京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(1998年12月号 掲載)

「第3回 日本ダウン症フォーラム in 横浜」に参加して

近藤雅子   

 11月28(土)、29(日)に開催されたJDSN(日本ダウン症ネットワーク)主催の「日本ダウン症フォーラムin横浜」へ行ってきました。昨年の京都につづく第3回目のフォーラムで、何かお手伝いできればという気持ちだけは持ち合わせていたのですが、あまりのスケールの大きさにとても力にはなれませんでした。開催日が近づくにつれ参加人数が予測以上にふくらんできているとの情報が入り、最終的に参加者は1200人を超えていて最大級のフォ−ラムになるとのことで、このフォーラムのニーズの大きさと、全国的な力を結集するネットワークのパワーの凄さを感じました。

 29日、午後からのメインセッションともいえる「本人と家族からのメッセージ」は最も印象的でした。きょうだいからの話をされた吉村健佑くんはダウン症の弟がいる大学生の方で、弟さんの存在からお医者さんになりたいと思うようになったという、本人曰く"クサイ話"をされました。将来は弟さんと一緒に住みたいと思っているという事や、「きょうだいとして弟が社会にうまく適応できるようにバックアップしていきたい」という頼もしい話でした。会場からの質問で、「きょうだいにダウン症のことを話す時期はいつ頃、どのように説明すればいいでしょうか? きょうだいが聞いてよかった言葉、言ってほしくなかった言葉は?」というのにダウン症のお兄さんをもつ茂住恭子さんが答えられたのですが、きょうだいは普段の生活の中で、例えば親がダウン症の会の話だとか「ダウン症フォーラムに行かなくっちゃ」という話を耳にして自然にきょうだいとしての自覚がめばえていく。だから特にダウン症の説明をしようと構える必要はない。ただ、きょうだいが障害について訊ねた時にはちゃんと向き合って答えてほしいし、その準備はしておいて下さいということでした。そして、「言ってほしくない言葉」として、普段は「あなたの思うように生きていいのよ」と言いながら、気分次第で「きょうだいの面倒を見ないとダメでしょ」なんていうのはどうかと思う、という意見を出されました。

 本人たちからのメッセージでは9人のダウン症の人たちが自己紹介や興味のあるものなどを話してくれました。24才の石田巌くんはスキーをする姿でスキー場の紹介をしてくれました。22才の猪野礼和くんは素敵なダンス衣装で、いつ発揮してくれるのかと期待していたらフィナーレでパフォーマンスがありました。佐々木裕子さんは、お母さんが亡くなられた事や、いじめにあっているというつらい話をしてくれました。27才の篠原敬之くんは「仕事が楽しい人?」という問にいち早く手をあげ、マイクを向けられ「シアワセです」と一言。23才の向井俊也くんは「将来の夢は?」の質問に「花婿さんになって親を安心させてあげることです」と親思いのところを見せてくれました。19才の渡部布美子さんはカラオケに行くことや歌の話をされました。双子の姉妹の村井綾さん、郁(ふみ)さんは仲のいい、おしゃまなお嬢さんです。前夜の交流会でいろいろお話させていただきましたが、その時には村上さんの方から「近藤さんは、いつもどのような事をされているのですか?」というように、右から綾さん左から郁さんが会話をリードしてくれて、お話をした後にその場を離れる時には「あっ、ちょっと失礼します」と言われ、そのマナーの良さに感心しました。

 本人セッションの最後に今年大学を卒業された岩元綾さんが、5月に「第3回アジア太平洋地域ダウン症会議inニュージーランド」で発表された英語のスピーチの一部をその時の会場の反応の説明を加えて発言されました。後半で英語と日本語の両方で「出生前にダウン症かどうかを調べてダウン症なら生まないという検査があるそうだか、それは非常に悲しいことだ」という事を述べられ、会場からは大きな拍手がありました。

 感動のフィナーレでは、その前に親は保育に預けている子どもを引き取り、親と子と一緒になって会場に集まりました。まず、本人セッションにも出られていた猪野くんがボランティアの女性ダンサー2人を引き連れて「タイミング」という曲にあわせてダンスを披露してくれました。そのダンスのうまさはただものではありません。音感のよさといい、センスのよさといい、またスタイルも現代風(なんて言葉が古いのでしょうが)で、場内を大いにわかせてくれました。次に登場の特別ゲストは最後まで明らかにされていませんでしたが歌手の水越けいこさんです。水越さんはダウン症のお子さんの事を書いた『神さまレイくんをありがとう』という手記を出版されています。お子さんとの関わりの話をされながら、レイくんの事を題材にした歌を2曲歌われ、それを聞いていて会場はしんみり〜状態。いよいよラストには会場の子どもたちがみんな舞台にあがり水越さんといっしょに「輪になって踊ろう」を歌い、踊り、猪野くんのダンスもあって盛り上がりました。アンコールでもう一回、「輪になって踊ろ」の大合唱と手拍子で場内を感動の渦に巻き込みました。

 2日間を通して、トライアングルはポスターセッションでポスターの掲示と会報などの展示をしました。

 お昼休みにダウン症の子ども達の集合写真撮影があり、スタッフの人たちは「ギネスにも登録できるんじゃない?」という提案もされていたくらいで、それ程多くの子ども達が集まった画期的な大イベントでした。この力がきっと社会を動かして行けると思わずにいられませんでした。

 来年は大阪で開催されるそうです。大阪の活気やおもろさを活かしたフォーラムになるのではないかと期待しています。


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