京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(2000年2月号 掲載)

お母さんの為の算数教室から

〈初めての過程訪問を受けて〉

福山富起子   

 何をどう書いたらいいのか分からないのですが、初めて山科先生に家庭訪問してもらって、すごいなーと思ったので書いています。何がどうすごいのか、説明がすごく難しくて、また何をしたのかさえおぼろげになってる今、うまく説明できる自信がないのですが、とりあえず書いてみます。

 うちの娘は12月で5才になったばかりです。算数教室には1年前から学習会に参加させていただいてますが、私が入った時にはすでに1位数の引き算でした。4才児なのに引き算なんて・・・と思いながらも、算数だけでなくその基礎を教えてもらえるという人の声に、半信半疑な気持ちのまま参加してました。(当然、授業にも緊迫感も必死さもなかったですよ。山科先生ごめんなさい。)
 「そろそろ福山さんも家庭訪問、どうですか?」という声に、何もできないし、やってないけどいいんかしら? と思いつつ「はい」と受けた次第です。

 先生が来られたのは12月の初旬の暖かな平日の午前中です。その日は保育園も休みだと思うとついダラダラと片付けたりして、娘は横でおもちゃをひっぱり出して遊んでいました。10時に先生を迎えに行って、家に入ると“さあ、この人は誰だろう?”という娘の好奇心の目がチラチラ。取りあえず、こたつ机を出してお茶を出しながら「私はまだ娘に何も教えていないんですよ。」というと、先生は「その方がいいんですよ。」との一言で内心ホッとしたのを覚えています。

 お茶を飲んだ後に、「私が山科まみです。まみ先生です。よろしくね。」と自己紹介されると、娘もにっこりでした。その後、小さなうさぎのマスコットを出され、小さなドアを出されて「うさぎさんが遊びに来ました。」と、ごっこ遊び、役割を交代して娘がする時には“うさぎがちゃんとドアを向いているね。”と、“え?”これって当たり前と思っていたら、“そこに気がつかない子もいるのよ”と。ヘェーと思ったのが、その後たくさん続くのです。その次には1対1対応の勉強。親はすでにどうするのか前に勉強しているので、次はこうだなと分かるんですが、娘は初めてだったんですね。それをすっかり忘れて、1つのうさぎに1つのお弁当を、3人のうさぎにそれぞれ3つのお弁当を並べるんだな〜と分かっているのですが、娘の反応が今ひとつ・・・つい私が「うさちゃんのお弁当ね−−」などと口を出しかけたら、「お母さんは黙ってて」と一言。あ、そうそうこのお母さんの一言で子どもの思考をダメにするんだった。と勉強会で学んだ事だったのに・・・。2回、3回と同じようなごっこ遊びをしながらも、最後はしっかりうさぎ1人にお弁当を1こずつあげました。この“やったー”という満足のためか、その後絵本棚にいって本を数冊持って来ました。このもも遊び出したらどうしようと思いながら、うろうろしてる娘を横目に、先生に今のごっこ遊びの時の思考過程を教えていただいてました。

 山科先生がまた別の大きいトレーを出したりし始めると、“おや?”とばかり先生の手もとを見始めました。そして、今度はやって来たうさぎさんをハンカチで隠して、それぞれにお弁当をあげる事にしました。初めのうちは3人来てお弁当を3つきちんとうさぎさんに並べていたので、とてもうれしそうでした。その後で、先生がこっそり4人のうさぎさんを連れてきて、ハンカチで隠しました。今までうまくいっていたので、今回も嬉々としてあげてました。ところが、最後のカーテンが上がると、なんともう1人のうさぎ。お弁当はありません。娘は両手の平を肩の横で上げて“ない”という動作をしたんです。つい、ハハハ・・と笑ってしまいました。でも、この反応には予想もつきませんでした。弘子は5年分の経験を通して思考している事その反応が、思考過程が分かると一緒にやるっておもしろいんだなと思いました。

 子どもの思考が分かると、一緒に楽しい算数、楽しい生活ができるんだなぁ〜、と思いました。でも、子どもの柔軟な思考にはい−−−っぱい勉強しなければ親はついていけないな〜。親って、結構自分の都合で考えてますよね。そんなことをいっぱい考えた一日でした。


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