1998年7月18日 日本産科婦人科学会長殿 理事会各位 佐々木和子(京都ダウン症児を育てる親の会) 貴学会は、去る6月27日、受精卵遺伝子診断の臨床応用を承認されました。 この件に付き、貴学会は「情報の公開」と「意見の募集」をうたい、3月14日、6月10日の2回、公開討論会を開き、女性団体や障害者団体から多くの問題提議がありました。また、1997年度倫理委員会報告に対する意見も募集し、これにも多くの意見が寄せられています。私たちも意見を提出しましたが、何ら、回答をいただいておりません。 にもかかわらず、6月10日の討論会からわずか2週間程で倫理委員会答申を承認し、臨床応用を決められました。 ということは、討論会で提議された問題も、寄せられた意見についても、公開されることもなく、十分な検討をされないままの決定であると思わざるをえません。このことは多くの市民を裏切る行為であり、貴学会の社会に対する責任感の欠如を感じます。 今回の体外受精の適用範囲拡大は、今まで以上に人間の生命の始まりに手を入れることであり、生命の質を選別することで、それを「希望者がいる」ことで施したならば、今後も先端医療技術は希望者のもと、際限なく導入されていくことになります。 これは、自然の中で他の生き物と共存している人間という一つの生命体でしかない私たちがしてはならない行為です。 受精卵遺伝子診断の臨床応用承認に断固、異議を唱え、撤回を要求いたします。 寄せられた意見すべての公開と、審議過程、内容の公開を要求します。 私たちの提出した意見書に対して、貴学会の見解を示されるよう要求いたします。 |