京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(1998年2月号 掲載)

厚生大臣
小泉 純一郎 殿
1997年11月19日   

京都ダウン症児を育てる親の会   
代表 佐々木和子   


『要望書』

 去る、4月7日、私ども京都ダウン症児を育てる親の会は、「出生前診断」及び「母体血清によるスクリーニング検査」に関するアンケート調査結果より得た問題点についての質問に対して、回答を頂きました。

 その時、私達が可愛いと思い、産んで良かったと思っているダウン症の子どもの生存権を脅かすような、「母体血清によるマーカー検査」を一時凍結すること共に、「障害福祉」及び「カウンセリング」の充実、「出生前診断」に関するガイドライン作りに当事者や家族団体を含めることを要望いたしました。

 その後、厚生省の中に設置されました、「出生前診断の実態に関する研究班」及び「厚生科学審議会・先端医療技術評価部会」に於いて、当面、生殖医療に関する分野について、検討を進めるという情報を得ました。

 そして、今後は関係団体を招いて意見聴取を実施する等、広くこの問題に対する国民の意見を求めるとあり、私達は大変へん期待しております。

 しかし、最近、伝わってくる先端医療技術に関する情報は、遺伝子診断、遺伝子治療、又、「ヒトゲノム解析」等、私達、一般生活者には、耳慣れない、理解しにくいと思われる言葉が、沢山あります。

 9月になって、WHOの「遺伝医学の倫理的諸問題および、遺伝サービスの提供に関するガイドライン」(日本語訳)を読む機会がありました。

 改めて、先端医療技術が私達の想像をはるかに越えた速さで進んでいるのがわかります。その中の一文に、「遺伝医学の臨床応用に関して問題になりうる倫理的諸間題」とあり、この問題が、私達、一般生活者に「理解できる」とか、「される」という事などとは関係なく、臨床応用されようとしているのです。

 その為のガイドラインとはいえ、内容量があまりに多い上、難しく、又、研究が進み過ぎている為に、やはり、専門家のみで話を進めている感を強く持っております。

 杜会的に障害児が受け入れられている状況でないことは、私達のアンケートにも出ているにもかかわらず、社会的状況が強く影響する「自己決定」と治療できないことを否定しかねない「治療」を基本としたガイドラインは、親として容認できるものではありません。

 此処に、私達は改めて、「母体血清によるマーカー検査」の一時凍結に加え、十分に国民のコンセンサスを得られた、何人たりとも否定しない「医療技術に関するガイドライン作り」を強く、要望いたします。





報告

第2回 厚生省交渉 1997年11月19日


出席者厚生省側−武田康久課長補佐(児童家庭局母子保健課、医学博士)
鈴木健吾係長(同課、厚生事務官)
岩澤和子さん(同課、母子保健指導専門官)
中野 恵さん(保健医療局国立病院部)
 交渉側 −神山、藤江、和田(日本ダウン症協会理事、東京)
石黒(日本ダウン症協会副理事長、広島)
中村(静岡)、佐々木(京都ダウン症児を育てる親の会)
−−前回、4月に来た時と厚生省側のメンバーが全員違うのが不安材料−−


○内容

 日本ダウン症協会から、先に出されていた
質問1)前述のような不適切なアンケート調査報告に対する厚生省の取扱い方針、及び「出生前診断の実態に関する研究班」の調査・研究の方針、及び内容をお教え下さい。

 という質間に対して、リサーチクエスチョンといって、調査目的と調査対象を指定するだけで、具体的な調査方法については研究班の先生方に任せている。3月末に出てくる、客観的な数字が自分達は欲しい。調査の項目など資料として欲しいなら調査研究班の方に直接要求して下さい、とのこと。

 研究班の質問事項についても、調査状況なども、全く、チェックせず、出てくる客観的数字のみで、今後、何をしていかなければならないかが分かるのかと言う質問にも、曖昧な返事で、途中、武田課長補佐は退席。

 続けての質問にもあとの人達はしどろもどろで、話にならず。

 トリプルマーカーテストで羊水検査を受けなくてすむメリットもあるわけで・・・なんて言い出し、この検査の持つ間題点に対する認識の甘さまで暴露してしまうしまつ。「私達のアンケート調査を読んでいただけました?」「いえ、読んでないです。」「・・・・!」話にならない。「4月の段階に話がもどってしまいますね。」と私たちをあきれさせた。

 この検査の無批判な広がりに意義を唱え、この検査にかかわらず、治療が確立していない疾病や、障害に関する出生前診断を妊婦の一般検査として行うのは人権侵害であると主張することは、出生前診断に関するあらゆる場面でしていかなければならない。

 また、この審議等に当事者団体の意見を入れていく話も、こんな感じで意見を聞くだけでの形で終わってしまうのでは、なんにもならないわけで、審議する委員の中に入っていくシステムを、どうやって作り出せるか?今回の交渉も含めて、今後も取り組んでいくことが必要。

 とにかく、来年3月に出生前診断に関する実態調査結果のでるのを待って再度、交渉をしていかなければならないと思う。

−−始めに抱いた不安材料が的中したことにガックリ。
   厚生省ってこんなにいいかげんな所なんだと改めてガックリ。−−

報告 佐々木和子(京都ダウン症児を有てる親の会)


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