京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(1997年8月号 掲載)
講演を聞いて


谷口さんの「障害をもつ人の素敵な親になるために」
知的障害を持つ子供達の自立心を育むには・・・と言うお話をお間きして

柵木郷子   
 去る6月29日(日)、障害者自立生活問題研究所所長の谷口さんのお話をお聞きしました。

 その前日は、台風8号の影響ですごい風雨の日で谷口さんはその日も奈良方面へ行かれていて、上から下までずぶ濡れになりながら移動されていたそうです。翌日は私達の為に出向いて下さり、貴重なお話を沢山して下さいました。ボランティアさんと共に車椅子でおこし頂いた谷口さんは、とてもパワフルでまるで寄席を聞いているかのような話っぷりで、私達を引き込んで行かれました。

 プライベートな事としては、生まれてから脳性マヒと診断されるまでの事、少し大きくなりロバのパン屋さんがやって来るのでどうしても買いに行きたかった事、兄弟関係、学生時代の事、また、現在は11歳年下の奥様がいらっしゃる事、等を話して下さいました。

 更に、障害児(者)に関した沢山のお話の中で、私が一番印象に残ったのは、自分から発する自己決定を成長させ、自立心を育てていかなければいけない。例えば、日常生活の中においては、子供に「はい、おやつですよ」と目の前にクラッカーを出すよりも、お皿の中にチョコレートや、おせんべい等を並べて、子供自身がどれを食べるか選択させ決定させる。もし、決定したものが美味しくなければ次からは違う物を選ぶし、そこで考えるという行為をする。又、親が転ばぬ先の杖を沢山ついてあげるのではなく、命にかかわる危険なこと以外はできるだけ失敗を経験させてあげると言うことでした。親のほうは忙しかったり、手っとりばやかったりで、ついついあれこれと子供の意思を聞かずに色々な場面で決定してしまってるのではないかと反省してしまいました。

 この事は、子供たちが将来自分の人生を選んでいく上でも非常に重要な事だと思いました。
 谷口さん自身これまでの人生を自分で決定して生きてこられたので、あの様に生き生きと輝いていらっしゃったのだと感じました。

 私達の子供達も元気に、受け身ではない人生を送って欲しいと思いました。そのためには、親も成長しなければいけない。谷口さんが言われたように、まず「子供を叱るのを1か月やめてみて下さい。子供の状態がとても良くなります。3日ぐらいで親の方の禁断症状が出てきますが・・・」という事を聞いて私自身、5日間ぐらいは我慢してみようと思った1日でした。

 素敵なお話をありがとうございました。



総会での講演会「障害をもつ子ども達の素敵な親になるために」

谷口明広さん(自立問題研究所)のお話を間いて


巽 純子   

 まず、何より残念だったのは、参加者が16、7人という少なさだったということです。終わった後、「なんで、こんな良い話を聞きに来ないの?」と憤慨しました。「みんな、素敵な親にならなくてもいいの?」(この話に限らず、総会の講演会ではとっても良い話が多いのですから、みなさんにこれからは参加するようにお勧めします。)
 とはいうものの、私も聞くまでは、障害の種類が違うので(谷口さんは脳性麻痺で、車椅子生活をしておられます)、知的障害者のことについては詳しくないのでは? と思っていました。これは、とんでもない私の思い上がりと偏見でした。

 谷口さんのお話は、明るくて、自然でした。障害者で社会に参加しているまたは、それなりの仕事を持っていらっしゃる人には気負いがあって、いかにも「がんばってるんだぞ」というものがあるのかなと思っていたのですが、本当に車椅子であることをのぞけば、ごくごく普通なのです。関西弁(京都弁かな? 私は関西の出身ではないので違いがわからない)でジョークもうまいし、知らないうちに話に引き込まれていました。

 内容は、ご自身の体験から、京都では障害者が生まれたことに対して、恥じるところがあり、子どもの頃、外に出してもらえなかったこと、障害児に良い環境をと、大阪へ一家で移ったりしたこと、母親がべったりしすぎて自立のさまたげになりやすいとか、など、あまり明るくはない話なのですが、さらっとこだわり無く話されたのには感心しました。

 我々親には、過保護になりすぎてはいけない、親は子どもと一体感をもちすぎてはいけないと、それは自立を妨げるといわれました。きょうだいとの関係にもふれられ、きょうだいに過度の期待や負担をかけるなともいわれました。私など、すぐ上の子に「ゆきのこと、ちゃんと見てやってや、あんた、おねえちゃんなんだし。」などと言ってしまうので、ズキッときました。そうです。きょうだいにはその子の人生があるんだし、別個に考えなくてはならない、と思いました。大変参考になりました。

 また、自立問題研究所を設立されている関係上、知的障害者の親御さんからの相談も受けていらっしゃるようで、今の知的障害者のための養護学校などの問題点をよく御存知でした。つまり、現在の養護学校ではその子その子に応じたカリキュラムはなく、その子の適不適にお構いなしに単純作業の職業訓練(共同作業所、授産施設などで働くときに都合がよいように)のみに終始している、各人に応じた仕事というものがあり、生産的でなくても(音楽でも、絵でも)その子の能力を開発しようと言う考えがないという話もされました。私は、「そうだ、そうだ。」とここで、すごく共感してしまいました。単純作業しかやれないからと言って、ロボットみたいに管理された生産工程で働かされるのは人間的ではありません。

 谷口さんは、いろいろと他にもお話になりましたが、自立にむけての「個人別プログラム計画」についても紹介してくださいました。しかし、日本では、このようなプログラムをたてようにもアドバイスをしてくれる人、機関がないのが問題だと思いました。

 最後に障害者自身から見た福祉のサービスについても少し話していただきました。障害者の自立に関しては、障害者自身が福祉のサービスを気兼ねなく使えるように制度を整備充実する必要があると、そのためには、是非是非、谷口さんのように当事者がどんどん発言していくことが重要なのだと思いました。

 他人に頼むことは恥ずかしいことでも何でもないのです。遠慮無く頼み、むしろ、介助させてあげるという気構え、そして、頼まれる方も良いことをしたと、気持ちが良くなるという、そんな世の中になればいいのに、と思いました。

 ともかく、用意された講演時間が短く感じた良いお語でした。


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