京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(2000年6月号 掲載)

本の紹介

島崎明子   

 最近、感動した本を3冊紹介します。

 先ず、『笑うと勝ちよ! アップップ』(坂本悠、坂本和著、吉備人出版、¥1260-)
この本は五人兄弟の末っ子、ダウン症の聖太郎君のこと、家族のことを10才のお姉ちゃんが書いたものです。けんかして、おこって、笑って、泣いて、ドジって・・・、あたり前の家庭のあたり前の日々のくらしを、二女のお姉ちゃんの感性が、時にはあどけなく、時には鋭く、切りとってみせてくれます。聖太郎君が生まれるまでも、多分ステキな家族だったろうけれど、聖太郎君が生まれてもっともっとステキな一家になったのかなって思わせてくれる本でした。

 次は、『これがぼくらの五体満足』(先天性四肢障害児父母の会編著、三省堂、¥1470-)
手足や指の一部がないとか、形がちがって生まれてきた子供たち100家族が実名で写真入りで書いたものを集めた本です。ここには一番大事なものがある、読んでそう思いました。それは、障害のある手や足や指を含めてまるごとの、ありのままの自分を認めて、好きになること。そして自分を好きになって生きることの大切さが書かれていました。「障害をもった子どもたちに必要なことは、いじめに負けない強さではなくて、自分のことを好きになる心です」(本文より)。
 でも、それは何も障害を持つ子だけの話じゃない。子供たち、若者たちがみんな、ちゃんと自分を愛せる心を持っていれば、きっとこのごろ世間をさわがせている暗い事件もおこらないですんだはず。でも、自分を愛する心は、周りの人に愛されることでしか育って行かないのだということも教えられました。自分をなかなか好きになれずに困っている人に読んでもらいたい本です。

 3冊目は、『一緒がいいならなぜ分けた−特殊学級の中から−』(北村小夜著、現代書館、¥1575)
はじめの2冊と違って、これは新しい本ではないので、御存じの方も沢山おられるとは思いますが、私は何も知らずに、ふと立寄った四国の本屋さんで、題名の強烈さにおどろいて手にとった一冊の本でした。すごい本でした。特殊学級の先生でありながら、「子どもを分けてはならない」と、地域の学校へかえす闘いを続けてこられたこの著者が私の母より年上の方であることを知った時は二重のおどろきでした。

 小学校2年になった娘が、朝「学校、行きたくない」ということがよくあります。そして、その度に胸の痛む私がいます。はげまして登校させる日もあれば、根負けして「今日は休むか」と言うときもあります。このところ、ダウン症児の「退行」が話題になることが多くなったこともあり、あんまりムリさせへん方がええかも・・・と思う日もあり、でも「学校へ来たら、元気やで、みーちゃん」と言ってくれる教職員の方の声もあり、毎日毎日、揺れている私がいます。揺れが大きくなると、やっぱり普通学級、しんどいのやなあと思ってしまう私がいます。しんどい原因は、障害を持っている子の側にあるのではなくて、「フツーの」学校の側にあるのだということを、すぐに忘れてしまいそうになる私がいます。めげそうになった時、何度も何度も読み返してみたい本です。

 「誰も何も言わないところからは何も起こらない。(中略)誰も何も言わない地域の子どもたちは、ずいぶん理不尽な扱いを受けている」(あとがきより)
黙っていないて、言っていこう!

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