまして。立命館大学(休学中)の中根成寿と申します。今回は一冊、本を紹介させてください。

 ここ数年、障害をもつ子どもの父親への注目が集まっています。京都でも、あちらこちらに「父親の会」が誕生し、父親同士が集まって勉強も飲み会も「同時進行」で開催されています。

 とかく、障害をもつ子どものいる家族では母親が元気に見えがちです。でも父親だっていろいろ考えているし悩んでもいる。それを相談できる、はき出せる場所が欲しい、もっと制度や今後の生活について勉強がしたい、という切実な願いが父親の会を増やしているようです。でも母親たちだけの場所はちょっと恥ずかしい…そんな微妙な立場の父親が手記を書いたそうです。

 タイトルを見てわかるように父親にとっては「うちの子、障害児なんですよ」と周りに打ち明けることも一大事です。善意の気持ちでも余計な気を遣われると傷つく、職場での出世に不利にならないか…。障害を理解するスピードも方向性も母親と父親では異なります。母親と必ずしも同じ道を歩んではいないようです。

 「お父ちゃんの役目はお金を稼ぐこと」と「お母ちゃんの役目は子どもの面倒を見て家事をすること」という性別による役割分業は、障害をもつ子どものいる家族ではよりその傾向が強くなりがちです。お互いがお互いの仕事しか見えなくなって共感や理解が減っていってしまう…効率を追求した役割分業にはそんなマイナス面があるのかも知れません。もっと大きいマイナス面は、父親が「男らしさの鎧」に閉じこめられてしまうことです。「強くあらねば」「男である自分がしっかりしなければ」という「弱さ」をはき出せない状況を自分で作ってしまうのです。

 本当は強くない、不安でたまらない、自分は子どものことをこんな風に思っている、今後の家族についてこんな風に考えている…普段は聞けない、聞こえてこない男たちの声がちょっとずつ、社会に広がっている、そんなことを感じさせてくれる本です。
(なかね なるひさ)naruhisa@pob.org   


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