京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(2015年12月号 掲載)
トライアングル30周年記念ファッションショー

ひとりであるく、みんなであるく
WALK ALONE,
WALK TOGETHER

企画制作担当 赤松 玉女

 まず、会場で見てくださった多くの皆様、たくさんの声援と拍手、本当にありがとうございました。そして参加者の皆様には、完成予想図が示せなかった私たちを信じて、半年間、最後まで惜しまぬ協力を賜り、心より御礼申し上げます。
 
 ファッションショーがどんなものかを知らなかった子どもたちが、春から少しずつ体験を積み上げ、夏以降はみんなで一つのものを作り上げていく連帯感が生まれているのを感じることができました。当日は最高のパフォーマンスを見せてくれました。いろんなハプニングにも助けを借りず自分たちで乗り越える余裕すらありました。細かい指図にもかかわらず、お母さんたちやスタッフが根気よく衣装を仕上げてくださったことも含め、感動と感謝の気持ちは言葉に言い尽くせません。
 
 ファッションショーを思い描いたのは、数年前にYouTubeで見た動画がきっかけでした。サンフランシスコの障害者アートセンターが毎年資金集めの目的で行っているファッションショーの短いドキュメンタリーです。誇らしい表情で、これは自分で作った衣装だと語るダウン症の女性や、声援や拍手喝采に自信に満ちた笑顔でランウェイを歩くモデルたちの様子に、私は正直驚き、感動しました。そこには、彼らが作った衣装をまとうプロのモデルたちもおり、その動画自体がプロの撮影編集クルーのものであることが見てとれました。
 
 私がしたかった事がここにありました。トライアングルとは三角形、つまり障害者と家族と支援者の三者が対等に存在する象徴でしょう。障害を持つ人々と、その家族、プロ、アマを超えたあらゆる支援者が、お互いに支え合い、輝きあえる体験をする場を提供したいと考えていた私は、ファッションショー作りはそんな場になり得る、これをいつか企画してみたいと思っていました。トラフェスというイベントで、それを実現する機会をいただいたのです。今回のファッションショーのエンドロールには、衣装に関わった専門家から学生ボランティアまで、全部で70人を超える名前があります。それぞれが、熱意を持って取り組み、企画に関わることを楽しみました。それぞれの制作や練習の現場では、いいものをつくるという目的以外、すでに障害という意識は薄れていたのではないでしょうか。創ることの神髄にそれぞれが触れていたのだと思います。
 
 オープニングには、トライアングルの歴史と目的を見せるパート、ショーのメイキングのパート、登場するモデルたちのプロフィールのパート、合わせて10分ほどのムービーを見ていただくことにしました。最初のパートのフリップに載せたメッセージには、インターナショナルに発信できるよう、英訳をつけました。エンディングロールのお名前は、漢字が読めない子どもも自分の名前やお友達の名前が見つけられるようにひらがな表記で、そして日本語が読めない人のためにアルファベット表記も添えました。
 
 ムービーの編集作業の途中、子どもたちや親がランウェイウォークの練習するシーンを見ながら、「ひとりであるく、みんなであるく」というサブタイトルが思い浮かびました。「障害を持つ子どもが自立してひとりで歩いて行くのは夢であり大切なこと。そしてそれを支えながら、応援しながら歩いてみると、子ども達の輝きに我々もまた支えらえているのだと気づく。」というメッセージを、会場でご覧いただく皆さんにMCによる説明をせずに伝えること。これがショー全体を仕上げていく上での指標になりました。
 
 正直に申せば、途中、みやこめっせという会場の重さ、助成金獲得のメインイベントとして掲げられていることに、今まで経験したことのない不安やプレッシャーを感じていたのも事実です。しかし、制作過程のあちこちにエピソードがあり、エピソードごとに発見や学びがありました。練習の回を追うごとの子どもたちの成長ぶりや衣装制作に関わるお母さんたちの熱意、スタッフ一同の優秀さに助けられました。助成金申請から必要な支援者を見つける手配に至るまで、取材も広報も30年の実績があればこそ、トライアングル事務局の応援がなければここまでのことは成し遂げられませんでした。
 
 また、やったこともないファッションショーへの協力を依頼したところ、快く引き受けて、すべてを仕切り、リードしてきてくださった福原洋子さん、自ら協力を申し出てくださり、細やかな配慮でみんなをまとめてくださった栗田智子さんにもこの場を借りて心から感謝申し上げます。初めから最後までブレなかった「MCは無し」という福原さんの提案が、全体を導く強い指針になりました。お二人抜きではとうてい実現できませんでした。そしてそれを理解し協力してくれたお二人のご家族にも、遠くから気にかけてくれた私の家族にもありがとうと言わせてください。
 
 たくさんの人の手で作り上げ、たくさんの人が観たファッションショー。ランウェイで声援や拍手とライトを浴びて、文字通り輝いていた子どもたちでした。そして我々スタッフも観客も、彼らの輝きを受けて笑顔になれたことは、ファッションショーの、ひいてはトライアングルのテーマをまさに実現するものとなりました。
 
 今回のトラフェスで、30年間活動を続けて来られたことの尊さ、そこで繋いでこられた人的な層の厚さ、トライアングル事務局の懐の深さを感じました。改めて敬意を表し、また親の一人として感謝いたします。
 
事務局の皆さんが30周年に込めた思いが伝わり、トラフェスが大盛況のうちに無事に終えられたこと、本当におめでとうございます。お疲れ様でした。

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