京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(2016年2月号 掲載)
障害を理由とする差別の解消の推進に関する京都市対応要領(案)
及び事例集・パンフレットについての意見

京都ダウン症児を育てる親の会
顧問 佐々木和子

 日頃は障害者施策についてご尽力いただきましてありがとうございます。
 障害を理由とする差別の解消の推進に関する京都市対応要領(案)及び事例集・パンフレットにつきまして、意見を述べさせていただきます。
 
 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する京都市対応要領(案)」につきましては、私たちの意見を聞き入れて頂き、他自治体の手本ともなるのではないかと思う内容、表現をなっており、ありがとうございます。
 特に、「はじめに」では「障害者権利条約」の基本が明記され、差別解消法が権利条約に基づき、策定されたことがわかります。要領も障害者権利条約に基づいた内容になっています。
 しかし、事例集、パンフレットになると一気にトーンダウンし、合理的配慮が単に「障害者にはやさしく、わかりやすく、親切に接しましょう」というニュアンスになり、とても残念な結果になってしまっています。
 
 障害者差別解消法とは、障害者権利条約を批准するためには日本の法制度では不十分だったために、創設・改正された法制度の一つです。
 国連は1981年、国際障害者年行動計画を提議しました。内容は「ある社会がその構成員のいくらかの人々を締め出すような場合、それは弱くもろい社会である」と宣言され、障害者を排除する社会そのものこそが問題であると意識され、いわゆる障害の有無にかかわらず共に生きるインクルーシブ社会こそが必要不可欠なものであることが宣言されました。
 そして、障害者権利条約の一般的原則として、尊厳の保障、非差別、多様性の尊重であり、教育や雇用、地域生活全般にわたって分離されることなく権利が保障されなければならないということが揚げられています。
 
 障害者差別解消法は障害者権利条約の理念に基づき作られ、差別を解消するための合理的配慮の提供が明確に記されています。権利条約で言われている合理的配慮の「合理的」とは、正当な理由がある、という意味、「配慮」とは「変更、調整」「便宜提供」という意味で、単に障害者に優しく親切にすることだけではありません。対話をしながら具体的な手立てをする、ということです。
 障害者を社会があるがままに受け入れ、そのことによる障害者が受ける不利益を社会の方が調整変更して、障害者の不利益を解消することです。
 
 便宜上、分けて支援することが合理的配慮ではありません。
これまでの日本は分離して支援してきました。一足飛びに変えるのは難しいとは理解しています。が、その方向性はパンフレットに分かるように記してほしいと思います。
 
 今回の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する京都市対応要領」は障害者にとって、画期的な内容になっています。特に合理的配慮に関しては「障害のない者と同等の機会を提供するためのものであること」と明記されています。パンフレットにもこの名文を載せて下さい。
 
 私たち、親の多くは、子どもが「ともに学び、ともに育つことを願い、地域の学校の普通学級に通学させてきましたし、その後も希望する親は多くいます。ともに学びつづけることを否定せず、合理的配慮をすることをパンフレットに追加してほしいと思います。 今までも京都市として、様々なプランを策定し、啓発活動をしてきています。それと、今回のパンフレットとの違いがあまり無いように思います。
 
 また、正当な理由の具体例は、京都市が最初から言い訳を行っているに等しく、思いつく理由(それが正当か否かは関係なく)があれば合理的配慮は必要ない、と受け取られません。やはり、削除するべきと思います。
 事例集は具体的事例として、一般に分かりやすいものであるがだけに、より一層慎重に公表されるべきと考えます。
 以上、よろしくお願いいたします。
 

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