報告:第1回日本ダウン症会議に参加して 佐々木和子 11月11日、12日に開催されました第1回日本ダウン症会議(主催:財団法人日本ダウン症協会)の1日目分科会福祉1テーマ「障害児をめぐる法的な動向―差別解消法1年半を過ぎてー」に参加してきました。私は差別解消法が施行された時、この法律は障害者の日常を大きく支える画期的な法律だ!と、とても嬉しく思いました。今回、このテーマで、どのような報告が聞けるのか期待しながら出かけました。が、結論からいいますと、知的障害者にとって、法文はとても難しく、利用しにくいもの、また、法律ができたからと言って、社会に浸透するには相当の時間が必要、その為に簡単には社会は変わらないのだ、ということでした。でも、障害者差別解消法の基になっているのは国連の障害者権利条約なので、本当は色々な場面で有効に使える法律です。特に教育の場面では、すぐに使える内容も届いていますので使って欲しいと思っていますし、使える法律です。これからも具体的事例を集めながら、報告を続けていきたいと思っています。以下はパネラーからの報告をまとめてみました。 〇座長:大塚 晃(上智大学総合人間学部社会福祉学科教授) 障害を理由とする差別の解消や個々の障害者への合理的配慮を規定する障害者差別解消法が平成28年から施行。この法律は、障害を理由として、あるいは正当な理由なく、サービスの提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりする行為を禁止するもの。本人からの意思の表明が困難な場合には、家族や支援者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含まれる。意思の表明がない場合でも、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に務めることが望ましい。 建設的対話という言葉は今後の障害者の在り方を考える上で、すばらしいものだが、障害者の意思決定支援を含めた本人を中心とした権利擁護などを補助する仕組みが必要である。 〇障害者差別解消法はできたけれど・・・佐々木桃子(社会福祉法人 東京都知的障害者育成会) この法律ができたことを当事者や家族が知らないことがアンケート調査でわかった。それゆえ、相談がとても少ない。 当然、他の国民は知らないのでは? → 社会はかわらない。 不当な差別とは?社会的障壁とは?合理的配慮とは? 合理的配慮は、自分から申し出なければならない 知的障害者のある人にとっての差別とは。1)役所の窓口で対応しない。 2)幼稚園、保育園に入れない。3)学校に入れない。4)習い事を断わる。 5)職場で障害者ということで昇給がない。等。 差別と感じた時は、1)困っていることは相談していいんだよ。2)配慮を求めていいんだよ。3)権利ばかりを主張しているのではなく、私たちはふつうに暮らしたいだけと伝える。 【社会に向けて】 1) 多くの人にダウン症を含む知的障害のある人の生きづらさや障害特性を知ってもらう。 2) 知的障害の場合、合理的配慮が分かりずらいので、教育や福祉の現場の方にアセスメントをとり、配慮を考えてもらうこと。 〇冠木(かぶき) 克彦(冠木克彦法律事務所 弁護士:ダウン症男子のお父さん) インクルーシブ教育の現状と課題 基本原則の確認:障害者権利条約の基本原則 *障害者が、他の者と平等に、自己の生活する地域社会において、包容(インクルーシブ)され、質が高く、かつ、無償の初等教育の機会及び中等教育の機会を与えられること。 *医学モデルから社会モデルへの転換の意義 a障害者個人の問題 → 社会の問題 b「変わるべきは障害者」→ 「変わるべきは社会」 c物理的環境としての社会→ 構造と制度、人々の関係としての社会へ *インクルーシブ教育は「誰のための」制度か 現場における実情は明らかに「障害者のためにしてやっている」教育という扱いであり、差別の根深い原因になっている。 分離にすると、健常の子どもは障害者との対応の仕方や仲良しに機会がなく、インクルーシブな機会のない健常者は障害者を理解せず、差別者として成長する。 差別の解消は健常者と障害者がまずは、同じ場で生活することから出発するという原則を確立しなければならない。 〇加野 理代(弁護士:ダウン症女子のお母さん) 障害者差別解消法の説明でした。トライアングルでは解説と講演をしていますので省略します。 〇ぼくたちにもっと機会を!:三好 宏樹29歳(北海道在住) NPO法人 アラジン(就労継続支援B型) 週5日、リサイクルショップで接客したり、手作り品を切ったり、会報発送の作業を毎日楽しく働いています。余暇活動としては、ヨサコイ、スペシャルオリンピックス、ボウリングを楽しんでいます。最近、大好きな先生の下で書道を始めました。 高2からアルペンスキー(競技)を始め、12年目になりました。大好きなスキーを続けるために、夏はオフトレ、冬は60日以上滑っています。 (三好さんが話されているバックで、アルペンスキー競技に参加し、滑っている映像が流れていました。世界大会にも参加する滑りの素晴らしさに驚きました。 菅野先生が講演で話された「やれば、できる」そのものでした。) |