京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(1997年8月号 掲載)
映画『八日目』

佐々木和子   

 現在、京都みなみ会館で上映されている「八日目」という映画は、ダウン症の青年が出演しているということでトライアングルにも試写会の案内があり、見た人の反応も賛否両論でした。監督のジャコ・ヴァン・ドルマン氏がインタビューの中で、「映画の素晴らしい点は、それを観る事によって観客の方々が自分自身の心の奥底にある感情に焦点を当てることが出来ることです。映画は埋もれた感情を呼び起こします。」と答えています。映画を観たいと思うのも、まさしくその辺りが理由でしょう。だからこそ、いろんな感想があり、おもしろいのです。

 私は、この映画は、風景、状況、心もよう、ストーリー性、どれをとっても、とてもよく描けていると思いました。我が家の息子が思春期、真っ只中にいることもあって、ジョルジュとオーバーラップして、どのシーンを見ても涙したり、笑ったり、ただ、ただ、パスカル・デュケンヌの演技に引き込まれてしまいました。この映画はダウン症の青年を描いただけの映画ではないので、全体的なストーリーの流れをとらえなければ、映画としてのおもしろさを見失ってしまう恐れがありますが、ダウン症児を育てている親の立場からすれば、複雑なものがあるかもしれません。私はジョルジュとアリーのからみも、とても内容のあるものだったと思います。

 最後の結末も、確かに悲しい結末ではあったけれど、あれ以外の結末はどれも嘘っぽくなりそうで、私には取り立てて不快感はありませんでした。

 監督からのメッセージ、
 “私はこの映画で、一般に「正常」と思われている世界と「そうでない」世界との二つが存在するという認識が崩れていく様を描きたかった。映画を通して、私達「そうでない」と思われている世界には、我々には備わっていないものがあることに気付くだろう。作品の中では、一見、不快なものや、当たり前と思えるようなものの中に、美しさがある。この映画によって、人々が二つの世界の多くの相違点を通じて、その世界に対して、今までとは違った視点、そして新しい世界観を見いだすことで「愛」というものの大きさに気付いてほしい。”

 私には、監督の意図するところが十分に感じられる映画だったと思うのですが・・・。


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