京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(2015年8月号 掲載)
〜トラフェス・ポスター制作にあたり〜

 トラフェスのメインポスター、チラシ制作を担当しました古川勝也です(古川喜大の父)。いきがかり上担当させていただいたのですが、いつもお世話になっているトライアングルに微力ながらお手伝いする事となり、イベント自体へも自ら関われるのは楽しくとてもいい経験であったと思います。
 過去、多くのポスター・デザインを手がけてきましたが、ダウン症関連は初めてで、それは表現者としての私の大きなモチーフでもありますので今回は特別な思いで制作に臨みました。
 
 ポスター面は、トライアングル30年の偉業を讃え、ダウン症をもっと知ってもらうメディアとするため、私たちのダウン症児を主役とした顔写真を所狭しと画面全体に一同に集める構成にしました。ダウンだらけというやつです。
 募集した子ども達の顔は予想どおり活力にあふれた規格外の表情でした。はみ出すパワーが見る者の心の奥底にまで入り込んでくるようです。誰が言ったのでしょう、「なんでみんな同じ顔してるんや」などという世間一般の偏見がこれを見たら間違いであるのもわかります。ひとりひとり違う個性、それぞれの愛され育った心豊かさが表情に出ています。
 
 他方、事務局の方やお母さんたちで「もっと可愛い顔で!」「変顔はやめてほしい!」という声、「キモイ!」「コワイ!」、写真送った後で「やはり辞退します・・」ポスター校正があがってから「こんなんじゃ応募するんじゃなかった!」「この顔とこの顔とこの顔とこれ…カット!」再三再四、検閲の嵐が吹き荒れましたが、私としてはすでにこの波紋こそがポスターで表現しようとしている根幹でもあり、これは成功したという確信を得ました。
 メディアとして広まるためには見る側の一瞬の落差やどよめきが必要です。日頃から世の中の人が潜在意識も含めて持っている、心になんとなくある未解決な価値観や概念を瞬時に呼び起こし「何これ?」「これはけしからん!」あるいは「お、面白いやん!」「なんか楽しそう〜」と見た人がそれぞれ物語をつくってくれなければいけません。その渦巻きこそが表現のリアリティーというものです。
 
   「ダウン症だからこそ可愛い顔で・・」ばかりではいつまでたっても表象的な問題に終わってしまいます。彼らを侮ってはいけない。表面的な美や醜などはるかに超えたところに彼らは存在しているではありませんか。彼らは健常者の私たちなどには無いすごい力があります。他の子ども達に比べてできない事がたくさんあるとしても、周りの人々を巻き込み、いつの間にかそれらの人の価値観さえ変えさせる。(ダウン症児が変えたろとは一切思ってないのに!そこがまたスゴい)
否、なにもスゴいだけでなくまったくダメなところもいっぱいなのですが…。
 人は一日たりとも自力だけで存在できない。他の中にあればこそ生きられる、能力があるとかないとか、健常者側の論理を超えた新しい未来モデルを21トリソミーはすでに体現しようとしています。
 その意味でもメインポスターの表現はあえて正も負も内包し彼らのエネルギーある魅力を前面に押し出しているのです。
 
 裏面では1日楽しく過ごせるようなイメージで催しを配置しました。
みなさん10月31日(土)はいろんな方をお誘い合せの上、お運びいただき一緒にトラフェスを祝いましょう!
 
美術家・臨床美術士  古川勝也(MASANARI HURUKAWA)
 

 

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