京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(1998年2月号 掲載)
大イベントに参加して

山本秀子   

 我が家の長男、慶太郎も生まれてからは色々とあり、大変な時期もありましたが、今では10才になり、元気に学校へ通っています。今でも悩みはつきませんが、今回は昨年11月末に参加した『出生前診断を考える会パートII』と『日本ダウン症フォーラムinきょうと』について話したいと思います。

 2日間という長い日程だったので少し迷いましたが、保育があるので慶太郎と妹の早季を連れて参加しました。どんな所で、どんな会なのか想像もつかないまま会場に着きましたが、京大医学部の会場は広くて、きれいで、雨にもかかわらず次々と人々が集まり、大きなホールがいっぱいになったので、おどろきました。

 専門家の先生もパネラーとして参加して下さっていて、スライドを使って出生前診断の問題点などを説明してくれました。テーマが大きな問題だけに私にはむつかしくて、理解できない所がありましたが、みなさんの真剣な討論に感心するばかりでした。

 2日目は朝9時から夕方5時半までと、かなりハードなスケジュールだったので、あわただしく参加しましたが、長い一日のはずが、あっという間に過ぎ、何とも言いようのない充実感で終わりました。

 世界ダウン症会議に参加された武部先生の報告は、開催地が町全体で取り組んでいて、その会議に世界中から数千人もの専門家が参加しているとの事でした。ダウン症の世界的な会議があるなんて、まったく考えられなかったので、とてもおどろきました。スライドを見ながらの武部先生の報告は、とても軽快で、おもしろく、私たちにとって頼もしい応援団だなと思いました。

 その後も次々とプログラムが組まれていて、どれも興味深い内容ばかりで、あっという間に時間が過ぎた様な気がします。

 中でも『きょうだいからの視点』という報告は、我が身に返り、胸がつまりました。それぞれにダウン症の兄、弟を持つ妹と姉がパソコンネットワークでのアンケートの報告をしてくれました。きょうだい達が考えている事や悩みなど報告してくれたのですが、どの親も必ずきょうだい達に「家の事は気にせず、自分の好きな道を進んだらいいよ」と言うけど、きょうだい達は障害を持っているきょうだいの事をとても気にしていて『その事を抜きにして自分の人生は考えられないと思っている』と言うのです。

 私も子どもには自分の好きな道を進んでくれたらいいと思っているので、とても胸がつまってしまいましたが、報告をしてくれた彼女たちは、淡々と発表しています。小さい時からいっしょに育っているきょうだい達の方が、親よりも強いのかも知れないな、彼女たちも色々悩んだんだろうなと感じました。

 彼女たちはパソコンを通じて全国のきょうだい達の考えている事、かかえている悩みを聞いて、少しでも力になっていきたいと、力強い報告をしてくれました。我が家の姉妹にも、たのもしい味方がいる事を実感しました。

 山口県の人で、障害の妹がいる所に嫁いだ山根さんの話しも胸を打ちましたし、日本ダウン症協会の加辺さんのコメントで、結婚したい人の親がダウン症の妹がいる事で、どうしてもウンと言わず、その妹は自分が「ダウン症でごめんね」と兄に謝るという話は涙があふれました。親なき後の老後をどうするか、という問題で反対する親がいるんだとわかりました。

 午後からは、社会で働く大人になったダウンちゃん達が前に出て、日頃の事を色々話してくれました。歌が好きで、特に新曲には敏感で、休みには買い物に行ったり映画を見たりと、同年代の若者とやっぱり同じなんだと感じました。歌はみんなが好きで、特にスマップがみんな大好きだと言うと、会場に来ていた中学生の女の子が飛び入りで、持ってきたCDをかけて、会場は『がんばりましょう』の大合唱となりました。すごいパワーを感じました。

 みんなとても素直で、かわいくて、話す度に顔がほころんでしまいます。見ているだけで回りが楽しくなる、ダウンちゃんの持つ不思議な所ですね。

 空手を習っているという南君は形を披露してくれて、それがとても本格的でカッコよく、思わずうちの子にも空手を習わせよう、なん思ってしまいました。

 5人の青春真っ只中の彼らは、とても楽しそうで、とてもパワフルで、いっしょうけんめい考え、いっしょうけんめい生きているんだと感じました。改めてダウン症って何だろう、障害って何だろうと考えてしまいました。そして、彼らはこのままでいいんだなとわかり、自分の子どもの将来を今までより、もっと前向きに考えられる様になった気がします。

 他にもたくさんのプログラムがあり、長いだろうと思っていた一日は、泣いたり、笑ったり、感心したり、大きな実りのある一日でした。

 2日間、参加してそのスケールの大きさにおどろきました。ダウン症フォーラムinきょうと、とあるだけに全国からたくさんの人が参加していて、又おどろきました。にもかかわらず、地元である京都の参加者は本当に少なく、とてもパワーのある会だっただけに非常に残念でした。

 配られた資料の膨大さに、佐々木さん、巽さんをはじめトライアングルの事務局の方々は大変だった事がわかり、頭が下がる思いです。京大の医学部の建物と、保育には風の子保育園、全園を使わせていただき、とても大きなイベントで、全国からたくさんの人々が集い大成功のうちに終わったのは、下準備から当日までがんばってくれたたくさんのスタッフのおかげです。本当にご苦労様でした。

 北海道から九州まで、たくさんの人が来ていたのに、色んな人と話せばよかったと少々後悔もありますが、2日間の大イベントに参加して、得た物はとても大きく、心に残りました。


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