京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(2012年8月号 掲載)
知的障がい者オープンカレッジ「ふれあい大学」について

巽 純子

 娘、祐希は、特別支援学校を卒業した2008年から2011年までの4年間、龍谷大学短期大学部で開講されている知的障がい者のための市民大学講座、通称「ふれあい大学」に通いました。大学ですので、夏休みや冬休み期間はお休みで、通年で14回分あり、だいたい月2回程度開講されています。私は、仕事の関係で最初の年の開講式と毎年開催される発表会にしか行けておりませんが、本人はガイドヘルパーさんに助けてもらって4年間皆出席しました。

 ふれあい大学で開講されている科目は、知的障がい者向けの教養講座と選択科目として「音楽」と「お芝居」があります。通っている知的障がい者を「ふれあい大学生」と呼びます。ふれあい大学生は、教養講座とどちらかの選択科目の2時限に参加することになります。

 龍谷大学の学生は、ふれあい大学生1人に対して通常2人配されます。学生の方は、このふれあい大学課程が「社会福祉特殊講義」となっていて、障がいのある人を支援しながら、一緒の教室で学びます。祐希は、音楽が好きで4年間とも音楽を選択しました。

 祐希は、中学までは地域の学校の通常学級で学んできたので、特別支援学校高等部に行くようになってから、一般の同じ年ごろの子たちと触れ合う機会がなくなり、少しさびしい思いをしていました。特に、高等部卒業後は、女性だけの作業所に通所することになり、男の子が好きな祐希にとってさらに残念な思いがありました。しかし、このふれあい大学で同じ年ごろの若者たちと一緒に学び、一緒に音楽活動をすることができて、毎回ものすごく楽しみにしていました。前の晩は着る服を選んだり、時にはラブレターを書いたり・・・。
 また、行き帰りについてくださるヘルパーさんと一緒に電車バスに乗って話をするのも楽しみだったようです。

 私は、授業を見る機会は残念ながら全くなかったのですが、家で祐希が習ってきたことを教えてくれるので、知的ハンディがあっても学びってすごいなと思いました。たとえば、手話の授業を受けてきたときは、私に「私」「愛す」「空」とかを教えてくれました。救急救命のときは、救命の動作をやってみせてくれました。音楽は一層楽しかったようで、発表会に向けてよく課題曲を歌っていました。

 また、このふれあい大学では、龍谷大学の行き届いた配慮があって嬉しかったです。というのは、一般大学生と同じ写真入りの学生手帳がもらえることです。本当に大学生になった気分でした。また、音楽の担当の先生は年賀状を毎年下さって、電話をかけても祐希のことをちゃんと把握してくださって対応をしていただけました。

 ふれあい大学は毎年修了式を行い、1年だけの通学も可能です。通学は4年まで延長ができ、それ以上は通えません。4年間で本当の卒業式になりで、今年はもう行けないのが残念でした。ところが、5月に同窓会の案内がきました。どこまでも行き届いた配慮に脱帽です。祐希は久しぶりの同窓会を楽しんできたようです。

 このような大学の取り組みは、若い知的障がいを持つ者にとっては、なかなか一緒に同じ場にいることが少ない同じ年齢の学生たちと、場を共有し、同じ課題を行う貴重な機会を提供するものとして非常にありがたいです。発表会のときは、全てのふれあい大学生の目は生き生きと輝いていたし、よろこびに溢れていたように思います。祐希も一昨年の発表会はキーボードを演奏させてもらったり、昨年はギタレレを持参して演奏しました。本人は、舞台でみんなと一緒に演奏できてとっても満足していました。

 また、一般の大学生にとっても、このような知的障がいを持つ人たちとのふれあいは貴重な体験だったようです。一般学生の感想を見てみると、

・私は今まで障がいのある人を「この人は障がいを持っているんだ。」と障がいからその人を見ていました。でも、その人自身は障がいがあってもなくても皆たいせつにされなければならない存在であり、障がいを悪い個性として見ることは絶対にいけないことだとわかりました。

・今まで「知的障がい」というものを重い障がいだと思っていたけれども 全くそんなことはなくて、普通の人よりも周りから吸収するものを素直に全てを受け止めてしまうことなのだということが分かった。

・障がい者の方だけではなく、自分にも嫌な部分とか不便だと思うことは誰でも持っていると思う。それを理解して、だから、障がいを特別なものと決め付けるのではなく、一緒に自分の苦手なことや足りない部分を共有していくことが必要だと思う。

・ふれあい大学で多くの受講生と出会い、一緒に取り組み、共に過ごした時間が受講生から私に与えてもらったエンパワメントだった。

・私がこの1年間を振り返って感じたことはまず一番に「とても楽しかった」ということです。そして、Aさんというペアにとても感謝しています。

というように非常に肯定的にとらえていますし、また人権の講義をいくつ聞いても体得できない実感としての人権尊重を学んでいるように思います。

 本当に4年間ふれあい大学で学ばせてもらってよかったと思いますし、この取り組みをもっと全国に広げていってほしいなと思いました。


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