京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(1999年12月号 掲載)

第4回 日本ダウン症フォーラム'99 in 大阪に参加して

近藤 雅子   

 10月9日(土)・10日(日)の両日に大阪大学コンベンションセンターで「第4回 日本ダウン症フォーラム '99 in 大阪」(主催:日本ダウン症ネットワーク、第4回 日本ダウン症フォーラム '99 in 大阪 実行委員会)が開催されました。とてもいいお天気の9日、朝からトライアングルの何人かと待ち合わせて出かけました。午後からの「きょうだいたちの楽しい合奏」のセッションにトライアングルの子ども達が出演します。練習の時間もあまりなかったようなので大丈夫かとちょっと不安もよぎります。行きのモノレールには年齢の小さい子や大きなダウン症の人たちの家族連れ、フォーラムのパンフレット片手の学生さんらしい人などが乗り合わせていました。――「みんなフォーラムに行くんだろうなぁ」。

 午前には国際ジョイントミニシンポジウムがあり、岩本綾さんによるご本人が英訳された絵本「MAGIC CANDY DROP」の英語の朗読と、オーストラリアの人気俳優ルース・クローマーさんの「私の生きてきた道、俳優として」と題しての講演がありました。お二人ともこうして国際的に活躍されていて天性の才能もあるのでしょうが、裏では人一倍の努力をされているのが話の中から感じられました。  昼食の時間に、みんなが出払った会場でトライアングルの合奏のリハーサルがありました。――子ども達はイマイチのりが悪いかなぁ・・・本番、上手くいくかちょっと心配。

 午後からは、シンポジウムT「健やかに生きる」。このフォーラムでは参加者全員に「フォローアップ手帳」が配られました。これは、ダウン症児の発達やかかりやすい病気をわかりやすく解説した70ページの冊子です(ご覧になりたい方は事務局へどうぞ)。シンポジウムでは、(1) 岡本伸彦氏の「ダウン症健康フォローアップ手帳について」、(2)国澤宮子氏の「ダウン症児の身長と体重の増え方」、(3)古林敬一氏の「成人ダウン症者の医学的合併症」と題した講演と、その後、フォローアップ手帳作成者14名の紹介と質疑応答があり、会場からの質問に丁寧に回答されていました。

 第二部はいよいよコンサートです。NHKの「たのしいきょうしつ」で歌のお兄さんとして出演されていた新井宗平さんの進行で始まりました。最初はトライアングルの子ども達がずらっと並んで新藤崇代先生の指揮のもと、「小さな世界」と「気球に乗って」の合奏。リハーサルの時とは大違いのみんなの息がぴったりと合った演奏、マイクを握り締めて大きな声の合唱は上出来でした。ダウン症の子ども達って本番に強いんですね。みんな自分達が主役になるのが大好きなのでしょう。その後、佐々木元治くんとその従兄弟とお友達によるバンドの演奏が2曲。元治くんはドラムをリズム感よくダイナミックに叩いて、とてもカッコよかったです。

 次は新井さんの元気いっぱいのコンサート。さすがにプロ、あっという間に会場のみんなを1つにして湧かせます。私たちも歌って手拍子してアクションして、とグングンとコンサートに引き込まれていきました。後半にはご自身がダウン症の娘さんを授かった時の話をされ、「見上げてごらん夜の星を」をしんみりと歌われました。そしてまた明るく「ダウン症の娘が生まれてくれたからこそ今の幸せがあるのだ」と話されました。お父さんの気持ちを、強い部分も弱い部分も聞かせてくれる人って、あまりいなかったかもしれません。こんなに頑張っているお父さんがいてくれて、なんて頼もしい!
 フィナーレは子ども達も舞台に上がっての大合唱で1日目は終了しました。


 二日目は、シンポジウムU「ダウン症者の就労を考える」。はたらく本人たちということで、楠健さん(伊藤ハム勤務)、藤田泰代さん(自然食品の店「アクティブ」勤務)、八木暁子さん(大阪大学生協勤務)の3人の働く様子がビデオで紹介され、その後に3人が登場して自己紹介や仕事、日常生活について話をされました。3人の、体力に仕事を調整しながらの熱心な働きぶりには感心しました。普段はやっぱりジャニーズ好きの現代っ子さんだったり・・。

