京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(2004年12月号 掲載)
トライアングルのみなさんへ
CAPワークショップを終えて

アムネスティ156Gぼうしの会 にしかわひなこ

 晩秋の京都の観光名所は、ひきつづき多くの人でにぎわっていることと思います。みなさん、その後もお元気ですか?
さる10月24日のCAPの大人ワークに続いて、11月3・6日には子どもワークをさせていただきありがとうございました。自分たちの根っこを問われる思いで少し緊張して当日を迎えましたが、参加のみなさんがあちこちから絆をたぐり寄せるように集まって来ていただいて、「11人の若者たち」に出会わせていただきました。2日間の貴重な休日を、CAPに使っていただいたことを感謝しています。

 進行の様子の細かいところは、ここに書ききれませんが、子どもたちは初めてのワークショップにもかかわらず、温かく受けとめてくれ、劇をはじめいろんなアクティビティにもしっかり参加してくれました。特にそれぞれの子どもの持つ観察力には、あらためて感服しています。 あたりまえのことですが、目の前のわたしたちのことを受け入れていくのと、ワークへの参加の様子は比例していきます。彼らはこちらが手渡そうとする「もの」ではなく、「人」や「関係性」をじっと注意深く見ています。また、ふだんから多様なボラさんたちと活動しているので、初対面の緊張がスムーズに溶けていく人が多かったことも、今回の特長でした。わたしたちにとっては、事前の打ち合わせで得た情報やイメージが大きな支えとなりました。
 学年も地域もバラバラの子どもたちが、つながりあっていける機会も貴重であると感じました。ボラさんとマンツーマンという出会いと並行して、子ども同士のつながりもより温めていけたらいいなと思います。
 子どもたちの部屋の外で長時間待ってくださった周囲のみなさんの思いにも励まされながら共に過ごしたワーク。2日目の最後には、それぞれにやさしいハグをしてくれた11人の若者たちでした。一人一人が胸から離れません。今後もより大切に、共に生きていきたいです。

 さて、CAPというのは予防注射のようにはいきません。わたしたちのような「第三者」の者から発信されたメッセージや言葉を、それぞれの子どもの日々に取り入れていってもらわねば、身につきません。人間の想像力で成り立つ「人権」というものは、こころのありようでもあります。「こころとは人と人の間にあるもの」とある精神科医が表現されたように、「あなたを大事に感じてここにいる」という日常の関わりが、その子の「安心」「自信」「自由」の人権を支えています。
 そこで、保護者のみなさんにCAPの復習として、ぜひ実践してほしい例をお伝えしますのでよろしくお願いいたします。この中のいくつかでも、機嫌のいいとき、あるいはなにか不安があるようなときにも練習してみてください。

☆ 練習としての例
  • 「わたしには大事な三つのけんりがあります」と確認しあう。
  • 「安心」「自信」「自由」を声をだして言う(動作をつける・歌も可)
  • もし、いじめられたり、いやなことを言われたりしたら、「いや!」「やめて!」と本気で言っていい。「いや!」と手を前に、声を出す練習をする。
  • 「いや!」というのを手伝ってもらえる人、をいっしょに考える。
  • 特別な大声をおなかから出す練習をする。(仰向けになって声を出しながら軽くお腹をおさえあったりして、楽しくやってみる)こわくなったら声をあげて「にげることができる」と励ます。
  • 相談の練習を、ごっこのようにやってみる。「よく話してくれたね、うれしいよ」「CAPでならったね」「けんりをよく覚えていたね」などの言葉を入れる。「どうしたらいいか、いっしょに考えよう」で終わる。 劇なので、パチパチと手をたたいて終わるようにしたらよい。

 上記を参考に、いろいろ応用してくださって結構ですが、くれぐれも点検や強制ではないようにお願いします。復習用の絵本として『あなたが守る あなたの心・あなたのからだ』(童話館)も参考にしてみてください。 大切なのは日常生活のなかでCAPのメッセージ「安心」「自信」「自由」を会話の中に入れること。子どもの気持ちを知り、その表情やからだごと受けとめ聴くことです。「○○さんは、世界でたったひとりの○○さん。どこをさがしても同じ○○さんはここにしかいません。だからとっても大切な○○さんです。○○さんのからだもこころも、○○さんだけの大切なものです」というメッセージを、どうか、目の前の子どもと、そして自分自身にもくりかえし読み上げてください。そして大人も子どもも、困ったときしんどいことは、自分ひとりでかかえこまないことです。自分で自分を助けるために、だれかに話すことが役にたちます。
 「権利意識を伴わない護身術」は、なかなか身につきません。そして「かけがえがない」と思うまなざしを注がれない状況で、権利意識(自尊の心)は育ちにくいです。そして、そのまなざしは、多様なほどパワーを増すと思います。トライアングルのもつ魅力と可能性はそこにあると思います。

 イラク戦争がますます泥沼化し、日本は自衛隊を正式に軍隊として位置づける流れにあります。戦争という暴力を容認する社会において、子どもや女性への暴力がなくなることはありません。大きすぎる政治問題に市民は無力感もあって、あまり関心を持ちません。でも、社会のありようは目の前の子どもの人権と想像以上に深くつながっています。だから、そういう政治的な事柄も含めて、自分のことばで不安や気持ちを話題にできる場も大切です。先日CAP大人ワークのあとご意見をいただき深く同感したのですが、子どもたちが暴力の被害を受ける状況(落とされる穴)そのものと大人が向き合わねばならない、防がねばならないと思います。(わたしたちは、CAPと別に「非暴力のタネをとばそう」という活動もしています。)
 ぼうしの会は10人ちょっとの小さなグループで、仕事をしているメンバーが多いのですが、1年に約100件のワークを目安にマイペースで歩んで来年で10年目を迎えます。CAPの内容のすばらしさも、深刻な現実での限界も感じながらですが、目の前の子どもたちの持つ力を信じて知識やスキルを伝えること、相談して援助を受けることのできる環境を子どもの周りに増やしていくこと、そのために大人も子どももお互いに出会いなおしていくことが、CAPを通して実践されていくことを願ってこれからも「楽しく」やっていきたいと思っています。うまく書けませんでしたが、今後も出会いを重ねていけたらうれしいです。来年のキャンプには、参加してビールを飲むぞ!などとひそかに思ったりしてます。また、おもしろそうなことにお誘いくださいませ!
 クリスマスソングで慌ただしい季節となります。みなさんお体ご自愛のほど、よいお年をお迎えください!

≪参照事項 2004年度トライアングルワークのメンバー≫
担当 大人ワーク :ひな・れば・くま
 ボラワーク :まき・リー・ナンブ・りょうた
 子どもワーク:ひな・れば・ナンブ・くま・きぬ(1日目のみ)

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