京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(2002年12月号 掲載)

CAPワークショップに参加して

山本秀子   

 久しぶりに会報に登場します。みなさん、お元気ですか?
我が家の慶太郎も15才、中学3年生になりました。毎日、地域の育成学級に通っています。10分くらいの道のりを、トラックを見たり、パン屋のドアを見たり、走る生徒を見たりと、立ち止まる事が多く、30分くらいかかって学校に着く様です。たまに遅刻はするものの、ひとりで通学してくれるので、ずいぶん楽になりました。あいかわらず、ドアとティッシュに執着していますが、ビデオを見たり、お姉ちゃんのCDを聞いたり、スイミングにも行ってるし、慶太郎なりに楽しい毎日を送っている様です。

 さて、今回は先日参加した、CAPワークショップについてお話しします。
CAPって、何? ワークショップで何やろ? と何の知識もないまま、用事もないし、子どもの料理教室はあるし、まあいいか、という軽い気持ちで参加したのです。それに、10時から2時半までかあ、長いなぁ‥‥なんて思いながら‥‥。

 慶太郎をボラさんにお願いして、部屋に入ると、「子どもの頃のあだ名を書いて」と言われ、ちょっとびっくり。みんなそれぞれに、いつもと違う名札をつけています。そのあだ名のひとつずつに大笑い。でも新鮮な始まりでした。講師の3人も胸に、ひなちゃん、きぬちゃん、なんぶちゃん、と名札をつけています。

 最初に『権利』という言葉を学びました。人には、安心・自由・自信、という3つの権利があり、この権利を奪うのが暴力だというのです。権利を奪われるとイヤな気分になり、心に大きな傷がついてしまいます。ここで、今まで『権利』なんて事を考えた事もなかった私ですが、「あー、なるほど」と、じょうずに説明してもらって、わかったのです。幸せに過ごす為にとても大事な事なんです。あたりまえの事なのに、あらためて教えられました。

 それから、ひなちゃん、きぬちゃん、なんぶちゃんによるロールプレイで、小学生になります。私たちも小学生にもどって、考えたり、意見を出し合ったり、又、ロールプレイに参加したりしているうちに、まるで、小学校の学級会の様に笑ったり、はしゃいだり、考えたり、忘れていた気持ちがよみがえった様なひとときでした。そして、『権利』を守る為には、「イヤ」と言えるし、「逃げる」事もできるし、他人に「相談する」事ができるよという、これまた、あたりまえの事を学びました。

 午前中のしめくくりに、自分を守る為の『特別な叫び声』の練習をしました。おなかの底から大きな声を出すのです。「キャーッ」という声はかえって相手を興奮させるので、よくないとの事でした。それに、後ろから顔を手で押さえられたら、相手の小指を1本引っ張るといいそうです。これは覚えておいたらいいと思います。『特別な叫び声』も、練習しておくといいですね。とても大きな太い声が出ておどろきました。隣の部屋の子ども達もおどろいた事でしょう。

 お弁当の最中も、色んな話をしました。午後からは、CAPの基本理念である、エンパワメントについて聞きました。これは、子どもの力を信じて、権利意識を育てるという事だそうです。ここで、「イヤ」「逃げる」「相談する」という事を子どもに教えるのです。他人にイヤな事をされても、「イヤヤ」と言えない子どもがたくさんいるそうです。そして、絶対にあってはならない性的虐待も、3人〜6人に1人という高い割合で起こっているそうです。本当に許せません。こうして、多くの子ども達が実際に暴力にあい、権利を奪われています。権利を守る事ができたら幸せですが、奪われる事は不幸なのです。不幸にならず、毎日を楽しく過ごす為に、CAPは必要なのだと感じました。

 あっという間に予定の時間は過ぎ、1時間のオーバー。それでも、話題はつきず、おしみながら閉会しました。 何の知識もなかった私が、CAPの必要性を強く感じた一日でした。この大切さをうまく伝えられないのが、とても残念です。すべての人に、ぜひ、このプログラムに参加してCAPを体験してほしいなと思います。この日は、あらゆる暴力に対抗して、地道に活動を続ける3人んお素敵な人たちに出会えた一日でもありました。
いい話を聞けて、得をした気分で岐路につきました。


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