 次に6人のパネリストの方が障害者の就労についてディスカッションされました。ダウン症の青年を雇用している西友・三軒茶屋支店ストアーマネージャーの方のお話が印象的で、「バックグラウンドがあった、どこの西友でもダウン症の方の雇用に理解があるわけではない」とのことわりの後で採用の経緯を話されました。採用にあたっては研修時の直属の上司の努力が大きかった。心配点は、体力と仕事のスピードが30パーセント以下であったこと。でも、華奢な身体のわりに体力があり、仕事のスピードは他の社員の理解によってカバーできた。採用のポイントは1.性格が明るくすなお。2.わからない事を聞いてくる。3.1つの仕事を終えると必ず報告をする。という点だった、という話でした。その他のパネリストの方からも、「基本的生活習慣を身に付ける事が大事」「人材と戦力の違いを踏まえた企業側の努力が必要」「無理をさせない親が多く残念」などと就職への積極的なアプローチに向けての話がなされました。さすがに商売の町、大阪。京都人は就職についてはのんびりしているような気がします。最終的には親が面倒をみると思っているのかもしれません。実際にはダウン症をもつ人を一人前に扱っていなかったり、本人そのものより親や家を相手にして接する場合が多いのではないのかなと考えさせられました。

 午後の部は「ふつうの場所でふつうの暮らしを」と題して宮城県福祉事業団理事長の田島良昭さんが講演されました。自分が育ってきた時代は弱いものは強いものに追いやられてきた。そして今も福祉の取り組みの中では、強いものが弱いものに何かを「してあげる・守ってやる」という考え方が根強く残っている。あたりまえの生活である「ふつうの場所でふつうの暮らしを」がなぜ出来ないのか? とのお話しでした。

 最後は、楽団あぶあぶあの公演。キーボード、マリンバ、ピアノ、パーカッション、ドラムスの演奏です。何年もかけて自分達のものにしたという曲は熟練されていて、やさしくあたたかいメッセージを私たちに伝えてくれました。メンバーの一人の言葉「聴いた人がやさしい心を思い出す」、本当にそのとおりだと思います。また、1992年に結成された「ミュージカルLOVE」のダンスも披露してくれました。のびやかで表情豊かてとても素晴らしいものでした。  フィナーレにはまた前日の新井さんも登場し、子ども達も壇上に登って、あぶあぶあのオリジナル曲「WITH YOU SMILE」を大合唱しました。


 今回のフォーラムでは参加の事前申込みが定員の大人500名、子ども100名を超え、9月中ごろには申込受付締め切りとなりました。多くの方がダウン症をもつ人たちの将来を良くしようと願っていて、一丸となって行動しているのがわかります。本当はもっと関心のない人たち(お医者さんや学校の先生など)がこのフォーラムの感動にふれて、ダウン症をもつ子ども達の魅力が回りの人をつき動かし、こんなにパワフルな集いがもてるのだということを知ってほしいものだと思います。関係者の方々、本当にお疲れ様でした。大阪の活気、元気、やる気を体中に充電した二日間でした。
 来年は埼玉県で開催予定です。


 
トライアングルのホームページにギャラリー開設!

 大阪のフォーラムには、トライアングルの子ども達の描いた絵や作文を掲載したパネルを出展しました。(日にちがなく、会員さん全員から募集することができませんでした。)せっかくの力作をもっと多くの人に見てもらおうと、トライアングルのホームページに新たにギャラリーを開設し、それらの作品を展示しています。一度ご覧下さい。

トライアングルギャラリーはこちら

 また、ギャラリーに展示する作品を募集しています。子ども達が書いた絵、作文、お習字など何でも結構です。事務局宛に郵送してください。こちらでスキャナーで読み取り、ホームページ上に掲示させていただきます。

 トライアングルのホームページも多くのアクセスがあります。これからも、より新しい内容で、みんなの意見を反映できるようなものにしたいと思っています。ご意見など、どんどんお寄せください。



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